化粧品の正しい捨て方とは? 化粧品のタイプ別に処理方法を大解説!【ごみ清掃芸人監修】
  1. 化粧品を捨てる際の基本的なルール
  2. 化粧品ごとに違う! 容器と中身の処理方法
  3. 捨てる前に……フリマアプリや買取業者に売るのも手!
  4. 地球のために心得たい、大事なこと

お話を伺ったのは……

化粧品の正しい捨て方とは? 化粧品のタイプ別に処理方法を大解説!【ごみ清掃芸人監修】

滝沢秀一(マシンガンズ)/
1976年、東京都生まれ。太田プロダクション所属。東京成徳大学在学中の98年、西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2007年、08年には「M‐1グランプリ」準決勝進出。12年、定収入を得るために芸人を続けながらごみ収集会社で働き始める。14年に『かごめかごめ』(双葉社)で小説家デビュー。ごみ清掃員の体験などを発信したTwitterが人気を集め、18年にエッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)、19年に漫画『ゴミ清掃員の日常』(講談社)などを上梓。2020年10月に環境省「サステナビリティ広報大使」に就任。オンラインコミュニティ『滝沢ごみクラブ』発足。


1 化粧品を捨てる際の基本的なルール

(※ごみの分別は地域によって異なる場合があります)

“9割ルール”で考える

「その素材の9割が燃える素材であれば燃えるごみ扱いにする、という基本ルールがあります。化粧品は形状も素材も中身もいろいろ種類があって、判断に迷うかと思いますが、迷ったらまずはこの9割ルールに則って考えてみてください。

素材の判別がつきにくいときは、爪で素材の表面を叩いて音を確認してみるのがおすすめ! ガラスはコンコンと硬い音が、プラスチックは鈍い音がするはずです。食器なども陶器かプラスチックかで迷ったときは爪で叩くと大体わかりますよ」

ごみは大きく分けて2種類

「プラスチックや瓶、缶、ペットボトル、古紙など、いろいろあってごみの種類がたくさんあるように勘違いしがちですが、ごみは基本的には燃えるごみ(可燃ごみ)と燃えないごみ(不燃ごみ)の2種類。その燃えるごみの中から再生資源を取り出しているわけです。化粧品でリサイクルできるものは、汚れていない状態を前提とする、ガラスや瓶、陶器、容器包装プラスチックあたりとなります。
特に自分の自治体がプラスチックをどう扱っているかが分別の大きなカギになるので、サイトやごみのパンフレットでまずは確認を!」

プラスチックのフタは資源、スパチュラは可燃ごみ

「容器ほかプラスチックの包装フィルムやフタは、容器包装が用途なので、容器包装プラスチックの資源に出します。ただし、たとえばストローの包装フィルムは容器包装でもストロー自体は容器包装に当たらず可燃ごみ扱いになるのと一緒で、スパチュラなどの容器包装を用途としていないものは燃えるごみに捨てます」

鉄や陶器は割れ物・陶器の日に

「ときどき容器に陶器や鉄が使われている化粧品もあります。自治体にもよりますが、そうした場合は金属・陶器・ガラスごみの回収日に出してください」

液体は回収不可

「基本的に液体はNG。中身の入った物をそのまま出された場合は回収できないルールなので、容器はできるだけ空にして出してください。中身が出せないケースなど、迷ったときは気軽に清掃事務所に相談しましょう」

匂いの強いものは不燃ごみへ

「資源の大敵は汚れと匂いです。古紙の回収でも、洗剤やお線香の箱などは匂いが染み込んでいて再利用の邪魔になるので、実は資源として再生できません。同様に香料の強い化粧品も、容器(ガラス瓶以外)に匂いが強烈についていることが多く、そうしたものは不燃ごみ、紙なら可燃ごみの扱いになります。
ちなみに化粧品をネット注文した際の郵送箱の伝票、あのカーボン紙は裏写りするのでこれも再生資源の大敵。再生不可なので、伝票は古紙でなく可燃ごみへ、段ボールは資源として出しましょう」

