『愛の不時着』と共通点だらけ！ 人気脚本家・パク・ジウンで見る名作韓ドラBEST５

Netflixのストリーミングベスト10にランキングしたまま年を超えそうな『愛の不時着』。この作品でヒョンビンの大ファンになって、過去作に遡って見たファンも多いはず。でもなぜか他の作品のヒョンビンにはいまいちハマれない……と思っちゃった『愛不時』ファン、「リ・ジョンヒョク」のキャラ萌え派にこそ見てもらいたいのは、『愛不時』の生みの親＝脚本家パク・ジウン作家による作品たち。

バラエティ番組からシットコム、さらにドラマへ進出したパク・ジウン作家。その最初の大ヒット先は、主婦だけど自分の人生を夫に委ねず、あっけらかんと突き進むヒロインを描いた『僕の妻はスーパーウーマン』。以降、それまでの韓国ドラマが描いてきた「男に守ってもらう若くて可愛いヒロイン」とは異なる、時には男を守りさえする強さを持ったカッコイイヒロインを描き、次々と大ヒットを記録した。

もちろんそんなヒロインに惹かれる男子たちも、「リ・ジョンヒョク」よろしく女性の強さを肯定できる余裕を持った男ばかり。男子が料理する場面は意識的に何度も描かれるが、ヒロインが料理する場面は殆ど描かれず、その嚆矢となった『青い海の伝説』では、ヒロインの人魚が「水に触ると下半身が魚になってしまう」ってな設定をひねり出してるのがスゴイ。自分が炊事をしない言い訳としてどこかで使いたいくらいの気持ち。

バラエティやシットコムの経験があるからか、シリアスな物語はありつつも周辺には面白キャラ軍団をきっちり配置、さらにパロディを多用するなど笑いも満載。そして数少ない極悪人を除けば、「いわゆる悪人」を作らないので、ドラマがドロドロせず気持ちよく終われるのも魅力。『愛不時』と共通するポイントが多数のドラマには、「次のリ・ジョンヒョク」がきっといるはず！

400年の地球滞在を終えて星に帰る日が目前の宇宙人キム・スヒョンと、マンションの隣室に住むワガママ女優チョン・ジヒョンの運命の恋を描いたロマンティック・コメディ。「人間の歴史には関わらない」という大原則のもと生きてきたスヒョンが、他人の都合お構いなしでトラブル乱発のチョン・ジヒョンに苛立ちながらも、「聴覚は人間の7倍」みたいな能力ゆえに、意外と寂しがりで、結構不幸な彼女の境遇に気づいてしまい、やがて放っておけなくなる……という『愛不時』っていうか『サイコだけど大丈夫』な世話焼きキャラを好演。

男子が女子より料理上手で片付け上手で丁寧な生活をしており、色々理由があって外の世界とあんまりつながってないが、ヒロインは敵だらけの環境で生きており、時にヒロインの命を狙う一味がいて、男子は密かにそこから守ってくれているーーなどなど、あらゆる設定で『愛の不時着』とそっくりなこの作品。中でも最大の共通点は、最終的に「全く違う世界に生きる二人は、どうやったら一緒に生きていけるのか？」という点である。

実のところパク・ジウン作家が描く男女は、どれもこれもが「到底共存できると思えない世界に生きる二人」。『青い海の伝説』の「人間＆人魚」もそういうカップルなのだが、3本とも見た人なら、どちらの「ハッピーエンド」が『愛の不時着』に近いかわかりますね、もう断然に『星から来たあなた』です。そこには韓国社会における女子のパワーが上がりつつある現実が透けて見える。

大富豪の御曹司ながら、家出し詐欺師になった男イ・ミンホと、人魚のチョン・ジヒョンの運命的な恋を描く。スペインの海辺でミンホに出会い、彼を好きになったジヒョンは命がけで人間界へ。愛する人を追って海から上がった人魚は、その人に愛されない限り、やがては死んでしまうーーという「人魚姫」のおとぎ話の設定をベースに、笑いとサスペンス満点で進行。

正直言えばイ・ミンホにそれほど興味のない私ですが、それでもこのドラマは個人的にはミンホ史上最高と言っていいカッコよさ。それを引き出しているのが、まさにパク・ジウンの脚本ーーそしてそれが、このドラマの「愛不時」ポイント。詐欺でたんまり稼いだ財力と、190cm近い長身のミンホは、ことあるごとに「オレが守る」とのたまうものの、実のところ人魚は人間とは比べ物にならないほどの腕力と怪我からの回復力があり、さらに超能力（相手に触ることで記憶を読み取ったり、消すことができる）まで持っており、『相続者たち』ではパク・シネ相手にデカい体で壁ドンしてたミンホが、こちらではジヒョンに壁ドンされるなんていう場面も。

