新型コロナウイルスの世界的な感染拡大から約1年が経った現在も、日本では複数の地域で緊急事態宣言が出され、諸外国ではロックダウンが実施されている。
コロナ禍ではテレワークが推奨され、自宅で1人きりで過ごす時間がグッと増えた人も多いはず。人との交流や外で過ごす時間が制限され、その場しのぎに用意したデスクに向き合い続ける日々のなかでは、ストレスを緩和し、心を落ち着かせるための何かが必要だ。
そんな日常に取り入れたいのが、ヨガ。自宅での長い1日の前後に緊張を和らげ、体をほぐし、頭をスッキリとリセットさせるためには、ヨガはうってつけ。「ヨガは、外部環境(私たちにはコントロールできない)が変化する間に、私たちの内部環境(心)を平和に保つ術を教えてくれます」とヨガ講師のキム・ハートウェルさんは話す。
この激動の時代にヨガで心と体を落ち着かせるため、エキスパートたちのアドバイスを参考にしてみて。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Photos: Getty Images Translation: Ai Ono From ELLE UK
1日の始まりには、どんなヨガをすべき?
テレワーク時の朝は退屈な時間になってしまいがち。ベッドから出て、シャワーを浴び、歯を磨き、お湯を沸かして朝食を食べ、それから何時間もデスクに向かう。これを日々繰り返すだけ。しかし、よりよい朝を迎えるための方法はいくつかある。
ヨガ講師のリディアナ・アボットさんは、1日の始まりにヨガの呼吸法を実践することを提案している。「ゆっくりとコントロールしたリズムを作り出せているか確認しながら、呼吸に集中することができます。特に、息を長く吐くことにフォーカスしましょう」
いっぽうヨガ講師のジョージア・ウッドさんは、連続するダイナミックなポーズで太陽を尊ぶ“太陽礼拝(英語では「サン・サルテーション」、サンスクリット語では「スーリヤ・ナマスカーラ」と呼ぶ)”で朝をスタートさせることを勧める。
「安全な方法で体を温め、数分で終わります」「特に朝は、より深い姿勢に入る前に必ず行ってください」
自粛中はきちんと“境界”を作ることが大切
パンデミックの間は時間の感覚が鈍くなり、悪習慣に陥りやすくなってしまう。ランチタイムにも仕事を続けてしまい、立ち上がったり歩いたりして筋肉を温めることを忘れてしまったり、英国の国民保健サービス(NHS)が推奨する1日1.2リットルの水を飲むことを忘れてしまったり、終業時刻を過ぎてもパソコンに向き合い続けてしまったり。
「“仕事場に出入りする”という切り替えがないため、家を絶え間ない労働の空間に変えてしまうことはよくあることです」とハートウェルさん。
だからこそ、この時期は健康的な心と体を維持するために、自分でコントロールすることを意識して労働時間に一定の制限を設けることが大切。
「散歩に出かけたり、体を動かしたり、友人や家族との時間(オンラインでも)を作ることで、仕事と生活のバランスを適切に保つことができるようになります」とハートウェルさんは言う。
さらに、ウッドさんはパンデミック中の自粛期間は長時間労働をしない意識を持つことが重要だと主張。
「あえて境界線を引かなければ、特に孤立しているときには燃え尽き症候群に陥る可能性もあります」とウッドさんは説明している。「仕事を終える時間と、瞑想やヨガの練習を始める時間を設定することで、1日のなかに仕事とリラクゼーションというメリハリを作ることができます」
仕事の手を止め、ヨガで体をリセットして
ヨガとは、古代から伝わる、体力・柔軟性・呼吸に焦点を当てて心身の健康を改善する運動。では、今よりも日々の生活に取り入れるには、どんな練習がよいのだろうか?
ハートウェルさんはこうコメント。「私たちは、可能な限り自宅で仕事をするという現在の要件のために、健康的とは言えないレベルで座って過ごす社会に生きています。長時間座っていると体が滞り、背部の筋群が弱く“怠けた”状態に、いっぽう前部が使いすぎの状態になります」
そうしたプレッシャーと午後3時のスランプを解消するため、正午にオンラインでヨガのレッスンを受けることを推奨するアボットさんは、「朝からの心の整理がつき、午後に向けての気分転換にもなりますよ」と話す。
頻度はどのくらい?
確保できる時間と個人の運動能力によるため、多くのエクササイズと同じく、決められた頻度や回数はない。つまり、自分の体に耳を傾けることがいっそう重要になる。理想としては、政府の指示に従ったうえでランニングやジョギング、サイクリング、自宅でのトレーニングなど、日常生活の中で少なくとも30分間のワークアウトを取り入れること。
もしヨガに慣れていないなら、アボットさんは週に1、2回の練習から始めることを推奨している。
「自分に合っているかどうかを判断する前に、まずは5週間ほど続けてみることをオススメします」とアボットさん。「ヨガに慣れた人であれば、頻度は自分で決められるでしょう」
いっぽうでウッドさんは、短い時間でもある程度の頻度で朝にするのがいいと言う。「他の運動と合わせて、週に3回できれば十分です」
「ランニングやサイクリングをしたり、もしくは座って過ごしたりする時間が長い場合、ヨガは筋肉を伸ばすために(強めるためにも)非常に重要であり、精神状態にも大きなメリットをもたらします」
どのポーズがオススメ?
