ASIAN AMERICAN GIRL CLUB

2019年に公開された『トイ・ストーリー4』や、ドラマ「クローク&ダガー」、「Wrecked」に出演するずっと前から、日系アメリカ人女優のアリー・マキはクラブ活動に精を出していた。いわゆる、ハイヒールに騒々しい音楽、ウォッカクランベリーが飛び交うクラブではなく、実際の課外活動のほう。

ZoomでのELLE USのインタビューで彼女はこう話す。「子どものころは完全なるクラブガールだった。パーティのクラブじゃなくて、アクティビティのほうね。お母さんが私にあらゆる課外活動をやらせたの。ガールスカウトとか、野球や演劇、何でもやったわ」

クラブガールかつアジア系アメリカ人として、どれかは自分のものになるだろうという期待を胸に、あらゆる課外活動に取り組んだアリー。とはいえ、うまくいかずにがっかりしたときも。

「インクルーシブ(包括的)を目的に設立されているどんなクラブでも、私はいつも除け者のような気持ちだった。大人になったいま、振り返ってみてなぜだか理解できる。誰も私のような見た目の人がいなかったから。経験やアイデンティティを共有する人がいなかったの」

 
MAILINH NGUYEN

2018年、アリー・マキは成長期に感じた排他性や、ハリウッド女優となった現在の経験に対する答えとして「Asian American Girl Club」(以降、AAGC)を立ち上げた。ファッション・ライフスタイルブランドの「AAGC」は、ノーマライゼーションや結束を通じて現代のアジア系女性たちを再定義することを目的にしている。

「AAGC」のインスタグラムアカウントは同ブランドのTシャツを誇らしげに着るメンバーたちの写真であふれている。「クラブというもののあり方や、あなたや、あなたの自尊心、アイデンティティ、自信のためにどんな存在になれるかという物語を変えたかったの」

アリー・マキに「AAGC」や、オリヴィア・マンとの特別な関係、そしてなぜアジア系アメリカ人が黒人コミュニティと連帯することが重要なのかを質問してみた。

「君は主役の取り巻きか親友役、もしくはニンジャガール役だよ」

ELLE:どうして「AAGC」を立ち上げようと思ったの?

Ally:クレイジー・リッチ!』が公開されたすぐ後のことだった。その朝、ツイッターは同作への支持や興奮であふれかえっていたの。人生で初めて見るキャストが全員アジア系のハリウッド映画よ。まるでガラスが割れたような衝撃の瞬間だった。この映画が実現したなら、他に何が私たちのコミュニティで実現できる? 私はアジア系アメリカ人女性たちの世界により深く飛び込みたいと思ったの。

instagramView full post on Instagram

ELLE:女優としての経験がこのプロジェクトのどのような助けになった?

Ally:私はワシントン州のカークランドで、町で唯一のアジア系として育った。ティファニー・ティーセンのようなカリフォルニアガールになることを夢見ていたわ。演技の道に進むためLAに引っ越したとき、突然私は枠にはめられるようになったの。“だめだめ、君にはその役じゃない、君は主役の取り巻きか親友役、数学が大好きな女の子、もしくは過剰に性を強調されたカンフー使いのニンジャガール役だよ”ってね。

女性同士の友情について、特にアジア系アメリカ人の女性たちとはお互いに距離があるように感じた。この業界でひとつの役を得ようと頑張っていると、最終的に『ハンガー・ゲーム』のような気持ちになる。自分のコミュニティを敵として見始めるの。これは完全に間違っているわ。私たちは団結してともに動き、協力し、考えや気持ちを共有すればはるかに強くなることができる。

ELLE:コミュニティが成長して、こんなに多くの女性たちに受け入れられているのはどんな気持ち?

Ally:本当にすばらしい気持ち。私たちがこのブランドを立ち上げたとき、どんな内容になるかなんて見当もつかなかった。数人と話していて、彼らが「ロゴだけ発表して様子を見よう」って言ったの。だから夜の10時30分にロゴを発表して、インスタグラムのアカウントを開設しました。

次の朝、私たちのDMの受信箱は各地の女の子たちからのメッセージであふれかえっていたの。彼女たちのアイデンティティや、このブランドが彼女たちにとってどんな意味をもつのかということが、まるで大学の卒業論かのように綴られていた。彼女たちは「これが何のブランドか分からないけど、存在してくれて本当にうれしい」と言っていた。これらのTシャツは友情を表現したもの。「ねえ、あなたのこと理解してるよ。ほら、このTシャツを一緒に誇らしげに着ようよ」って。最初の2年は数世代に向けたアプローチを取って、コミュニティについて知ることに費やしたわ。

ELLE:オリヴィア・マンもこのブランドの大きなサポーター。彼女はどのような経緯でアンバサダーに就任したの?

Ally:彼女は、自身のアジア系というアイデンティティをとても誇りに思っている。共通の友人のアマンダ・グエンを通じて知り合ったの。私たちはともにアマンダの性的暴行被害者のための団体「Rise」を支援していた。彼女は「ねえ、ランチでもどう?」ってDMで連絡してきたの。すごくうれしかったわ。

それでお寿司を食べにいったんだけど、ランチ中はお互いにずっと「超分かる!」って感じだった。面白かったのは、彼女が「待って、あなたが『AAGC』を立ち上げたの? 先週注文したよ」って言ったこと。それでレシートを見せてくれたの。彼女はそのときすでにこのブランドのファンで、それ以来すばらしいサポーターでいてくれている。

インスタグラムを開けば、私たちがどんなに美しいかが分かる写真であふれさせたかった

ELLE:私の成長期には、「AAGC」のような自分をクールかつ現代的な方法で見られるような場所はありませんでした。どうやってこのスペースを作り上げたの?

Ally:私たちのミッションの大きな一面は、現代のアジア系アメリカ人女性のノーマライゼーション。数年前、 #AsianAmerican というハッシュタグで検索しても、アジア系アメリカ人女性のすばらしさなどが十分に示されていない写真しか出てこなかった。だからインスタグラムを開けば、私たちがどんなに美しいかが分かる写真であふれさせたかったの 。

だから私たちのステートメントは言葉では言い表せないもの。私たちを定義することはできないわ。私たちは枠にはまっているわけじゃない。なりたいものなら何にでもなれる。私たちはサンドラ・オーエミー賞にノミネートされたのを目撃した。ジャーナリストも、医者も、ライターも、作家も、すべての領域で私たちは活躍しているし、ずっと存在し続けている。私の家族はアメリカに来て4世代目だから、とても長くここにいるの。

ELLE:「AAGC」は、アジア系アメリカ人が黒人コミュニティの良き味方であることについて積極的に発信してきた。なぜそのメッセージを伝えることが重要だったの?

Ally:今までに黒人コミュニティがアジア系コミュニティを支援してくれたことが数多くあった。このプラットフォームを使って、情報を伝え人々が学べるように奨励することが必要だと思う。歴史の本などには書いていないことだから。

私にとってストーリー、特に日系アメリカ人の話を共有できることは最大の特権なの。そしてBlack Lives Matterと黒人コミュニティーを支援するために発信できることも同じね。

translation: HARUKA SAITO

From: ELLE US