2 化粧品ごとに違う! 容器と中身の処理方法

■リキッドタイプ

香水

「香水は液体なので、そのまま出すと回収されない可能性大。不要な布やタオルを用意し、火気のない場所で香水の中身を全て布に染み込ませてから、ベランダなどで乾かします。ある程度乾いたらその布は可燃ごみへ。乾いていれば袋などに入れる必要はありませんが、匂いを配慮したい場合はレジ袋に入れてしっかり結んでください。フタはプラスチックであればプラスチック資源へ。
時々フタの開かない香水がありますが、残念ながらひたすらスプレーし続けて液体を出すしかなさそう。根気よく出す、もしくは清掃業者に電話相談して、1~2本であれば引き取ってくれると思います」

マニキュア

「マニキュアは、容器自体は瓶なので資源ですが、中身がカチカチに固まっている場合も含めてなかなかキレイに洗えないので、不燃ごみとして捨てて大丈夫です。本当はトップの刷毛とフタは可燃ごみ、単体のフタ(刷毛なし)は容器包装プラスチック扱いですが、中身があるとフタを別々にできないので、そのまま一緒に不燃ごみに出してOK。
とはいえマニキュアも要らない布や使い終わった紙、ティッシュなどにできるだけ出してから捨てるのが理想的です。紙やティッシュが乾いたら可燃ごみに捨てましょう」

オイル系

「オイル系の化粧品は食用油の扱いと同じで、水にそのまま流すと汚染の問題に関わるので、油を吸い取るパッドなどにオイルを染み込ませて、容器を空にしてから捨ててください。瓶の中で固まっていて取り出せないオイルバーム系は、その中身がごみになるのでそのまま不燃ごみになります」

リップグロス・リキッドリップ

「リップグロスなどは中身が出しにくいテクスチャーなので、その場合はそのまま可燃ごみに。上のフタ(プラスチック)は本来はプラごみですが、中身が漏れるよりは閉めて一緒に出してもらうほうがベターです」

シャンプー・コンディショナー

「普通に使いきってほしいところですが、どうしても捨てたい場合は、水質汚染のことを考えて、中身をそのまま洗面所で洗い流すのではなく、不要な布に含ませて布は可燃ごみに。空けた容器はプラスチック資源に当たるので、軽く拭き取ったり洗い流してからプラスチック資源に出してください。
プラスチックはリサイクル時に工場で1回すべて洗われるはずなので、家庭ではそこまで丁寧に洗わなくても大丈夫ですよ」

リキッドファンデーション

「中身を不要な布に出したあと、そのまま可燃ごみとして捨ててOKです。水質汚染を考えて、容器の中は洗わなくて大丈夫。資源になるフタを別々にできそうであれば、フタのみ資源として捨てます。瓶タイプの容器なら、汚れた瓶は不燃ごみへ」

化粧水・美容液

「中身を捨ててから容器を資源へ。プラスチックならプラスチック資源、瓶なら瓶の日に出しましょう。美容液のスポイト部分がガラスかプラスチックか、素材がわからず判断に迷ったときは、不燃ごみとして出してしまってもOKです」

■パウダー(粉)タイプ

パウダーファンデーション

「パウダー自体は燃えるごみで、容器は素材によってそれぞれ分別します。9割ルールで見ておおよそがプラスチック容器であれば、プラスチック資源に。ただ、コンパクトケースの鏡は不燃なので、できる人はコンパクトケースの上半分を手で折って切り離し、不燃ごみに出すことをおすすめします。怪我しないように折りましょう」

アイシャドウ

「パレットであれば鏡側の上半分を折れたら折って切り離し、不燃ごみへ出すのが理想。でも折るときに怪我すると危ないので、そこまで無理しなくてもOKです! 下半分は、アイシャドウ部分を取り出せないようであればそのまま9割ルールで可燃ごみへ。チップブラシも可燃ごみです」

