映画界に大きな影響を与えた女性監督とは? 男社会である映画界で闘い、未来を切り開いたフロントランナーから、今の映画界で活躍する新世代監督までを一挙に総ざらい。『エル・ジャポン』12月号より。
▼前編はこちら【00-70年代】時代を変えて女性監督ヒストリー
Text ATSUKO TATSUTAPhoto AMANAIMAGES,AFLO,GETTYIMAGES
リリアーナ・カバーニ (1933~)ヴィスコンティも絶賛した愛の深淵を描くまなざし
ドキュメンタリー出身のイタリアの監督。代表作『愛の嵐』('73年)では、元ナチス親衛隊と、その倒錯した性の愛玩具だったシャーロット・ランプリング演じる女の、不条理ともいえる愛の深淵をまざまざと見せつけた。巨匠ルキノ・ヴィスコンティの大きな影響を受けていたが、その濃密な愛と官能を描き切った手腕はヴィスコンティにも絶賛された。
アグニエシュカ・ホランド (1948~)ハリウッドでも活躍するポーランドの名監督
巨匠ミロシュ・フォアマンやアンジェイ・ワイダの元で学び、'70年代はポーランドの「モラルの不安派」運動の新進監督として活躍した。'80年代以降は海外に出て、レオナルド・ディカプリオ主演の『太陽と月に背いて』など英語映画も多く製作。『ソハの地下水道』(2011年)でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
ジェーン・カンピオン (1954~)カンヌ映画祭史上唯一最高賞を受賞した女性監督
ニュージーランド出身の世界で最も成功した女性監督。短編で注目された後、『ルイーズとケリー』('86年)で監督デビュー。言葉の代わりにピアノを奏でるヒロインとマオリ族の男性との情熱的な愛を描いた『ピアノ・レッスン』('93年)は、女性で初めてカンヌ映画祭最高賞のパルム・ドールを受賞した他、アカデミー賞で3部門で受賞するなど映画賞を総なめに。女性監督の台頭のシンボルになった。
クレールド・ゥニ (1948~)インディーズ魂が生むラディカルさ 進化し続けるフランスの気鋭
ジャック・リヴェット、ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダースなど錚々たる名監督の助監督を経て、88年に『ショコラ』で長編監督デビュー。『ネネットとボニ』('96年)ではロカルノ映画祭で最高賞・金豹賞を受賞し注目を浴びた。インディーズ魂を感じさせるラディカルな作風は今日も健在でロバート・パティンソン主演の『ハイ・ライフ』(2018年)は自身初のSFで新境地を開拓。
キャスリン・ビグロー (1951~)女性として監督賞を初受賞! アカデミー賞の歴史を塗り替えた
現代アーティストとして活動後、映画界へ。当時の夫ジェームズ・キャメロンが製作総指揮を務めるアクション映画『ハートブルー』('91年)で注目され、以降も潜水艦をテーマにした『K-19』('07年)などハードなテーマの作品を好む。イラク戦争の爆弾処理班の現実を描いた『ハート・ロッカー』('08年)でアカデミー賞6部門を受賞。女性として史上初のアカデミー賞監督賞受賞者となる。
ナンシー・マイヤーズ (1949~)男女の機微を軽妙に描くロマコメのヒットメーカー
アカデミー賞脚本賞にノミネートされた『プライベート、ベンジャミン』('80年)など脚本家として活躍したのち監督デビュー。'98年に監督デビューを果たし、メル・ギブソン主演の『ハート・オブ・ウーマン』('00年)がロマンティック・コメディとしては異例の大ヒット。ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン主演の大人の『恋愛適齢期』('03年)も成功を収めた。
ノーラ・エフロン (1941~2012)3度のオスカー候補となった元祖ロマコメの女王
メグ・ライアン主演作『ユー・ガット・メール』('98年)などのコメディの名手として知られるが、自身の離婚体験を反映した、メリル・ストリープ主演の『心みだれて』('86年)など脚本家として頭角を現わした。『めぐり逢えたら』('93年)で3度のアカデミー賞脚本賞にノミネートされた。女性ライター兼監督の草分け的存在。
ソフィア・コッポラ (1971~)女性ならではの視点を武器にアカデミー賞、カンヌを制覇
女優、ファッションデザイナーなどを経て、'99年に『ヴァージン・スーサイズ』で脚本・監督デビュー、ガールズムービーの旗手となる。自身の離婚体験を反映された『ロスト・イン・トランスレーション』('03年)でアカデミー賞脚本賞を受賞し、『The Beguiled/ビガイルド』('18年)ではカンヌ映画祭で監督賞を受賞。女性として監督賞の受賞はカンヌの歴史の中で2人目。
河瀨直美 (1969~)カンヌに見いだされた日本を代表する女性監督
ドキュメンタリー製作を経て、『萌の朱雀』で監督デビュー。同作はカンヌ映画祭「監督週間」で上映されカメラドール(新人監督賞)を受賞。'07年『殯の森』でカンヌ映画祭グランプリを受賞するなど、日本を代表する女性監督のひとり。2020年には東京オリンピック公式映画も手掛けることが発表されている。
グレタ・ガーウィグ (1983~)女優から転身、いま最も旬な新世代監督
『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』('10年)や現在のパートナー、ノア・バームバック監督の『フランシス・ハ』('12年)で女優として脚光を浴びた。『レディ・バード』('17年)で監督デビューするや否やアカデミー賞監督賞・脚本賞にノミネートされ、女性として史上5人目の監督候補に。ジョディ・フォスターらとともに、女優から監督に進出して最も成功したひとり。
パティ・ジェンキンス (1971~)アメコミ映画史上初の女性監督として注目
アメリカン・フィルム・インスティチュートで演出を学び、実在の女性殺人鬼を描いた『モンスター』で監督デビュー。主演のシャーリーズ・セロンがアカデミー賞主演女優賞を受賞し、注目を浴びた。ガル・ガドット主演の『ワンダーウーマン』('17年)はアメコミ映画における初の女性監督であると同時に、オープニング興行収入で首位を獲得し、女性監督として最高記録を樹立するなど歴史を作った。
ナディーン・ラバキー (1974~)レバノン映画として初のアカデミー賞候補に
レバノン出身。監督・主演した『キャラメル』('07年)が高い評価を受け、「最もパワフルなアラブ人100人」のトップ5に選出。中東の貧困の現実を描いた『存在のない子供たち』('18年)はカンヌ映画祭で審査員賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にもレバノン映画として初めてノミネート。中東の社会問題にフォーカスした真摯な作風で、今もっともパワフルな女性監督として注目される。
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