初代からミシェル・オバマ、ジル・バイデンまで! 歴代米ファーストレディのファッション変遷
ワシントン初代大統領夫人から、次期ファーストレディ候補のジル・バイデンまで。アメリカの歴史と進化が垣間見える大統領夫人のファッションをプレイバック。
ファッションの影響力は絶大。特に、日常的に注目を集めるファーストレディにとっては最重要項目の一つ。長い歴史の中で、ファーストレディたちはレースのドレスやローカットのトップス、またはパンツスーツを着用してアメリカの人々とコミュニケーションをとってきた。うまくいけば、ファーストレディは自身のファッションにメッセージを込めることもできるが、一歩間違えれば大炎上につながることも...。そんな彼女たちのファッション史をおさらいしよう。
Photos: Getty Images, Wikipedia commons Translation: Ai Ono From marie claire
マーサ・ダンドリッジ・カスティス・ワシントン(1789年)夫:初代大統領ジョージ・ワシントン
18世紀後半、当時最も裕福な女性の1人だったマーサ・ワシントンは、ファッションを楽しむ余裕があった。この肖像画でも確認できるように、最高の生地で作られたガウン・マント・ヘッドピース・グローブを選んでいる。マーサの最も注目すべきファッションであり、結婚式で履いたロイヤルパープルシルクの靴は“当時のマノロ・ブラニク”とも言われている。
アビゲイル・スミス・アダムズ(1800年)夫:第2代大統領ジョン・アダムズ
他のファーストレディとは異なり、フランスのファッションを否定していたアビゲイル・アダムズは、ハイカラーのドレスを着用。彼女は、姉妹に宛てた手紙の中で、当時のファッションについて地元の牧師の意見に同意すると書いていたそう。「彼は、“この町には警告しなければいけない女性たちがいる”と考えています。私も彼に同意します」。
マーサ・ジェファーソン・ランドルフ(1805年)第3代大統領トーマス・ジェファーソンの長女
幼い頃に母を亡くしたマーサ・ジェファーソン・ランドルフは、1801年に父トーマスが米国大統領に就任すると、ファーストレディの役割を引き受けた。彼女がホワイトハウスにいることはあまりなかったそうだが、ヴィクトリア朝に流行していたパープルのリボンがついたフリルのハットがお気に入りだったよう。
ドリー・ペイン・トッド・マディソン(1810年代)夫:第4代大統領ジェームズ・マディソン
元クエーカー教徒のドリー・マディソンは、元々信仰により控えめな衣装に身を包んでいたが、棄教するとそれが一変。ナポレオンの時代に人気のあったローカットドレスをまとうようになり、“女王らしい”ルックに。
エリザベス・コートライト・モンロー(1820年代)夫:第5代大統領ジェームズ・モンロー
夫が大統領になる前、エリザベス・コートライト・モンローは、パリとロンドンで4年間暮らしていた。欧州のファッションに馴染みのあった彼女は、ホワイトハウスでのイベントには大抵キャップスリーブのドレスとショールを着用していたという。フランスの服と肉体的な美しさから、“美しいアメリカ人(La Belle Americane)”と呼ばれることも。
ルイーザ・キャサリン・アダムズ(1825年)夫:第6代大統領ジョン・クィンシー・アダムズ
社会のルールには従わないルイーザ・キャサリン・アダムズは、夫の希望に反して手作りのフェイスパウダーと口紅を使ってメイクを施した最初のファーストレディと言われている。彼女は、真っ白な肌とは対照的なダークカラーのドレスを着ることが多かったため、肌の色とドレスの色のバランスを取るためにメイクをしたいと思ったのだそう。
アンジェリカ・シングルトン・ヴァン・ビューレン(1840年)第8代大統領マーティン・ヴァン・ビューレンの義娘
大統領になる前に妻を亡くした義父を助けるため、21歳の若さでファーストレディになったアンジェリカ・シングルトン・ヴァン・ビューレン。当時のトレンドに合わせ、髪型は縦巻きロールにフェザーのヘアアクセサリー身につけ、オフショルダーのガウンをまとっていた。
サラ・チルドレス・ポーク(1845年)夫:第11代大統領ジェームズ・ポーク
19世紀の多くの女性たちと同様に、サラ・チルドレス・ポークもパリのファッションに夢中に。フランスから輸入したエレガントなドレスとヘッドピースを着用していたと伝えられている。生地はベルベットやサテン、シルクのような高級な素材で、フリンジやリボン、レースの装飾が施されていた。