どのポーズを練習するかは個人にもよるところが大きいが、2人は体と心を緩めることに役立つであろうポーズを紹介してくれている。
アボットさんのオススメは、ワシのポーズ、木のポーズ、シャバーサナ(亡骸のポーズ)。
「私はバランスポーズ2つと、休息のポーズ1つを選びました。バランスポーズを取るときは、地面や周囲と自分が本当に繋がっているように感じます。混沌としたエネルギーの中にいる場合は、優先して行ってもいいと思います」
「同様に、シャバーサナも地面に触れていると感じることができ、心身を休めることができます。生活のあらゆる面で回復するために私たちが今必要なのは、休むことだけです」
もう少し動きが欲しいという人のために、ウッドさんはキャット&カウ、蝶のポーズ、トカゲのポーズをオススメしている。やり方は以下を参考に。
キャット&カウ:背骨の動きをなめらかにし、体にエネルギーを回す
・両手と両膝を床につけ、四つん這いの状態に
・頭と尾てい骨を持ち上げるようにし、天井を見ながら背骨をアーチ状に反らせる
・反対に頭とお尻を下げ、背中の真ん中を押し上げるように背骨を丸める
・呼吸を意識しながら、交互に5回繰り返す
蝶のポーズ:腰まわりをリラックスさせる
・足の裏を合わせるようにして座り、膝を横に倒す
・足を手前に寄せるようにして股関節をストレッチ(つらい場合は、体と足の間に距離をあけてもOK)
・背中は丸めずまっすぐに
・膝を地面に近づけるように丁寧に下ろしていく
トカゲのポーズ:股関節まわりをほぐす
・ダウンドッグのポーズ(手足を床につけてお尻を高く上げ、体全体で三角形を描くようなポーズ)から、右膝を右肘のあたりまで引き上げるようにして足を右手の横に出す
・体を軽く前後に揺らして、ハムストリングスや股関節の緊張をほぐす
・その状態で数回呼吸をするか、できる場合はゆっくりと両方の前腕を床につけ、頭は重みを感じるままに下げて首の後ろも伸ばす
・反対の足も同様に
コロナ禍で心を“リセット”するにはどうすればいい?
自粛期間の心理的影響について、2020年2月に発表された研究では、適切に管理されていれば、隔離が不安やうつ病などの長期的な精神的健康問題には及ばないとされている。
医学雑誌『ザ・ランセット』に掲載されたこの研究では、コミュニケーションの改善や適切な情報を得ることなどが、自粛中の精神管理に役立つことが明らかになったという。
しかし、私たちの脳を健康かつ活発に保つために、私たち自身でできる対策は他にもいくつかある。「今は、通勤したり同僚から話しかけられて仕事が中断したりといった外部からの影響を受けず、落ち着いてリセットする絶好の機会です」とハートウェルさん。
「通勤に当てていた時間を有効活用しましょう。自然の中を歩いたり、瞑想やジャーナリング、運動などをしたり、より幸せで健康だと感じるためにたくさんの時間を費やしてください」
アボットさんはYouTubeやアプリを利用してガイド付きの瞑想をすること、もしくは「1日に数回、3~5分ほど呼吸に集中するだけでもいいです」と提案する。
「食事の前後や、トイレの後にすると決めるのがよいでしょう。座って呼吸をするだけで、気分がスッキリします」
また、ウッドさんはその日1日をどんな日にするか、毎朝5分ほどかけて考えてみることをオススメしている。「お昼休憩の後も、自分の意思を確認してみましょう。物事の見通しも気分もよくなり、その日の残りの時間に集中することができます」
役立つアプリやチュートリアルは?
ソーシャルディスタンスが求められる現在、対面式に代わり、自宅で受けられるオンラインレッスンやアプリが人気。
ハートウェルさんは「私のお気に入りは、呼吸法ならリッチー・ボストック(@thebreathguy)、楽しくクリエイティブかつ有益にヨガの流れを学ぶなら@celestpereira、モビリティエクササイズなら@daniellewillls、ヨガと瞑想なら@belindaburwellと @phoebegreenacreです」と紹介。
アボットさん自身も週に1回無料のクラスを開催しており、オンラインクラスはパンデミックにより経済的影響を受けた人のため無料/払える額だけ払う方式で提供しているとのこと。
ウッドさんはYouTubeでもレッスンを配信しており、「Insight Timer」や「Calm」といった瞑想アプリをチェックすることをオススメしている。
自宅でヨガをするのに役立つアイテムは?
ジムやヨガスタジオでブロックやベルト、マット、アイピローなどのヨガ用品を使っていた人は、自宅にあるアイテムで代用することが可能。アボットさんたちは、本がブロックの代替品として、ネクタイやスカーフ、タオルがベルトの代わりとして使えると推奨する。
またウッドさんは、「クッションや折り畳んだブランケットなども、あると安心ですね」ともコメント。
長引く自粛生活でメリハリがつかない、ストレスやモヤモヤを解消したいと感じているあなたは、ぜひ少しずつでもヨガを試してみてはいかが?