ルースパウダー

「パウダーは可燃ごみへ、容器は容器包装プラスチックとして分別してください」

■クリーム・ジェルタイプ

クリーム

「ティッシュや不要な布にクリームをすべて出して軽く容器をふき取り、容器はそれぞれ資源に出しましょう。チューブタイプはわざわざ後ろ側をハサミで切って中身をキレイにする必要はなく、半分くらいであればそのまま可燃ごみでOKです」

クレンジングジェル・ヘアジェル・ボディジェルなど

「ジェル系のテクスチャーも、シャンプーなどと同じでそのまま排水口に流すと水を汚してしまいます。そこまで大量じゃなければ、そのまま可燃ごみに出しても大丈夫。もしくはやはり要らない布に中身を出してから捨てましょう」

クリームファンデーション

「リキッドファンデーションと考え方は同じ。クリームを不要な布に出し、容器を開けてから、そのまま可燃ごみに出すか、フタを資源として分別して捨てます」

クッションファンデーション

パウダーファンデと同じく、上半分の鏡側を追って切り離し、こちらは不燃ごみに。スポンジほか、残りは可燃ごみに出せばOKです」

■マスカラ・アイライナー・リップスティック・クレヨンetc.

マスカラ

「マスカラは全部プラスチック製ですが、汚れが取れないものなので、すべてそのまま可燃ごみとして捨てましょう」

アイライナー・リップスティック・クレヨン

「これらも全部可燃ごみでOK。キャップがプラスチックであればそれだけ資源へ出してください」

■ツール系(スポンジ・チップ・ビューラーetc.)

「9割ルールで判断しつつ、燃えるか燃えないかで判断します。スポンジやチップは可燃ごみ、ビューラーなど金属素材を使ったものであれば不燃ごみに。美容家電も不燃ごみです。多少の素材違いであれば業者は回収してくれることも多いので、細かく考えすぎなくても大丈夫です。ツールに限らず、どうしても迷ったら不燃ごみとして捨てても構いません」

■スプレータイプ(ヘアスプレー・UVスプレー・泡スプレー・制汗剤etc.)

「ヘアスプレーや制汗剤などの美容系スプレー缶(エアゾール製品)は、基本的に使い切って捨てるのが前提です。使いきれない場合は、通常フタ部分に内蔵されているガス抜きキャップ(残ガス排出機構)を使ってガス抜きします。製品表示に従って、必ず風通しのいい、火の気のない戸外で行ってください。少しくらいなら中身が残っていても許容範囲です。

いちばん困るのは、ほかの不燃ごみの中にスプレー缶をそのまま入れられること。危ないのでスプレー缶はスプレー缶でまとめて or 個別に袋に入れておき、清掃員がわかるようにしてください。また、昔は“穴を開けて捨てるルール”がありましたが、近年はむしろ危険とされているので、穴は開けないでください」

■ライター

「基本的には使い切ってから、中身の見える袋に入れて不燃ごみへ。中身がまだある場合は、戸外で、ガスが出る状態をガムテープで固定してしばらく置いておくのがおすすめ。ただライターは非常時など、持っておくと何かと便利なので、無理に捨てずに取っておくといいですよ」

■美顔器・携帯扇風機などの小型家電

「実は清掃車の火災の一番の原因が、携帯扇風機などのモバイルバッテリーに使われるリチリウムイオン電池からの出火です。リチリウムイオン電池はほかのごみに混ぜて捨てられると大事故につながるので、美顔器などの小型美容機器を捨てる際は、リチウムイオン電池が使われていないか、必ず確認を!
コイン型リチウム電池は取り出して乾電池と一緒に分別します。小型家電製品は不燃ごみ、または清掃事務所やリサイクルセンターで窓口回収しています」

