1 薄毛・抜け毛が発生する仕組みは？
「通常の髪の毛には、生え続けていく成長期、成長スピードが低下する退行期、成長が止まり抜け落ちていく休止期、というヘアサイクルがあります。この周期は一般的な女性で3～6年。一日に50～100本ほど抜けるのは自然ですし、季節や個人差によっても変わりますが、何らかの原因でヘアサイクルが乱れると、髪が抜け落ちる時期が早まったり、髪の太さに変化が起き、薄毛や抜け毛のリスクが高まります」（浜中聡子先生／クレアージュ東京 エイジングケアクリニック 院長）
2 薄毛・抜け毛の原因とは？
加齢
「白髪の原因と同様、いちばん大きいのは加齢による変化です。加齢で体全体の血流が低下するなかで、頭皮も例外なく血流が悪くなり、頭皮の細胞の働きが悪くなります。また年齢が上がると女性ホルモンの分泌量も低下するので、ホルモンバランスの変動が髪に悪影響を及ぼし、薄毛や抜け毛を引き起こします」（浜中先生）
食生活の乱れ・栄養不足
「大事な鉄分をはじめ銅や亜鉛など、髪に必要な栄養をしっかり摂れていなければ髪は弱ります。また髪の主原料であるタンパク質が足りていない女性も、若い人を中心によく見られます。手っ取り早くピザやコンビニのパンばかり食べているような偏った食生活は、当然髪にも悪影響です」（浜中先生）
過度なダイエット
「食べる量を無理に減らして体重を落とすと、やはり栄養不足となり、その代償として抜け毛が発生します。実際、ダイエットジムで短期間で結果を出そうと急激に無理をした後で、抜け毛が増えてショックを受けたという人も多いです」（浜中先生）
睡眠不足・ストレス
「疲れていたり充分な睡眠がとれていない状態や、精神的な負担を抱えた状態は健康なコンディションとは言えず、これらも当然ヘアサイクルの乱れにつながっていきます」（浜中先生）
頭皮環境の乱れ
「ヘアカラーやパーマなどを繰り返した結果、頭皮が深刻なダメージを受けて薄毛や抜け毛につながるケースもよくあります。また日焼けによる頭皮ダメージも実はとても甚大なマイナス要因なので、日頃から日焼け対策への意識が必要です」（浜中先生）
病気
「甲状腺疾患や鉄欠乏性貧血、膠原病などの自己免疫疾患、胃腸疾患の影響で髪が抜ける場合があります。ほかにも何か大病を患ったときに、免疫力が急激に落ちる中で体が回復に集中した結果、髪の毛が犠牲になったという話はよくあります」（浜中先生）
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ストレスを溜めない＆充分な睡眠を
基本的ですが、慢性的な睡眠不足やストレスを溜めこんだ状態は薄毛・抜け毛の大敵なので、そうした根本な面からの改善はマストです。ストレスの原因が何なのか、自分が抱えている問題にもしっかり向き合い、辛い状況から少しでも抜け出すように自分自身を大切にしてください」（浜中先生）
栄養バランスを整える
「偏食で髪に必要な栄養素が不足した状態に陥らないように、日頃から自分の食生活が偏っていないか、充分にバランスよく栄養をとれているか意識しましょう」（浜中先生）
自分の生理周期を見直す
「生理の回数が少ない稀発月経や、無月経などの状態は、明らかに女性ホルモンのバランスが崩れている証拠です。薄毛・抜け毛にも深刻に関わってくるので、漫然と放置している人はすぐにでも受診してください」（浜中先生）
タバコを控え、お酒は適量を守る
「タバコは血行不良やビタミン不足などを引き起こすので、髪にとって何ひとついいことはありません。お酒は適量であれば構わないですが、あまりにも過剰に飲むと、髪に大事な栄養素であるナイアシンがお酒を代謝するために使われ、髪に必要な分が不足してしまうため、髪質が悪くなります。髪質を悪くさせないためには、お酒は適量にした方がいいでしょう」（浜中先生）
外用薬・育毛剤は正しく使う
「病院などで処方された外用薬を使う場合に、みなさんちゃんと塗っているつもりでも正しく塗れていないことがあります。外用薬は気になる部分と、その外周1円分くらいにまでしっかり塗るようにしましょう。育毛剤は外用薬よりも濃度が低く、効果も限定的なので頭皮全体につけるのがベターです」（浜中先生）
自分に合ったシャンプーを使う