アビゲイル・パワーズ・フィルモア(1850年)夫:第13代大統領ミラード・フィルモア
外見にとても気を遣っていたアビゲイル・パワーズ・フィルモアは、髪を整えてもらったり、ドレスをデザインしてもらうための人材を雇用。彼女はミシンで作られたドレスを最初に持ったファーストレディと言われている。
ジェーン・ピアース(19世紀)夫:第14代大統領フランクリン・ピアース
夫の就任式に向かう途中、ジェーン・ピアースは列車の事故により11歳の息子ベンジャミンを亡くした。そのため、ファーストレディとしての最初の2年間は喪に服し、黒のドレスとアクセサリーのみを身につけていた。
ハリエット・レベッカ・レーン・ジョンストン(1860年)第15代大統領ジェームズ・ブキャナンの姪
1860年当時の“ジャッキー・ケネディ”とも言われるジェームズ・ブキャナンの姪ハリエット・レーン。最も注目したいのは、彼女が伯父の就任式に着用していた“かなり”ローカットなヨーロピアンスタイルのドレス。通常よりも首のラインが2インチほど下げられたこのドレスは当時女性たちの間で大ヒットした。
メアリー・トッド・リンカーン(1861年)夫:第16代大統領エイブラハム・リンカーン
前述の通り、レーン・ジョンストンのドレスは大流行した。メアリー・トッド・リンカーンもこのスタイルが大好きで、夫の就任式には似たようなドレスを選んだほど。ご覧の通り、派手なものを好み、お金に糸目をつけなかった彼女は、議会予算を20,000ドル(現在で約200万円)も上回っていたという。
イライザ・マカーデル・ジョンソン(1865年)夫:第17代大統領アンドリュー・ジョンソン
他のファーストレディーのようなオープンな振る舞いを好まなかったイライザ・マカーデル・ジョンソン。普段は、襟の詰まったダークカラーのドレスや髪を覆うようなショールなど、保守的な着こなしをしていた。
ジュリア・デント・グラント(1876年)夫:第18代大統領ユリシーズ・グラント
国立アメリカ歴史博物館によると、ジュリア・デント・グラントは、アメリカ製の服にこだわって選んでいたという。高級感のある生地に、パールやダイヤモンドのようなジュエリーを合わせてゴージャスに。
ルーシー・ウェッブ・ヘイズ(1877年)夫:第19代大統領ラザフォード・ヘイズ
ルーシー・ウェッブ・ヘイズは、当時のトレンドだったモデストな装いにこだわり、首元や腕をカバーする柔らかな色合いのドレスを着用していた。
ルクレティア・ガーフィールド(1881年)夫:第20代大統領ジェームズ・ガーフィールド
残念なことに、わずか半年でファーストレディの務めを終えたルクレティ・ガーフィールド。彼女は夫の就任式の舞踏会では、ラベンダーのハイカラーガウンをまとっていた。
フランシス・フォルサム・クリーブランド(1886年)夫:第22代・第24代大統領グロバー・クリーブランド
肌の見えるドレスを着続け、物議を醸したフランシス・フォルサム・クリーブランド。「タイム」誌によれば、キリスト教夫人矯風会は彼女のそんなスタイルを良しとせず、そのようなドレスの着用を止めるように嘆願書を出したものの、フランシスは無視していたという。
キャロライン・スコット・ハリソン(1889年)夫:第23代大統領ベンジャミン・ハリソン
キャロライン・スコット・ハリソンのファーストレディとしてのファッションを、「フィラデルフィア・タイムズ」は“アメリカ人女性の賢明な模範”と評していた。控えめなワードローブが多く、ビーズがあしらわれたニュートラルカラーの花柄ドレスは、アメリカ製。
アイダ・サクストン・マッキンリー(1900年)夫:第25代大統領ウィリアム・マッキンリー
ベルギーへの旅行中、アイダ・サクストン・マッキンリーは自分が購入したレースを作る労働者たちの状況を知ってショックを受け、労働者たちのためにできる限りサポートすることを決意。「ナショナル・ファーストレディ・ライブラリー」によれば、アイダがかなりの量のレースが使われたドレスをまとったことで、世の女性たちも真似をするようになったそう。
イーディス・カーミット・ルーズベルト(1902年)夫:第26代大統領セオドア・ルーズベルト
プライバシーを守ることにこだわっていたイーディス・カーミット・ルーズベルトが頻繁にまとっていたのが、トリムスカートとギャザースリーブのハイウエストドレス。彼女は同じ服を何度も着用し、記者に対して「あなたは私よりも大きなクローゼットを持っているでしょ?」と思い込ませていたという。