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なぜメーガン妃とハリー王子はこれほど嫌われるのか

王政を廃したフランスの視点から分析。

By ELLE Japan
The Duke and Duchess of Sussex Visit South Africa
Pool//Getty Images

EUから離脱した英国で王族から離脱しようとしている渦中のヘンリー王子とメーガン妃。とくにメーガン妃への批判はさらに強まるばかりだが、そこには人種差別、アンビシャスな女性への嫉妬やマンスプレイニングと、王室の在り方への疑問などがない交ぜになっている。そこで市民が王室を転覆させた歴史をもつフランスからヘンリー&メーガン夫婦に見る「嫌われる理由」を強烈な皮肉を込めて分析したコラムをお届け。

ウィンザー城から離れて人生を再スタートさせるというハリー王子とメーガン妃の決定は世間を驚愕させた。これは狂気の沙汰なのか、すばらしい提案なのか―――。
フランス版「エル」より

Translation: Keiichi Koyama

シニア王族離脱も結局お金は王室頼み

The Duke And Duchess Of Sussex Visit Canada House
WPA Pool//Getty Images

王室が激震した。ヘンリー王子夫妻による、王室の公務を放棄し、カナダ滞在を長期化させたいとの発表はイギリス中を震撼させた。“Megxit(メグジット)”により、束の間だがブレグジットが忘れられた格好となった。タブロイド紙ではヘンリー王子夫妻を責め立てる論調が支配的となり、格調高い新聞や王室専門家も一様に批判的。『デイリー・メール』紙は王子夫妻が公務から逃れようとし、女王に事前通知すらしなかったとし、彼らを「不良王族」で「甘やかされた駄々っ子」と書き立てた。『ザ・ガーディアン』や『タイムズ』といった日刊紙は「財政的に独立する」という「夫妻の偽善」を指摘している。

the duke and duchess of sussex attend wellchild awards
WPA Pool//Getty Images

ヘンリー王子とメーガン妃は今後、王室から支給されている“王室援助金”を受け取らないとしているが、これは彼らの収入の5%にしか当たらない。一方、チャールズ皇太子が所有するコーンウオール公領から得ている巨額の手当を放棄する気はないようだ。また、アーチ―君の両親であるヘンリー王子夫妻は、豪邸フログモア・コテージも使い続けたいとしている。自立というのであれば、もっと良いやり方があるはずだ。エリザベス女王とチャールズ皇太子、ヘンリー王子夫妻は交渉を重ね、裏切り者に新しい地位を与えようとしている。

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the duke and duchess of sussex visit canada house
Chris Jackson//Getty Images

この際なぜ彼らがこうした行動を起こしたのか、その理由を考えてみよう。なぜハリーとメーガンは危険をおかしてまでこうしたスキャンダルを引き起こすのか。1936年のエドワード8世の王座退位とアメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの結婚を思い起こさせる、今回の王室離脱という衝撃的な決定のきっかけはいったい何なのだろうか。

王子を非難しづらいことを利用している雰囲気

Diana And Harry At Highgrove
Tim Graham//Getty Images

誰もがわかっていることだろうが、今一度この点を思い返してみよう……。

パリでパパラッチに追われ命を落とした母、ダイアナ元妃の死によりトラウマを負ったハリー王子は、それ以来、メディアに対し深い恨みを抱いているという。だからこそ、今度は妻が中流階級の出自・家族との確執・身勝手といったことでタブロイド紙から絶えず批判を浴び、さらし者にされていることに耐えられないのだ。

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charles william harry funeral
Tim Graham//Getty Images

「いくつかの横暴な力のせいで僕は母を失くしました。今、僕の妻が同じ力の被害者になっているのを目にしています」とプレスに向け宣戦布告したヘンリー王子。母親の死後、王子には鬱症状などの精神的トラブルが付きまとった。カメラのシャッター音やフラッシュにより、当時の不安が頭をもたげる。ここ数年は症状が治まっていたが、メーガン妃がタブロイド紙から激しく嫌がらせを受けるに当たり、よりひどくなって再発したという。「彼女の苦しみを黙って傍観しているなどできない」とハリーは説明している。そういうことであれば、王子の行動を理解できる。自分すら生きるか死ぬかの瀬戸際にいるのに、自分と妻の命を救おうとしているわけだ。そんな彼をどう非難できる?(いやできるはずがないだろう)

アメリカ人特有の王室への畏れのなさと金の匂い

prince harry marries ms meghan markle   windsor castle
Pool/Samir Hussein//Getty Images

「ベルナールの主な欠点は何? - 自己中なところ!」イギリスメディア数社の報じるところを信じるとすれば、映画『レ・ブロンゼ/スキーに行く』(’79)のこの有名なやり取りがハリー王子にはピッタリかもしれない。著名コラムニストのセーラ・ヴァイン氏は『デイリー・メール』紙に「このカップルは、自分たちの直近の幸せや満足以外には眼中にないんでしょう」と書いている。

