ぽっこりおなかや体重増、頭痛…ステイホーム中の不調を解決する12の方法
2カ月ほどに及んだステイホーム。この外出自粛期間中に、体が重い、ぼーっとするなど“なんとなくの不調”やちょっぴり太ったと感じる人も多いのでは。そこで、「低インシュリンダイエット」を提唱し、健康コンサルタントとしても人気の医学博士・永田孝行先生が、不調の解決法やダイエット法を伝授!
ステイホーム中に表れやすい不調とは…
ステイホーム中はさまざまな理由から体調を崩した人も多いのでは。不調の代表例は以下の10個。どのくらいあてはまる?
☑疲れやすい
☑むくみやすい
☑冷えやすい
☑便秘
☑睡眠障害
☑食欲不振
☑やる気の低下
☑腰痛
☑肩コリ
☑ぽっこりおなか
不調の原因は「サーカディアンリズム」の乱れ
まずはステイホームが、さまざまな不調を招くことを、永田先生が解説。「活動量が低下し、血流が悪化するため肩コリ、腰痛、体の柔軟性が低下します。さらに脳内への酸素供給が減り単調な生活が重なることで、思考能力が悪くなってやる気も低下してしまいます。人はサーカディアンリズム(1日の規則的な生活リズム)によって“恒常性(ホメオスタシス)”を維持していますが、ステイホームによりそのリズムが乱れると、“恒常性”も乱れてさまざまな体の不調が現れ出します」
ステイホームが長く続いたことで、不調が不調を招いたとも。「不調が表れたらすぐに気付いて生活リズムを修正できれば“恒常性”が整えられますが、ほとんどの人が気付かず、リズムの乱れを放置してしまいがち。その結果、いつまで経っても戻らない感覚に陥ります。そこまで進んでしまうと通常の自分自身ではないので、いつもは簡単にできることも辛く感じてしまい、ストレス過多に陥るのです」
間食が増えたのは、食事の栄養バランスに問題あり
また、テレワーク中に頻繁に、おやつを食べてしまった人も多いのでは…。「間食が多いのは、朝昼晩、各食事の栄養バランスが悪く、食事で満足できていないから。また、間食も糖質が多いため、ただ空腹を満たすだけになってしまい、さらに求めるという悪循環に陥りがちです。タンパク質や食物繊維が不足すると体が冷えやすく、腸内環境も悪化しやすくなります」
リカバーするためには、焦らず冷静に自分と向き合うことが大切という永田先生。「続けられることから徐々に積み上げるように、繰り返し続けましょう。焦らないで大丈夫。2~3カ月のリズムの乱れは、2~3週間くらいを目安に元通りになります」
次からは、ステイホーム中の不調を解決する12の方法を伝授。
1.夕食は就寝3時間前まで、それ以降の飲食は水分補給のみ
前日、遅くに飲食すると朝食が食べられなくなり、モチリンというホルモンが働かないため、排便も促されなくなることがあります。飲酒する場合も含めて就寝3時間前には終えましょう。
2.朝食は飲み物以外に3品以上食べる
特に朝食に大豆製品(豆腐や納豆など)を食べると、腹持ちが良くなるうえ、昼食での食べ過ぎや血糖値の急上昇が抑えられます。朝食にスムージーを取る場合、スムージーは栄養価が高いので、飲み物ではなく食事と捉えてOKです。
3.昼食は高タンパクのメニューで栄養バランスを重視
例えば、「チャーハンとラーメン」のように炭水化物に偏ると一時的には満腹になりますが、すぐにおなかが空いて、間食が欲しくなってしまいます。肉や魚と乳製品など、タンパク質を数品取るのがおすすめ。糖質の摂りすぎによりおやつを食べてしまうのは、クセになりやすいので注意。
4.おやつはナッツ、チーズ、ヨーグルトなどを1日1回5分以内
おやつ(間食)が止められない人の多くは、食事で必要な栄養素がまかなわれていない傾向にあります。栄養不足を補うために脳内摂食中枢が働いて、おやつの欲求につながりますが、この時に脳が要求している栄養素はおおむねタンパク質です。
しかしおやつのほとんどが糖質ですので脳が要求する栄養素ではなく、いつまでも「何か食べたい」といった感覚が残ってしまいます。おやつに手を伸ばさないコツとしては、しっかり必要な栄養素が摂れる食事を心がけること。それから、おやつを食べるとしたらナッツ、チーズ、卵、ヨーグルトがおすすめ。柑橘系などの果物も許容範囲です。
5.時間やタイミングを決めて、毎日必ず運動する
運動は、続けられないと効果が薄いので、たとえ短時間でも毎日必ず続けられるレベルの負荷に留めましょう。特に運動習慣がない人は、注目の「活動(ニート/NEAT)」でも充分に効果があります。NEAT(NonExercise Activity Thermogenesis)とは、たとえば家事をしたり、なるべく階段を使ったりという特に運動とは言えない活動レベルによる体熱産生(消費カロリー)のことです。
日常的に歩きを増やしたりエレベーターを使わずに階段を選んだり、せっかちに動き回ることなどもNEATに含まれますが、私は自宅での活動に運動の要素を少しプラスした「NEATプラス」をおすすめしています。
永田先生考案! 簡単、NEATプラスの運動例
1 両腕を背後に伸ばし、手のひらを内側に。両手を近づけたり離したりする
2直立したら、両膝を左右交互に高く引き上げる
3 両腕を上に伸ばし、姿勢を乱さず背後に向かって左右交互に大きく回す
4 立位で膝を伸ばしたまま片方ずつ、背後から前方へと足を蹴り上げる
5 両足を肩幅に開いて立ち、足のかかとを上下させる
