清々しいフレッシュさはハチさんそのものの、愛されキャラ
松下洸平
MASAHIRO YAMAMOTO

「劇中、僕は一度も笑っていないんです。僕にとって、そんな作品は初めてでした。斎藤一は決して口数が多い方ではないし、一見、クールに見えるかもしれませんが、心に宿ってる炎はものすごくて、燃え滾るものがあります。史実がどうだったかということだけではなくて、映画の中でどう生きるかということを重点的に考えました。原田(眞人)監督とも話し合い、大げさにデフォルメすることなく、自然に演じさせていただきました。僕もそうなんですが、斎藤は左利きと言われていて。殺陣は初めてで、最初は戸惑いましたが、監督や殺陣師の先生、(主演の土方歳三役の)岡田(准一)さんが左利きを活かした殺陣をつけてくださったので、安心して臨めました」

映画「燃えよ剣」
(C)「燃えよ剣」製作委員会
映画『燃えよ剣』では新選組の斎藤一を熱演。

 朝ドラ出演で、突然、脚光を浴びたようだが、実は芸歴は10年以上。舞台を中心に活動し、受賞歴もある。それなのに本人の清々しいまでのフレッシュさは、テレビで毎朝、見ていた、はちさんそのもの、いやそれ以上である。

「2ヶ月半ぐらい京都で撮っていたんですが、最高に幸せでした。映画自体、ほぼ初めて。時代劇も初めて。監督との仕事も初めて。殺陣も初めて。どれもこれもが初めてづくしだったので、ものすごく刺激的でした。知らないからといって、じっとしていたら、よくないと思い、逆に“わからないから、教えてください”とよく言っていました。変に知ったかぶっても、しょうがない。『何でもいいから、教えてください』という姿勢で取り組みました。特に岡田さんにはくっついて、くっついて、くっつき続けました(笑)」

朝ドラの反響で感じた焦りを楽しむ方向に切り替えた

 間違いなく愛されキャラだろう。「スカーレット」では林遣都とよく食事に行っていたとトーク番組で話していたが、この現場でも、はんにゃの金田哲ら新選組のメンバーとオフの日には琵琶湖でピクニックをしたそうだ。

「お酒を飲んで話すのは作品のことが多いですね。『芝居とはこうじゃなきゃいけない』みたいなのではなくて、どうすれば作品が面白くなるかとか、今度のシーンはどうしようかとか。自分1人で考えて出した答えが他人にとっては違ったり、自分が疑いなく信じていたことが意外ともっと柔軟に考えてもいいことだったり……。他の俳優さんと話すことで、凝り固まってたものがふと柔らかくなったりする瞬間があるので、僕はそういう時間をすごく大切にしています。くだらない話をしながら、人となりもわかるし、とても大事な時間だと思うんです」

 京都の居酒屋では、近藤勇役の鈴木亮平から忘れられないアドバイスをもらった。撮影が始まったのはちょうど、「スカーレット」出演が決まった後。鈴木も以前、朝ドラ「花子とアン」でヒロインの夫を演じて、ブレイクしている。

「朝ドラの現場がどういうものなのか。反響を得て、その後をどう過ごしたのか。漠然と不安を感じていたので、いろいろ相談させていただいたのですが、その頃の僕はまだまだ想像ができていなかったように思います。いまとなっては、鈴木さんのおっしゃる通りでした。例えば、インスタグラムのフォロワー数が多い時で、3日で1万人とか増えるんです。そうすると、どうしても、『いま、僕を知って応援してくださる人たちがこれからも変わらずにいてくださるにはどうしたらいいんだろう』と考えてしまう。どうしようもないし、僕はこれまで通り、一生懸命、芝居をするしかないんですけど、急激な変化の真ん中にいた時はやはり不安に感じていました。いまは不安を楽しみに変えるように生活していかなきゃいけないと思うし、これからの自分を信じてあげたいです。そう決めた瞬間から、なんかすごくちょっと楽になったというか、むしろいま、ちょっと楽しみなんです」

松下洸平
MASAHIRO YAMAMOTO
ジャケット¥39,000/エトセンス (エトセンス オブ ホワイトソース)、シャツシャツ¥36,000/アポクリファ(サカス ピーアール)
役者、音楽……僕の場合は全部ひっくるめて、1個のカバンに突っ込んでいる