「皮脂の具合や髪のボリュームなど、頭皮環境は人それぞれ。自分の頭皮に合ったシャンプーを選べているかも重要です。年齢によって合うシャンプーも変わってくるので、それが自分に合っているかどうか定期的に確かめながら使っていきましょう。
また、そもそもシャンプーは髪を洗うためではなく頭皮を洗うための行為なので、シャンプーは頭皮に合うものを選ぶのが正解です。その上で、トリートメントやコンディショナーを髪質や求める仕上がりに合わせて使えたらベストですね」（浜中先生）
正しく洗髪する
「改めて、シャンプーは頭皮を洗う行為と心得てください。ただ髪の汚れがひどいときやスタイリング剤で泡立ちが悪い場合、油分や臭いが気になる場合は2度洗いがおすすめです。洗い忘れやすすぎ残しはフケやかゆみの原因になるので、特に襟足や後頭部付近を意識して洗いましょう。お湯の温度は38℃程度がおすすめで、42℃を超えると必要な皮脂や水分も流れてしまうことがあるので要注意です」（浜中先生）
正しいシャンプー方法① しっかりと頭皮を濡らし、湯洗いをする
髪だけではなくしっかりと頭皮を濡らし、まずはお湯だけで頭皮を軽く洗う。
正しいシャンプー方法② 手の上でシャンプーを泡立てる
髪に直接シャンプー剤をつけると余計な摩擦が生じたり、液ムラができて洗い残したり、逆に必要以上の洗浄力で頭皮にダメージを与えたり乾燥するおそれが。シャンプーは必ず手の平に適量とり、手の上で泡立てる。
正しいシャンプー方法③ 頭の後ろ側から額に向かってマッサージするように洗う
こすらずに、地肌が動く程度の力で洗うのが基本。えりあし→後頭部→側頭部→頭頂部→前頭部→生え際の順に行う。
正しいシャンプー方法④ 毛の流れに逆らうようにすすぐ
泡やトリートメントが頭皮に残らないように、シャワーは下から上に向けて、髪の毛の流れに逆らうように流す。また、シャワーを頭皮にあて、手の平に貯めたお湯に頭皮を浸す“ため洗い”も、濡らし残しやすすぎ残しを防ぐのに有効。ため洗いはシャンプー前に頭皮を濡らすときにもおすすめ。
4 薄毛・抜け毛の改善に効果的な食材は？
タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく
「これだけを食べれば確実に効く！というものがあればいいですが、実際にはタンパク質はもちろん、ビタミン、ミネラルを豊富にとり、すべての栄養をバランスよくとることに尽きると思います。
髪の主原料はタンパク質なので、肉や魚、大豆、卵などの高タンパクで低脂肪のものはしっかりとるべきです。そして赤身の肉やほうれん草などから鉄分を、野菜からビタミンを、キノコやワカメ、ひじきなどからミネラルを補給できるといいでしょう」（浜中先生）
5 薄毛・抜け毛におすすめの育毛剤＆頭皮ケアアイテム
「病院処方と比べ、市販の場合は低濃度（女性用は1％）の物しかありませんが、日本で発毛効果が認められているミノキシジルという成分が入ったものが、第一類医薬品として薬局などで手に入ります。ただやはり濃度が低く浸透率などの効果も限定されるので、クリニックの処方薬とは異なる点は理解しておきましょう。使う前は必ず記載された使用上の注意も読んでください」（浜中先生）
ミノキシジルを有効成分とする女性用の医薬品。頭皮環境を整えて髪を生み出す力をサポート。抜け毛の進行予防に。
その他おすすめの育毛剤
「アンファー」スカルプD ボーテ メディカルエストロジー スカルプセラム【医薬部外品】
こちらは育毛効果が認められている「エチニルエストラジオール」に着目した頭皮用セラム。30種の天然由来成分も配合され、芯から強く抜けにくい美髪を育んでくれる。
【水井真理子さんおすすめ！】「年齢とともに衰退する女性の毛髪環境にアプローチした育毛剤で、使い始めてから次第に抜け毛が少なくなり、髪にハリコシが出てくるのが分かります」（水井真理子さん／トータルビューティアドバイザー）
「資生堂」薬用アデノゲン グレイシィ 150ml 【医薬部外品】
女性の毛髪の生まれかわりやヘアスタイルなどに着目し、女性向けに開発した発毛促進剤。薬用成分のアデノシンが血行や発毛を促進するほか、ハリやコシを与える髪保護成分、和漢植物保湿成分（サンショウエキス）を配合。
頭皮が乾燥していたらまずは頭皮用保湿液を！
「頭皮の乾燥が目立つ状態であれば、育毛剤を使う前に頭皮用の保湿液でしっかり保湿することをおすすめします。頭皮が乾燥すると髪にもダメージがおよぶ可能性があるからです。
