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世界中でロックダウンが宣言され、人々の優先順位はこれまでとは違ったものへとシフト。店舗や美容サロンの休業を経て、メイクアップやスキンケア、そしてメンタルヘルスにどのような変化が訪れたのかをUK版「エル」が考察。
何年もの間、美容ビジネスは止まるとがないと思われていた。大企業は飽くことなくスタートアップ企業を買収し、ソーシャルメディアは美容に関連したお金を生むプラットフォームとなり、産業によって生み出されたプラスチック廃棄物はあふれるほど山積みにされている。
しかし、業界内の人たちにとって、美容の景色は変わり始めている。2018年、消費者たちの“消費も廃棄も少なく”というメンタリティが加速することで“美容製品のダイエット”が行われ、英国の美容業界は成長の鈍化をついに経験した。
そして2020年、コロナウイルスの問題が起こり、最先端の新興ブランドらは打撃を受けた。そして私たちの美容に対する姿勢を劇的に、そしておそらく永久に変化させた。もちろんそれは、将来良い方向に向かわせてくれるというポジティブな意味で、だ。
ロックダウンが続くほど人間の思考と習慣は進化する
一部のブランドが打撃を受けるなか、オンラインビジネスは急成長した。美容関係のECサイト「lookfantastic」は、ロックダウン後に消費者の登録者数が200%増加した。むしろ、パニックに近いほどに。
「新型コロナウイルスの第一波をきっかけに、基本へ戻ることをフォーカスする人が増えましたね。石けんやハンドウオッシュのようなカテゴリーは急成長しました」と語るのは、ECサイト「カルトビュ-ティ」の共同創設者アレクシア・インジ。
このサイトも、リラックスを促す製品やストレスケアのアイテムが伸び、前年比317%と急成長したことは驚きではないはず。
また、ロックダウンが長引くことで私たちの物の考え方も進化し、優先順位が入れ替わった。そして、習慣は別の物へと変化した。ヘアカラーにマスク、そしてビタミンCサプリ。なお、ビタミンCの売上は免疫力アップへの関心の高まりによって550%と爆発的に成長したのだ。
良いものを応援する時代に
病院で手の消毒液さえ入手困難だった頃、スキンケアに必要な7つのステップなどが本当に可能なのだろうか。倒産の瀬戸際で買収されそうな会社の製品を買って、独立を支援してあげるべきか。あるいは、DIYの美容を学び、金を節約すべきだろうか。
新型コロナウイルスが終息して日常が戻ったとしても、周りの景色はきっとこのままだろう。もちろん工場の製産ラインは復活し、店舗も活気を取り戻すだろうけど、今得られた習慣のうちのいくつか、例えば購買量を減らしてより良いものを買う、DIY美容を楽しむなどは、新しい規範となるだろう。
有言実行なブランドにお金を使う
リサイクルやサステナブルを謳った企業のプロダクトには、社会的責任という言葉がすでに理念として掲げられていた。まさにコロナ禍になったとき、それらの企業は一段階ギアを上げて取り組む必要があったし、それを体現する良い機会だった。「パイ スキンケア」「タン リュクス」そして「オスキア」などの独立系ブランドは、手の消毒液の品不足に対して自社のラボを活用して製造し、医療従事者たちに寄付した。
「ミラー ハリス」はの自社の石けんの在庫を全てチャリティに寄付。「ハーバル エッセンシャル」は、コロナの前線で活躍する方たちのために、20ポンドの注文ごとに5ポンドを寄付する体制をとった。「ロクシタン」は、英国の国民健康保険システムNHSに無料でハンドクリームを支援するとともに、7万リットルの消毒液を製造した。
外出自粛期間中に肌が綺麗になった人は手を挙げて
ロックダウン中、自宅にあったたくさんの化粧品を使い切り、スキンケアをやめた瞬間に肌がきれいになった人も少なからずいるはず。なぜならスキンケアを朝晩、4つ以上のアイテムを投入して行うことは肌にとって良いこととは必ずしも言い切れないからだ。
「実は、肌はシンプルなケアを好んでいます。私が自身のクリニックで受ける相談のほとんどは、間違った化粧品や保存料を塗り重ねて起こるトラブルなのです」と、語るのはスキンケアブランド「ディクリー」の創設者でドクターのアニタ・スターナム。
化粧品ダイエットを強いられているということは、よりマルチタスクをこなすアイテムが求められるということ。アニタ医師もまた、複数の効果をもたらす製品を味方につけることをアドバイスしている。例えば、毛穴ケアのできるAHA配合で、しっとり潤う化粧水のような効果をもたらすクレンジングがそれにあたる。
顔のパーツはくっきりと
「これまで家で赤いリップスティックを塗ることは少しやり過ぎと感じたとしても、今はそれがZoomでのビデオ会議の時にすぐできる美容法になっています」と、UK版「エル」のデジタル美容エディター、ジョージ。
英国美容協会はこれにつけ加えるように「アイメイクの販売が伸びています。下はパジャマだったとしても皆さん目元はきっちりメイクをしています」
さらにZoom用のメイクアップには4つのポイントがある。
