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フェミニストを奮い立たせる「ザ・クラウン」の衝撃的台詞Best5

エリザベス女王、サッチャー首相、そしてダイアナ妃。シーズン4、3人の女性が投げかけるのは“女の苦しみ”。【ELLE ACTIVE for SDGs】

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ザ・クラウン
Netflix

世界中で驚異の再生回数をたたき出しているNetflixの人気シリーズ「ザ・クラウン」最新シーズンはフェミニズム的キーワードで溢れている。観る者の心をグサグサ刺してくる衝撃の台詞とともにご紹介。

1.「女性は感情的すぎるのです」

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Queen Elizabeth II Meets Margaret Thatcher (Full Scene) | The Crown
Queen Elizabeth II Meets Margaret Thatcher (Full Scene) | The Crown thumnail
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「ザ・クラウン」のサッチャーはアンチ・フェミニストとして登場。
 
第1話、こちらの衝撃シーン(動画2:13~に注目!)に注目。閣僚に女性を据えるつもりがないことをエリザベス女王に見抜かれたサッチャーはこう言い放つ。
 
"Certainly not. Not just because there aren't any suitable candidates, but I have found women in general tend not to be suited to high office. They become too emotional.(もちろんいるはずがないです。ふさわしい候補者がいないだけでなく、高い地位に向いていないからです。彼女たちは感情的すぎるのです)"

あぁコレ、おじさんがよく言うやつ……。

Keyword: 男性性の内在化

anwar hussein collection
Anwar Hussein//Getty Images

こんなあからさまな女性差別発言を女王の前で……と顔を覆いたくなるけれど、さらにこの後、半年年下のエリザベス女王にマウンティングするシーンまで。

そう、シーズン4のサッチャーのアイデンティティは“男”というわけ。“父の娘”として男尊女卑まで内在化させてしまった彼女は、“女”を憎んでいる。

(画像:1979年のコモンウェルス首脳会議にて。アパルトヘイトへの経済制裁を巡って2人に決定的な確執が生まれるシーンとしてこの舞台が登場する)

2.「自分が母親と不仲だったからってすべての女にその怒りをぶつけないで!」

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Best of Gillian Anderson as Margaret Thatcher | The Crown
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"Just because you had a difficult relationship with your mother...you can not let it affect your relationship with all women. Most of all, your own daughter!"

“父の娘”として育ったサッチャーにとって父親がすべての基準。父はこうしてくれた、父にはこう教えられた、父ならこうした……が口癖。息子のように父親に期待され、父親の訓えに従い、社会的に認められてきた彼女は、強い男性性を崇拝し、弱さをもつ女性を見下し、憎んでさえいる人物として描かれている。
 
第4話、激しい同情を誘う娘のこの台詞の直後、「母親の女の弱さが嫌いだった」(6:01~)と“女嫌い”を露骨に出し、男性を贔屓するサッチャー。弟と比べ明らかにぞんざいに扱われる娘キャロルが、そんな母親に対し堪忍袋の緒を切らせた時の台詞がコレ。それに対し自分の可能性を諦めている女性を応援するなど意味がないと言い切る母にキャロルは言葉を失う。

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Keyword: 父の娘

thatcher family
Central Press//Getty Images

というのも、ドラマでは省略されているけれど、実在のキャロルは首相の娘として政治的リスクにならないよう、自分のジャーナリストとしてのキャリアを制限していたから。弟のマークがカーレース中に行方不明となり英国軍にも外国にも多大な迷惑をかけたのとは正反対に。

“父の娘”として期待されて育つと、可能性が狭められた女性への共感を失う例をサッチャー、エリザベス女王それぞれのエピソードを交えてシーズン4は素晴らしく表現。

劇中もうひとりの“父の娘”であるアン王女のエピソードは、父親が「女王の夫」だけに、さらに一ひねり加えた興味深すぎる内容になっている。
 
(画像:首相になる前、1976年のサッチャー家。右から娘キャロル、夫デニス、マーガレット・サッチャー、そしてエリザベス女王との不仲の原因として描かれるバ〇息子マーク)

3.「母性の表れ、愛情深い真の母親……そこに皆惹かれてるの」

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THE CROWN Season 4 Ending Explained! Real Life History and Season 5 New Actors!
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"Evidently, that clinging is what the Australians have responded to. What a natural mother she is. How physical. And caring. (そのベタベタしている感じにオーストラリア人は反応しているの。なんて母性的で、人間的で、思いやりがあるんだ! とね)"