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harry and meghan redefine their royal role
Peter Summers//Getty Images

もしかすると彼らはおぞましい企業家根性に憑りつかれているのかもしれない。事実、35歳のハリー王子と38歳のメーガン妃には、ビヨンセとジェイ・Zばりの“パワーカップル”になりたい気持ちがあるようだ。昨年6月、彼らは「サセックスロイヤル」ブランドの商標登録を行い、ロイヤルブランドの名を付けることができるような、洋服・飲料・教育本・慈善活動など一連の二次的著作物に道を開いた。この商売っ気がスキャンダルとなった。アメリカ出身で庶民の出のメーガン妃だからこそのビジネス欲なのか。メーガン妃はファッションへの思い入れも隠してはいない(「ジバンシィ」のミューズになることも考えられる)。

European Premiere of Disney's "The Lion King"
WPA Pool//Getty Images

大方の批判は、義務を負っていることをメーガン妃が分かっていないというもの。コラムニストのヴァージニア・ブラックバーン氏は『デイリー・エクスプレス』紙に「ケネディー家を貴族だと思っている国で育ったメーガン妃には、王室の一員でいるということはただセレブなだけではない、ということが理解できない。公務があるというのに…」と書いている。セーラ・ヴァイン氏は「彼らは『ロイヤル』の役割をまったく分かっていない」とも書いている。ハリー王子とメーガン妃は現代的でお金に目がないだけに、単調で古臭い英国王政が嫌になってしまったのかもしれない。

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捨てればいいのに捨てない王位継承権

Prince Harry Makes Headline News Across The Globe
Sean Gallup//Getty Images

とても仲の良かった母親に似て、ハリー王子は反抗的なタイプだ。既婚歴のある異なる人種の両親を持つ女性と結婚し、有力なタブロイド紙相手に訴訟を起こし、王室と距離を置くなど、危険を冒すことを好む。まるで、王室の偽善を非難し、エリザベス女王から距離を置かれていたダイアナ元妃の因習打破の態度を無意識のうちに再現しているかのようだ。

princess margaret
Derek Berwin//Getty Images

つまるところ、1936年に退位したエドワード8世や、戦闘機パイロットのピーター・タウンゼントとの叶わぬ結婚を願ったマーガレット王女(写真)と同じ、昔から続く“王室の反逆児”という伝統に名を連ねるだけのこと。それにハリー王子は継承順位6位でしかない。王座には決して届かないのに、公務に精を出して楽しいものだろうか。末っ子のハリー王子には、末っ子らしい臆面のなさがある。一方のウィリアム王子はよくある長男タイプで、家族の期待と責任の重みを両肩に背負っている。

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investec derby festival derby day
Mark Cuthbert//Getty Images

彼のような末っ子が王室の義務を放棄するというのはそれ程ショッキングなことだろうか? まあそれはそうに違いないが、王室に巣食うもうひとりの厄介者、アンドルー王子の犯した過ちに比べれば、まだまだではないだろうか。

都合よく“セレブ”でいたい身勝手さで王室を壊す

The Queen And Members Of The Royal Family Attend The Annual Royal British Legion Festival Of Remembrance
Chris Jackson//Getty Images

メーガン妃に近い筋によれば、メーガン妃は「嫌がらせを受け、さらし者になるために自分のキャリアを捨てたこと、発言を封じられていること、孤独」に苦しんでいるという。元女優のメーガン妃とハリー王子はたしかに困難を予期していた。しかし、これまで出会った困難は限度を超えてしまっていると、彼ら自身が認めている。そうしてカナダに逃げ出したいと願う気持ちが頭をもたげたのだろう。

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windsors in england
Keystone//Getty Images

英王室史家のヒューゴ・ヴィッカーズ氏は、王室との関係が断ち切られてしまうリスクがあると言う。離脱してしまえば、フランスに移住したエドワード8世とウォリス・シンプソン夫婦(写真)同様、彼らは好感度も評判も失い、「半分セレブ」という立場に陥ってしまう可能性がある。「国外に代わりの宮廷を築こうとしても、上手くいかないでしょう。」と、ビッカーズ氏。ひたすら夫妻を脇においやっている女王からの援助を期待することもできない。当然、女王は国の統治者として、公務に専念する模範的な王室を必要としている。公務こそが、英国民の税金で賄われている巨額の費用と王室の存在意義を国民に向け正当化する唯一の方法なのだ。

sentebale polo 2018
Chris Jackson//Getty Images

バッキンガム宮殿の常連によれば「王政に対する国民の共感なくして、王政は存続しえない」とのこと。独立を宣言したことで、ハリー王子とメーガン妃は国民からの共感を失ってしまうのだろうか。彼らのせいで王政が危険に晒されてしまうのだろうか。彼らの双肩にはかなりの重責がのしかかっている。

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