時代を越えて運命的な出会いを繰り返す二人は、過去ではミンホが、現代ではジヒョンがって具合に互いを守りあうという、まさに「愛不時」の南北と同じ展開も。ちなみに彼女の唯一の弱点は水で、触ると下半身が魚になっちゃうので、炊事はひとつもできませんーーというヒロインが家事一切をやらないのも「愛不時」に酷似。パク・ジウンさん、家事が苦手なのかもしれませんな。

ちょっとビクビクしながら恋する男への一途な思いで人間界に来たジヒョンは、当初は言葉も話せないくらだから、人間のお作法なんて知るはずもなく、ホールケーキの手づかみ食い！とか、その服はそういう着方なのかな？って感じの着こなしとか、「ちみはオオカミに育てられたのかな？」的なキャラクターを、抜群の思い切りの良さと度胸で演じて痛快。言葉でやり込めようとする相手が、「＊＊って何？」「＊＊てどういうこと？」と無邪気な「どちて？どちて？攻撃」で、結局相手に勝利する姿もめちゃくちゃ面白い。

韓国の公共放送KBSを舞台に、バラエティ番組の新人プロデューサーの恋と日常を描くロマンティック・コメディ。主人公キム・スヒョンが片思いする先輩PDコン・ヒョジンと、スヒョンに片思いする人気歌手IUが、ややこじらせた強気のキャリアウーマンを描かせたら天下一品のパク・ジウンの面目躍如のキャラクター。特にヒョジンは、チャ・テヒョン演じる幼馴染で同僚のPDに片思い中で、ユン・セリとソ・ダンをミックスしたようなキャラクター。スヒョン演じるキャラクターは、学歴は高いがいまいち間が悪い、でも素直で一生懸命な新入社員。この年令でこんなにいい子がいるのか？と思うような素朴さと不器用さで、強気のヒョジンに叱られ叱られ叱られ、ふいに褒められてでへでへ照れ笑いって感じの可愛さが炸裂。個人的には『愛不時』のF4の中に入れてF5にしたらいいと思います。

スヒョンが『一泊二日』、コン・ヒョジンが『ミュージック・バンク』担当と、KBSの実際の人気番組そのままの裏側を見せてくれるのも、ドラマの楽しみのひとつ。イ・スンギ、『一泊二日』の仕掛け人でKBSからtvNに移籍した人気のナ・ヨンソクPD（『三色ごはん』）の名前が、「あいつはできるヤツだった」とちょいちょい出てくるのも、韓国バラエティのファンには可笑しい。

写真／「プロデューサー」の上海での記者会見にて。右から二番目が脚本家のパク・ジウン。

イ・スンギ、チャン・ヒョク、パク・ボゴムなど、ドラマに登場する実際の番組を通じた亀を出演も豪華。特にパク・ジウン作家の作品では、相互のカメオ出演が多く、彼女の作品を通しで見る楽しさも。本作と『星から来たあなた』に主演したキム・スヒョンが『愛の不時着』に、チョン・ジヒョンが主演する『青い海の伝説』には、本作のチャ・テヒョン（実は映画『猟奇的な彼女』のゴールデンカップル）が、それぞれ出演。『棚ぼたのあなた』の姑役の大女優ユン・ヨジョン（『ユン食堂』）も、本作ではチャ・テヒョンを困らせるご本人役で登場。

『僕の妻はスーパーウーマン』から始まるキム・ナムジュ主演シリーズの3本目は、パク・ジウンがガチなキャリアウーマンを主人公に描いた最初の作品。第一線で活躍するTVドラマのPDのナムジュは、エリートで優しい夫はアメリカ帰りのエリートだが、幼い頃に韓国から里子にだされた人物。嫁姑問題に苦労する友人たちを尻目に「棚ぼた的幸福」を自慢する彼女だったが、夫の実の親が見つかり、同居するハメに……。

このドラマのどこが「愛不時」かと言えば、ドラマ終了後に「国民の夫」と呼ばれたユン・ジュンサン（写真）の「もし、リ・ジョヒョクと結婚したら…」てな感じの理想の夫ぶり。常に穏やかで明るく優しく、自分の面倒はもちろん妻の面倒も見て、嫁姑の対立には必ず妻の側に立ち、母親が裏で妻をイジメないよう穏やかに諭し、自分の仕切りで仲直りのサプライズイベントまで企画。全韓国の妻の支持を受け、最終回の視聴率はなんと45％越え！

ナムジュの高早くで登場する『青い海の伝説』のイ・ヒジュンが演じる、『シークレットガーデン』始め、ラブコメディのパロディ場面も爆笑。そんなところも『愛不時』との共通点。

「男の力で幸せになる」という発想が殆どないパク・ジウン作家が、主婦を主人公に描く大ヒット作。

『ミスティ』など、バリキャリの美女アラフォーを演じさせたら、今や右に出るものはいないキム・ナムジュをその地位へと導いた、パク・ジウン作家初の大ヒット作。そもそも「王子様との結婚で幸せに」という発想が殆どないパク・ジウンが、主婦を主人公に描くのはダメ夫を影に日向に、なりふり構わず強烈バックアップし、愛と成功を手にする「内助のサクセスストーリー」。