保湿液の潤い効果を高めるために頭皮マッサージを行うのはいいですが、育毛剤や外用薬の場合は塗って乾燥を待つだけで充分で、特にマッサージでもみ込む必要はありません。むしろ余計な刺激を与えすぎて逆に痒みが出てしまうことのないように注意しましょう」（浜中先生）
「アンファー」スカルプDボーテ 薬用 頭皮保湿美容液 50ml【医薬部外品】
日本で唯一、頭皮が自ら潤いを保つ力（水分保持能）を改善する効果が認められた有効成分「ライスパワーNo.11（米エキスNo.11）」を配合した頭皮保湿美容液。鉱物油、合成着色料、パラベン、シリコン、香料不使用。 ※育毛効果はありません
その他おすすめの頭皮ケアアイテム
【福本敦子さんおすすめ！】「女性の毛質に働きかける月見草が主成分のオイルで、産後の頭皮環境の改善にも効果的と伝えられています。髪にしっとりしたツヤを与え、美容液としてもおすすめです」（福本敦子さん／ビューティコラムニスト） ※育毛効果はありません
加齢や内的・外的環境の乱れによって荒れやすい地肌を、健やかなコンディションに導くスキンケア発想の頭皮用ローション。ファーストエイジング世代の髪の切れ毛やハリコシ不足、乾燥などの悩みにも配慮。 ※育毛効果はありません
「ラ・カスタ」アロマエステ スキャルプ リペア エッセンス 120ml
オーガニック植物成分はじめハーブエキスを配合した、ジェットスプレータイプの頭皮用エッセンス。乾燥しがちな頭皮に潤いと美容成分を補給し、美しく豊かな髪に導き頭皮環境を整えてくれる。パサつきが気になる人、ツヤ髪を保ちたい人にも。 ※育毛効果はありません
頭皮に水分を与えて健やかに保つヘアトニック。髪にしなやかさとハリ・コシをプラス。洗髪後の頭皮マッサージや朝のスタイリング剤代わりにも。ローズマリーのクリアで爽快感のある香り。 ※育毛効果はありません
【倉田真由美さんおすすめ！】「グイングインと動くマッサージャーは、シャンプー中にも使用できるので、頭皮が硬くなりがちな人におすすめ。頭頂部に向け、引き上げるようにすると、肌のハリアップにもつながります」（倉田真由美さん／美容ジャーナリスト） ※育毛効果はありません
6 まとめ
「薄毛・抜け毛のケアはいかにきちんとした栄養、充分な睡眠がとれていて、かつ女性の場合はホルモンバランスに気を配れているか。若い頃なら生理不順や無月経を不用意に放置しないようにし、更年期や閉経を迎える際には、急激なホルモンの変動を起こさないように上手に体を管理できれば、髪にも影響が出にくくなります。血流を良くして酸素をしっかり巡らせることが最も大事で、つまりは健康的なコンディションを目指すということ。栄養、睡眠、運動などと聞くと当たり前すぎてつまらないかもしれませんが、結局はいちばん大切です。
普段からいろいろとケアをするのはもちろんいいですが、とはいえ加齢変化が本格化してきたときは、育毛剤ぐらいでは追いつかなくなってくるもの。気になる人は医師に相談されることをおすすめします。一般の皮膚科は保険が効かないこともあり、処方内容や相談にも限度があるので、生活習慣ほか自分に最適なアドバイスを受けられる専門外来を選ぶほうが効率がいいでしょう」
お話を伺ったのは……
浜中聡子先生／「クレアージュ東京 エイジングケアクリニック」院長
医学博士。北里大学大学院医学部卒業。女性が前向きに年齢を重ねていくことの重要性を感じ、日本抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会（WOSAAM）専門医、米国抗加齢医学会（A4M）専門医、米国先端医療学会（ACAM）などの資格を多数取得。精神と身体の両面からケアすることを得意としながら、“ウェルエイジング”を提唱し臨床現場に立っている。2020年11月「クレアージュ東京 エイジングケアクリニック（旧Dクリニック東京 ウィメンズ）」院長に就任。著書に『美人増髪計画』『アフター更年期からの不調を治す50の習慣』など。
クレアージュ東京 エイジングケアクリニック
東京都千代田区有楽町1-7-1
有楽町電気ビル 北館17F
tel. 03-5224-6661
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