エリザベス女王はもともと親に向いていない人物であったという点にも鋭く切り込んでいるシーズン4。オーストラリア訪問中も子どもと常に一緒にいるダイアナを「あんなにベタベタして」と非難するクイーンに対し、娘のアン王女が放ったのがこの台詞(映像6:40~をご覧あれ)。 ダイアナ妃との“母性”を女王のそれと対比しているのだから、制作陣の大胆さと言ったらない。

 Keyword: 母性神話

prince charles and princess anne smiling
Bettmann//Getty Images

シーズン4でのエリザベス女王は、絶対的権力をもちながら自分の「母親としての能力の欠如」にコンプレックスを感じている。第6話で娘のアン王女がダイアナ妃の人気の理由を皮肉をこめて説明することで、母親のエリザベス女王の中にある、“母性”の象徴となったダイアナ妃への恐れを呼び起こす会話劇は、ふたりの女優の演技合戦(前頁の動画2:14~)。ヒリヒリする!

そもそも母性とは存在するものなのか? 母親になれば母性は備わるものなのか。ロイヤルファミリーの機能不全家族ぶりを残酷なまでに脚本に盛り込みながら、神話を切り崩している。 

(画像:アン王女とチャールズ皇太子。劇中では周囲を冷静に客観視し、女王にも兄にも父にも率直に諫言するバランサー役)

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4.「ケジャリーを食べたい人は?」

ザ・クラウン
Netflix

同時に「ザ・クラウン」のサッチャーは強烈なほどに“女”を演じる。

"Who wants kedgeree?"

ケジャリーとはイギリスの伝統料理(といっても元はインド料理)を閣僚との打ち合わせに振舞うシーンは、主婦としての立場に固執するサッチャーを理解するのに最適。実際のサッチャーの苦労は相当だったはず。

Keyword: 引き裂かれ症候群

margaret thatcher doing the dishes 1970
Keystone-France//Getty Images

女王に挨拶することすら「時間の無駄」としながら、いっぽうで家事を完璧にこなし、閣僚との打ち合わせに執拗に手料理を用意する。なぜなら女性はどんなに仕事ができても家事をやらなければ「家庭をおろそかにしている」と貶められるから。当然それを手伝わせるのは娘だけ。息子に手伝わせれば「男の手を焼かせて」とまた非難される。

女性の役割を強調しながら、同時に女性でないことを証明しなければいけないサッチャーの矛盾が、「男以上に男」の過激な政治姿勢へをとらせ、結果失脚していく。その過程を観るのは実に腹立たしいけれど、見る価値あり! 

(画像:1970年、皿洗いをするサッチャー。こういった演出で保守派を代表する女性像を創り上げていった)

5.「女性に背を向けると何をされるか怖いですね」

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Drag Queens The Vivienne & Cheryl Hole React to The Crown | I Like to Watch UK Ep 5
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オーストラリア訪問時の晩餐会で、若く美しいダイアナと結婚出来て幸運だという歯の浮くようなスピーチをするチャールズの背後でダイアナがふざけて顔をしかめたため、来賓たちが一斉に笑う。何が起こったのか戸惑う彼が放った台詞。
 
"That's the thing about ladies. You never quite know what they get up to when your back's turned."

冗談めかし丁寧に言っているけれど、これは「女どもには見えないところで何されるかわかったもんじゃない。男たちよ、気を付けよう」と言っているのと同じ。これは実際のタスマニア訪問時の発言だが、自分よりはるかに人気が高くなった妻を「悪女」に仕立てあげ力を削ごうとする卑劣な発言として登場する。

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 Keyword: 悪女/マチズモ

charles and diana visit australia
John Shelley Collection/Avalon//Getty Images

ダイアナが公務に身を入れるよう命令された通り、必死でこなしているうちにチャールズが予想する以上のスピードで成長し、あっという間に対等な存在になっていることに彼は恐れを感じ、許せなくなる……。

女王だけでなくチャールズの権威をも脅かしてしまうダイアナの強烈な“母性”が、チャールズのマチズモを見事にあぶりだす6話。最終的に「おまえがカミラを傷つけた! 俺のこともだ!」とダイアナを悪女に仕立て上げる手口まで見せるクライマックス(前頁動画16:10~)に、ドラァグクイーンも開いた口がふさがらない! 卵を投げつけたくなるほどのジョシュ・オコナーのゲス男演技が、息もできないほど凄まじすぎる。 

(画像:写真に収められていた問題の発言時のダイアナ妃の表情)

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