president donald trump holds election night event at the white house
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ドナルド・トランプ(Donald Trump)
トランプがこう言い出した可能性はある。「ウォーレン最高裁判事に介入し、裁定してくれるように頼んだ」と



現地時間11月5日(水)の真夜中、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州など激戦区で多くの票がまだ開票されていない中、ドナルド・トランプ大統領は民主主義に飽きて選挙は終わりだと宣言した。「投票が全て終わって欲しい」。トランプ大統領は実際こう口にし、”壮大な計画”をうっかり暴露してしまった。現時点では何も起きていないにもかかわらず、最高裁に訴えると発表したのだ。私はその夕方、すでにドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のグリーンのピル(訳注1)を飲んでいたのでその後起きたことが少しぼんやりしている。ここから先は私の夢かもしれないが、トランプがこう言い出した可能性はある。「ウォーレン最高裁判事に介入し、裁定してくれるように頼んだ」。

ここで言っているウォーレン判事はすでに亡くなった元最高裁判事アール・ウォーレンではない。おそらく2017年のアカデミー賞授賞式の作品賞のプレゼンターを務め、本当は『ムーンライト』なのに『ラ・ラ・ランド』と発表してしまった俳優のウォーレン・ベイティだ。トランプ大統領はアール・ウォーレンの意見にも耳を傾けると言ったが、後からこの共和党員の判事が「ブラウン対教育委員会裁判」で人種分離政策に反対する立場を取ったことを知り考えを変えた。

89th annual academy awards   show
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2017年のアカデミー賞授賞式で誤発表されたジョーダン・ホロウィッツ(Jordan Horowitz)と、ウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)。戸惑いが隠せないジミー・キンメル(Jimmy Kimmel)
これは大統領選挙のご意見番の大部分が予想していたこと

明白な法的異議申し立てのない選挙結果を、1人の白人の男性の意見で動く最高裁判所に持ち込むと言って脅すのは前例がない。でもこれは大統領選挙のご意見番の大部分が予想していたことである。トランプがあまり知られていない、でもアナリーズ・キーティング(訳注2)とパティ・ヒューズ(訳注3)が完成させた「支離滅裂なでたらめを引き起こす」という一見したところ完璧に合法な戦略をとるだろうと多くの人が予想していた。それが功を奏するかどうかはまだ見守らなくてはならないが、一部の関係者によると今朝ウォーレン・ベイティはワシントンD.C.に向かい、一緒にプレゼンターを務めたフェイ・ダナウェイはジェットでウィスコンシン州ケノーシャに開票の状況を見にいっているという。

89th annual academy awards   show
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書かれている名前がおかしいと思ったウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)はカードをフェイ・ダナウェイ(Faye Dunaway)に読ませた

この選挙の結果を巡って紛争は起きていない。むしろ郵便投票と期日前投票で投じられた何百万もの票を選挙日に先立って集計することを共和党の議員たちが阻止していたことを考えれば、予想以上に順調である。これは私が選挙後の夢として熱望していることであるが、この選挙結果を確定するのにトランプがハリウッドに頼ったらそれは驚くべきことである。トランプはこれまでしばしばハリウッドのセレブリティたちへの不満を口にし、行き当たりばったりに攻撃してきた。例えば先週はレディー・ガガのアルバム『クロマティカ』にシェールガスが出てこないことを理由にガガをシェールガス反対活動家だと非難した。ビヨンセのことを「ビヨンシー」と呼んだことに至っては彼女に対する侮辱というより単にバカである。

この選挙では何が起きてもおかしくない(ベイティが選挙結果を発表することすらも)

しかしトランプがアメリカ合衆国大統領ではなく、このコラムのようなユーモア記事を書くカルチャーライターであるかのように、授賞式やコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」を見ながら生ツイートするのが自分の職務の重要部分を占めると思っていることはよく知られている。これはおそらく親子が入れ替わる映画『フリーキー・フライデー』のような状態だ。今私はジョー・バイデンに仕事を取られる危機に瀕していて、トランプが来年「プロジェクト・ランウェイ」のレビュー記事を書くことになるのだ。この選挙では何が起きてもおかしくない。ウォーレン・ベイティでも他のハリウッドの黄金時代のスターでもドラマティックに封筒を開けて、頭に浮かんだ適当な言葉を口にするということだって起こりうるのだ。

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Elizabeth Taylor feeling merry at the Golden Globe Awards
Elizabeth Taylor feeling merry  at the Golden Globe Awards thumnail
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「選挙に勝った」という1人の白人男性のただの意見

文字通り新しいニュースは何もなく、残されたのは投票用紙を数えるだけであるにもかかわらず、トランプが自分の手の届かない勝利を宣言するという弱々しい試みをしたことはまるで映画のようである。例えば午前2時、トランプが予想通り精神が錯乱したようなスピーチをする様子は、彼とその取り巻きがこの4年間、込み入った振付を考えて踊り、シンバとナラの命を傷つけてきた象の墓場(エレファント・グレイブヤード)のバルコニーで話しているようである。

実際にトランプ大統領は国民に対して「本当のところ我々は選挙に勝った」と間違ったことを言った。選挙に関する歴史家たちはこのコメントに当惑したままである。なぜならこれは現時点で確認できる事実に基づいた言葉ではなくただ1人の白人男性の意見であり、それがここで結論を下すのに従うべき方法のように見えたからだ。

いずれにしてもトランプを支えてきた汚いハイエナたちは訳がわからない状態に置き去りにされている。『ライオン・キング』の悪役・スカーが手を組んだハイエナ、”大統領顧問”エドはレポーターに対して匿名を条件に、でもフルネームを名乗りスペルまでダブルチェックしてからこうコメントする。

「ただただ奇妙だ。大統領は今のところ選挙人の票でジョー・バイデンを下回っている。でも誰も過半数の270人は獲得していない。だから我々は今年、プライドロックを支配する人はいないという結論に達した。キングはいない。ノー・キングだ。ラララララ〜♪ この計画で行こうと思ったら大統領は我々を『間抜け』と呼び、自分がキングだと言い出した。どの苦労を選べばいいのかって話だ。大統領は今『今世紀最大のクーデター』について歌っている。まったくわからない。ウォーレン・ベイティがこれを解決してくれることを祈ってる。もう我々はみんな疲れ切っているんだ。覚えなくてはならない振付がたくさんあるんだ」。

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一方、ジョー・バイデン前副大統領は同じく水曜日の深夜にレポーターに短くコメントし、支援者に対して「選挙結果はまだわからない。すべての票を開票する必要がある」とメッセージを送った。アメリカ国民はそれ以降、不透明な日々に突入している。その不透明さはひっきりなしにTwitterのフィードを更新することでしか解決できないが、今のところそれでは解決していない。翌日の新聞の印刷に間に合う時間に敗北を認めた候補者は結局、カニエ・ウェストだけだった。ロバート・カーダシアンのホログラム(訳注4)軍団に選挙権がないということを知らなかったのだ。

Translation: Yoko Nagasaka


(訳注1:“ザンゾラム”と呼ばれるドラマの中でしか登場しない薬。リブリュームという精神安定剤に似た働きを持つ)

(訳注2 :ドラマ「殺人を無罪にする方法」の敏腕弁護士。タイトル通り殺人を無罪にするためには手段を選ばない)

(訳注3:ドラマ「ダメージ」のやり手弁護士。勝つためならどんな策略でも実行する)

(訳注4:カニエの妻キム・カーダシアンの実父。先月開催されたキムの誕生日に、カニエは亡きロバートのホログラムをプレゼントし、「素敵かどうか微妙」「気味が悪い」と評判になった)

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