6 両腕を前に伸ばし、手をグーに力いっぱい握ったらぱっと広げる。左右交互に。
7 椅子の前で両手を後頭部で組み胸を張り、股関節を曲げながら座る直前で立ち上がる
8 腕立て伏せのポーズをとり、床に両肘をついて体を伸ばしたまま20秒~30秒間静止する
全て20回(秒)ずつ繰り返して、慣れたら30回(秒)に増やします。1の運動だけを3日続け、その次は1と2の運動だけを3日、さらに1と2と3を3日…と順次運動の数を増やしていき、最後は1から8の全てを3日続けます。
「三日坊主」を8回繰り返して1カ月後に1カ月前を振り返って下さい、続けられた人しか味わえない効果効能が多々表れます。
6.炭水化物はしっかりとってOK! ただし精製度が低いものを
血糖値が急激に上がるとインスリンが多量に分泌され、血糖値を下げる過程で糖分が脂肪へと変わります。つまり、血糖値を上げすぎないことが、ダイエットの鍵に。ただし、食事から糖質をカットしたり制限をしてしまうと、一時的には体重が減ったり、特に若年層の人は体調が良くなる場合もありますが、続けていくうちに甲状腺機能が低下して疲れやすくなり、老化を早めてしまうので要注意。また、糖質の代謝機能が低下して、少しの糖質でも血糖値が上昇しやすくなってしまいます。
糖質は極端に控えるのではなく、食事の50%未満を目安にしましょう。さらに白米を玄米や雑穀に、うどんをパスタやそばに、小麦粉を全粒粉に、など精製度が低い主食に替えるのがおすすめ。
7.揚げ物を食べるときは、衣を少なめに
揚げ物はOKですが、小麦やパン粉は少なめ、あるいは素揚げにしましょう。油が酸化しないように、揚げたら時間を置かずに食べます。
カロリーは熱量であり、栄養素ではないので気にする必要はないのですが、高カロリーになるとカロリー計算上食べる分量が増えることを意味しますので、過食には注意しましょう。
8.ベジファーストで食べる
野菜(食物繊維)から先に食べると、同じ食事でも比較的食後の血糖値は上昇しません。最近は糖質制限を好む肉好きな人が、肉から先に食べる「ミートファースト」を推奨していることが目立っていますが、肉から先に食べる場合には肉に味付けをしないようにしましょう。ちなみにミートファーストの方は野菜嫌いの傾向にありますが、腸内環境を悪化させないためにもぜひ、食物繊維は摂ってください。
9.発酵食品を毎食必ず食べる
栄養を吸収する過程は「消化・吸収」と言われますが、正しくは「消化・発酵・吸収」して必要な栄養素を取り入れます。つまり発酵食品を取ると、発酵の過程が軽減されるので消化酵素の節約にもなります。ただし、発酵食品をたくさん食べればよいというわけではなく、少しずつで充分なので多種の発酵食品を取るように心がけてください。朝・昼・夕食で1品ずつ、例えば朝食時に納豆、昼食時にヨーグルト、夕食時に漬物やキムチというふうに取ることをおすすめします。
10.体を冷やさない
免疫システムの60%を腸が占めるといわれ、体温が低下すると免疫や酵素の働きも低下してしまいます。体を冷やさないように心がけましょう。ただし、夏場には体温が上昇しやすくなるので、冷たい水を飲んで冷やすのはOKです。この場合、腸への負担はありません。
11.週に1回は夕食を抜くかファスティングをして血糖値を整える
太りやすい(血糖値が上昇しやすい)と思ったら、週に1回は夕食を抜くか、ファスティング(断食)をするのがおすすめ。腸内環境を整えるのにも効果的です。
12.姿勢を正して、ぽっこりおなかを解決
テレワークなどで同じ体勢をとっていると徐々に崩れ、姿勢が悪いままの状態で長時間座っている、なんてことも…。そうすると呼吸が浅くなり、内臓の上下運動が弱くなり、食事によって胃が下垂して腸を圧迫することで、下腹部が出てきます。
そもそも“ぽっこりおなか”で考えられる原因は、体脂肪の蓄積、筋力不足、姿勢の悪化、腸内ガス、腸の蠕動運動が弱いなどですが、特に太っていない場合の原因は、姿勢と呼吸がほとんど。解決するにはまずは、絶えず姿勢を保持することです。崩れた姿勢を正しく保持するのは非常に辛いのですが、1週間前後で慣れていきます。
そして同時に、胸を大きく開く胸式呼吸と下腹部を意識する腹式呼吸をゆっくり10回繰り返します。通常の状態で、息を吸ってから吐く(力を抜くだけで自然に吐けます)のが胸式呼吸、吐いてから吸う(力を抜くだけで自然に吸えます)のが複式呼吸と覚えて下さい。それができてきたら、腹筋運動をプラスします。
今回、お話を伺ったのは、医学博士・永田孝行先生
一般社団法人日本ダイエットスペシャリスト協会理事長、医学博士。東京大学大学院医学系研究科で肥満と代謝を研究。生活習慣病予防と改善のための食事療法としてGI値(グリセミック・インデックス)に着目して実験・研究を重ねた後、2001年に「低インシュリンダイエット」を提唱、ブームを巻き起こす。これまで64冊を出版し、主な著書に『低インシュリンダイエット』(新星出版社)、『ダイエットベーシックブック』(評言社)など。
日本の他に台湾、韓国、中国、豪州などでビジネスを展開。健康コンサルタント、薬機法コンサルタント、企業コンサルタントや研究なども行い、講演活動やブログ、フェイスブックで最新情報を発信するほか、雑誌の指導・監修、テレビ、ラジオ、新聞などでも活躍する。現在は健康・ダイエット指導者の育成に尽力している。