■紙・包装関連の素材

匂いのついた紙

「基本ルールで話した通り、匂いのついた紙は完全に脱臭できず匂いが残ってしまうため使えません。石けんの包装紙や芳香紙、洗剤の箱、香水を試した紙などは可燃ごみに出してください」

金紙・銀紙などの箔押しされた紙

「メタリックな紙は処理の工程で取り除けず、そのまま混ざりこむと紙が金属反応を示してしまうので再生不可。古紙回収ではなく可燃ごみで出しましょう」

不織布

「一般的な不織布はポリエステルやポリエチレン、ナイロンなどの化学繊維でできているので可燃ごみとなります」

プチプチ、エアー緩衝材

「プチプチなどの気泡入り緩衝材は可燃ごみ or プラごみへ(自治体による)。内側にプチプチのついた紙の封筒は、古紙回収にそのまま出さず、緩衝材を剥がしてから出すこと。また緩衝材はできるだけ空気を抜いてから捨ててくれると助かります」

緩衝材用の使用済み昇華転写紙

「化粧品系にはあまりついてこないかもしれませんが、靴や鞄に詰められた色付きの緩衝材はリサイクル不可。これが古紙回収に入ってしまうと再生された紙がトン単位で損失されてしまうことになるので、資源に混ぜず、可燃ごみとして捨ててください。その詰め物が使用済み昇華転写紙かどうかの判断も難しいので、迷ったらすべて可燃ごみへ」

発泡スチロール

「発泡スチロールをそのまま出すと、清掃車に潰されたときに細かく砕けて周囲に散ってしまうので、袋に入れて捨てるのがベター。分類は一般的には容器包装プラごみですが、一部では可燃とする所も。自治体に従って捨てましょう」

レシート

「レシートは感熱紙という、特殊なインクが使われたタイプの紙。このインクが再生紙に混ざると発色して斑点ができるので、これもリサイクルNG。可燃ごみとしてください」

化粧品の正しい捨て方とは? 化粧品のタイプ別に処理方法を大解説!【ごみ清掃芸人監修】
Caroline McCredie//Getty Images

3 捨てる前に……フリマアプリや買取業者に売るのも手!

使ってくれる人に回して循環させよう

「包括的に考えて、ごみは少しでも減らしたいもの。未使用品や少ししか使っていない化粧品であれば、フリマアプリや買取業者などを活用して、欲しい人の手に渡すのもひとつの手だと思います。実際、定価より安い値段で買ってちょっと試してみたいと考える人は多く、出品すると意外と売れるものですよ」

美しいプレゼン&ていねいな郵送を

「僕の妻もよくフリマアプリを利用して売り買いしていますが、売る際の注意点としては、郵送するときは中身が出ないようにしっかり密閉、密封する。破損しないように緩衝材をつける工夫なども大切です。できるだけ買ってもらって循環させたいので、自然光で写真を撮るなど、商品がキレイに見えるように努めるといいでしょう」

4 地球のために心得たい、大事なこと

「化粧品は複合素材が多くて分別が難しいですよね。面倒なのになぜ分別をしなきゃいけないかといえば、世の中にごみがとにかく多いからです。ごみの量に対する最終処分場の量は、日本全体であと20年程度しか残っていません。20年ってあっという間なので、極力みんなでごみを減らしていかなきゃいけない。

実際に清掃業務をしていて、1~2回使っただけで捨てているような状態のごみが、化粧品によく見られます。買ってすぐ使えないから捨てよう、という発想は一度やめましょう。フリマサイトの利用も含め、ものを大事に使うということも考えていかないとね。そして買うときにもしっかり考えることです。

最近はレフィル式の容器に変えたり、自主回収プログラムを始めたメーカーも増えて、化粧品業界も変わりつつあるなと感じます。そうした自主回収システムの存在を知ることも大事。できるだけ積極的に協力して、みんなでものを循環させていきましょう!」

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