 今後は音楽活動を再開する予定だ。もともとデビューしたのはシンガーソングライターとしてだった。

「もう一度、一から音楽を作り直す時期が来たなって思ってます。ただ、音楽も芝居も、僕の中ではカテゴライズしないようにしてるんです。クリエイトしていく作業には変わりはないので、大きく分けたら、全部、同じ引き出しに入っているもの。分けてしまうと、テレビ、舞台、映画、音楽……もうこれだけでも4つになって、両手では持ちきれない。そうじゃなくて、僕の場合は全部ひっくるめて、1個のカバンに突っ込んでいるから、僕が持っているのは1つだけでいい。そういう捉え方で進んでいけば、自分自身にも負担にならないです。実際には、別々だとしても、それが心の中でずっと循環して回ってるような状況。何が来ても、冷静に対応できて、どれをやっていても楽しめる自分でいるためには一つ一つに向き合っていくしかない。それこそ、同時にはできないわけです。当たり前ですけど、台本を読みながら、歌詞を考えられない。だから、日ごとに分けて、今日はこの台本だけ。その代わり、むちゃくちゃ集中して、次の日は台本も音楽もやらないで、趣味の画しか書かないとか。どの仕事も好きだから、頑張れることがこんなにあるのは嬉しいこと、すごく幸せです」

 芝居、歌、ダンス、画……一つ一つをきちんと愛し、とことんまで向き合う。驚いたのは、芸術面での才能だけでなく、掃除好きで、料理もする。彼の瑞々しいまでの透明感は、きちんとした日常の賜物であるに違いない。

「掃除好きなんです。作業をしていくうえで、部屋がきれいじゃなきゃいけないというのも、僕の中のルールの一つ。ぐちゃぐちゃしているより、整ったところの方が台本も覚えやすかったりします。料理もどちらかというと、片付け、洗い物の方が好き。ちょっと変人っぽく聞こえるかもしれませんが、綺麗になっていく様が好きなんですよね(笑)。基本的には一つのことしかやっていないんです。掃除なら掃除、料理なら料理。一つのことに対して、常に全力を注ぐタイプなんです(笑)」


松下洸平に聞く、恋愛にまつわるQ&A

Q.恋愛するなら、同世代 or 年上?
A.うわ~~一問目から悩みますね。年齢で考えたことはないけど……あえていうなら年上でしょうか。僕があまりちゃんとしてないんで(笑)。大腕をふって甘えられそうじゃないですか?

Q.振られたら立ち直りが早い or 遅い?
A.遅いです。結構ひきずります。男の人って切り替えできなくないですか?超一方的に片思いして振られた場合は相当引きずりますね。もう一回チャレンジするかもしれません。

Q.デートには自分から誘いたいor誘われたい?
A.これはもう断然誘いたい、ですね。デートプランも僕がちゃんと決めますよ。行きたいデート場所、無限にあるので。地方のレトロ遊園地とか大好きです。

Q.女性との友情は成り立つ or 成り立たない?
A.成り立つと思います。確率は高くないとは思いますけど……。僕も女友達は存在します。

Q.遠距離恋愛はできる or できない?
A.できないですね……。すぐに会いたくなっちゃうんですよ。仕事とかでどうしてもという事情なら仕方ないですが。

Q.(映画にちなんで)新選組のなかで異性として惹かれるのは?
A.僕が演じた斎藤一はないですね。クールすぎる! 年下の沖田総司か、不器用だけど誠実な近藤勇かのどちらかですね。でも沖田くんには翻弄されちゃいそうなので、やっぱり誠実な近藤さんで!


Photo MASAHIRO YAMAMOTO Styling KEISUKE WATANABE Hair & Makeup MASAKAZU IGARASHI Interview & Text AKI TAKAYAMA

●衣装問い合わせ
エトセンス オブ ホワイトソース tel.03-6809-0470
サカス ピーアール tel.03-6447-2762


PROFILE
まつした・こうへい/1987年3月6日生まれ、東京都出身。2008年に “ペインティング・シンガーソングライター”として活動。 その後、 舞台・ドラマ・映画などに出演。「木の上の軍隊」、「母と暮せば」、ミュージカル「スリル・ミー」など舞台で活躍し、第26回読売演劇大賞の優秀男優賞と杉村春子賞を受賞。NHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインの夫・八郎役を務め、ブレイク。


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『燃えよ剣』
歴史小説界の巨星・司馬遼太郎による国民的ベストセラーを名匠・原田眞人監督が映画化。武州多摩の“バラガキ”土方歳三は、「武士になる」という熱い夢を胸に、近藤勇、沖田総司ら同志と共に京都へ向かう。徳川幕府の後ろ盾のもと、芹沢鴨を局長に擁し、市中を警護する新選組を結成。土方は副長として類まれな手腕と厳しい法度で組織を統率、新選組は倒幕派勢力制圧に八面六臂の活躍を見せる。お雪と運命的に出会い惹かれあう土方だったが、時流は倒幕へ傾いていく。近日公開。

原作:司馬遼太郎「燃えよ剣」(新潮文庫刊/文藝春秋刊) 
監督・脚本:原田眞人 
出演:岡田准一 柴咲コウ 鈴木亮平 山田涼介 伊藤英明
製作:『燃えよ剣』製作委員会 製作プロダクション:東宝映画  
配給:東宝 アスミック・エース  © 2020 「燃えよ剣」製作委員会
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