リップはポップな色がベスト
【POINT1】
気合いを入れたいのであればスモーキーアイをつくろう。たくさんのアイシャドウを塗り重ねることは忘れて。「ヴィクトリア ベッカム ビューティ」のワームゴールドのシェードがあれば、ひとつのアイテムで陰影のある目元が叶う。
【POINT2】
対面のミーティングMTGをしないメリットを考えよう。それは、ビデオコールの間だけ持続するリップスティックがあれば良いということ。ロングラスティングよりも、健康的かつポップに映るシェード、例えば「トム フォード ビューティ」の“リップ カラー スカーレットルージュ”がぴったり。
アイブロウで美しい顔立ちに
【POINT3】
きちんと整えられたアイブロウは、顔の輪郭と顔立ちをはっきりさせる最も有効な方法。不鮮明なWEB画面でも同様だ。「SUQQU」の“ボリューム アイブロウ マスカラ”は、眉毛に厚みと色合を即座に与えてくれる。今はアイブロウバーに行く選択は取りづらいのだから。
【POINT4】
輝く太陽の下で休日を過ごすというコンセプトは、今や過去のものとなりつつある。ということは、自分たちで日焼けしたかのような健康的なスキントーンをつくる必要がある。「シャネル」のブロンジングクリームを頬と鼻に塗り、サントリーニ島で日焼けして帰って来たばかりのイメージを演出してみよう。もしブロンズ肌をブーストしたければ「ジェームス リード タン」のアイコニックなアイテム“クリック&グロウ フェイスセルフタン”を使ってみて。自然な日焼け肌が手に入る。
セルフケアの腕を磨くチャンス!
直接顔を合わせる会議がなくなることは悲しいことに、メンテナンス系の施術に行く機会が減ることを意味する。手持ちの道具で髪をカットしたりメンテナンスしたり、あるいはセラピストのようなテクニックを磨かざるをえなくなるのだ。
「フェイスマスクやトリートメント、ハイテク美容機器、そしてフェイシャリストが使うツールの売上はこれまでの2倍になりました。そしてヘアマスクとトリートメントにいたっては、昨年の同時期に比べて125%もアップしました」と、アレクシス。
セルフネイルは最高の贅沢
自宅でのヘアカットとヘアカラーに関してはプロがHOW TOをビデオにアップしはじめ、さまざまなカラー剤を扱う「ジョシュウッド」の売り上げは130%アップ。
自分が自身の専属美容セラピストにならざるをえない状況は、技術を進歩させることがどれだけ大切で役立つものになるかを再考せざるをえない。UK版「エル」の美容ディレクター、ケイティでさえ、何十年と続いた美容習慣が崩壊したのだとか。
「私が毎週入れていたネイルサロンの予約をもうしていないなんて考えられない! でも、好きなTV番組や映画を見ながらセルフネイルをすることは、プライベートな時間を有効に使っているような気がしてとても楽しいことに気づいた。甘えた感覚で満足感を得るためにサロンに急いで駆け込んでいたことを考えると、以前は最高だと感じたものが今はそうでなくなるという矛盾のようなものを感じるわ」
オンラインで世界中のヨギーとつながる
事実、世界中で起きている自粛は控えめに言っても、ストレスを大いに伴うもの。心身ともに解放される健康的なヨガスタジオに友達とチェックインできないことは、メンタルヘルスにとってはやはりよくないもの。だから、私たちは、デジタルの世界に適応することにした。
ロンドンを拠点にするヨガスタジオ「リ:マインド」は、継続的に変化を続けるコミュニティを予見している数多くのスタジオのひとつだ。
「私たちは、驚くほど多くの人たちから、オンラインクラスへの移行に対する肯定的なフィードバックを受け取りました。アメリカからバリ島まで、新しい生活に対応しようとする多くの人たちとのつながりを感じることができたんです。ライブ配信は、録画のセッションと比べてより充実した経験をもたらします。オンラインクラスは、将来形を変えたとしても継続すべきですね」と、創始者であるユリアは打ち明けてくれた。
オンラインクラスは総じて、未来のフィットネスの考え方のひとつとなったようだ。人が見ているという不安も必要ないし、クラスに行き来する手間もなくなる。ほとんどのクラスでは、価格もより安いものになっているのも継続できるポイント。
優先順位を見極めながら健やかに過ごす
美容の世界にいる私たちは、新型コロナウイルスによって、ものごとの優先順位を考え直すことを余儀なくされた。
ウイルスが生活を長期的にどのように変えていくのか、どのくらいのスピードで変わっていくのかを正確に知ることは、誰にとっても難しい問題だ。
「私にとって最も大きかった驚きは、すべてのことがあっという間に変わってしまったこと。そして今後も想像できない形で物事が変わっていくのでしょう」と、アレクシア。商品やサービスを目の前にしたときに、どのくらい必要か、そしてどれくらいのコストがかかるかを見極めることが重要だ。
そして、時間というものがいかに貴重なものだということも。
Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI