2021年の韓国ドラマ最大ヒット！『イカゲーム』主要キャストのおすすめ出演作５

アメリカのハロウィンでジャージコスプレが禁止になったとか、北朝鮮が海賊版つぶしに躍起になっているとか、ディカプリオがイカゲームの大ファンだとか、なんやようわからんほど世界的に爆発的ブームになっている『イカゲーム』。その昔、イカはタコより下に見られがちだったそういう魚介類の勢力図さえも、書き換えそうな『イカゲーム』。もはやありとあらゆるサイトで記事が作られちゃっている『イカゲーム』。そんな逆風を乗り越えて、今回は『イカゲーム』の出演者たちの原稿を書いております。

あのドラマの何が素晴らしいって、主演のイ・ジョンジェとパク・ヘスのぶつかり合いと、そこに絡んでくるわき役たちの曲者ぶり。

韓国ドラマのわき役たちはどのドラマだって素晴らしいんですが、今回のドラマは誰もかれもが全然いい人じゃないし、「勝負に勝たなければ自分が死ぬしかない、金が欲しけりゃ蹴落とすしかない」という世界は、はっきりいってこれっぽっちも美しくない。

何しろ主人公のイ・ジョンジェでさえ、「1番」のおじいちゃんのボケを利用して、自分が生き延びようとするわけですが、ドラマがすごいのはそれを決して否定しないところ！人間はたとえ善人だって、時に醜く情けなくズルくなる、でもだから悪人ってわけじゃない。こういう大変な時代に、そういう人間ドラマが刺さらないはずがありません！

ということで、いろいろ理屈こねながら、今回は『イカゲーム』の出演者たちの出演作をフィーチャー。『イカ』とはまったく違う役どころ、いわば「タコ」な役を中心に紹介してみました！人間って決して一面的には測れないもの……なーんちゃって、役者さんたちがすごいって話だけですけども！

ジョンジェ演じるのは、巨大犯罪組織に潜入して早８年の刑事。警察の上司チェ・ミンシク（映画『オールドボーイ』）とは「現在の親分が死ぬまで」という取り決めで潜入したのに、いざそうなってみると約束はあっさり反故にされた上、組織を意のままにあやつるために「お前がトップに」と無茶振りされるハメに。

一方、後継者争いでNO.3のパク・ソンウン（『空から降る一億の星』）と対立するNo.2のファン・ジョンミン（『アクシデント・カップル』）は、組織内に警察の内通者がいることをかぎつけ……。クソみたいな上司ミンシクが無制限に強いてくる理不尽と、同じ中華系の出自で結ばれる兄貴分ジョンミンの信頼の板挟みで苦悩するジョンジェ、内通者だとばれそうになって脂汗吹き出しながら平静を保つジョンジェ、その一糸乱れぬオールバック＆ビシーッと決めた細身のスーツ姿は、『イカ』のニヤけた456番と同一人物とは思えない大人の色気がダダ漏れ！

作品は香港映画『インファナル・アフェア』とハリウッド映画『フェイク』の風味を漂わせながら、終わってみれば堂々たる韓国ノワールの傑作に仕上がってるすごい作品！

ちなみにこの年末に公開される最新作『ただ悪より救いたまえ』では、その兄貴分ファン・ジョンミンと壮絶な戦い繰り広げるターミネーターみたいな悪役を演じてますんで、そちらもクレイジーなクリスマスプレゼントとしてお楽しみください！

◎『新しき世界』2013年公開

ソウル大経営学部を主席卒業、一見穏やかなインテリ風なのに、その実先物取引で60億ウォンも負債を抱えてて、ゲームが進むにつれてどんどん腹黒さを露呈する218番。「型抜き」でイ・ジョンジェ陥れようとした時から臭かったけども、「ビー玉遊び」でアリに負けそうになった時に「ラーメンおごったし交通費もあげたじゃないか」とか言い出し、挙句にスーパー汚い手段で陥れるとか、そのスモール・アスホールぶりは笑っちゃうほど！

私にとってのファースト・パク・ヘスは『六龍が飛ぶ』ですが、最高に好きなのはやっぱり初主演の大ヒット作『刑務所のルールブック』。パク・ヘスは大リーグ移籍が決まった野球のスター選手で、渡米目前にある事件を起こし刑務所に収監されちゃうわけですが、この人の何が面白いって野球以外は何もしらない究極のボケキャラであること。『イカ』の218番見てると想像つきませんが、善良で純真ですぐ騙され、状況把握も１テンポ遅いので常にしゃべるタイミングは逃しがち。ボディは筋肉もりもりなのに、「飛行機乗る時は靴脱ぐんだよ」みたいなことを言われてまんまと靴を脱ぎ、はっ！と気づいて「……」となる、そのトボけた感じがめちゃめちゃキュート。

刑務所なんでそれなりに悪い人もいて、お金持ちのヘスにたかってきたり、意味もなく突っかかってきたりするわけですが、そういう人たちを決して相手にせず、上手に排除していくのもヘスの人間力。加えて「そんなことやってたらキリがない」と言われながらも、心を通わせた相手は決して見捨てない。ドラマ冒頭、拘置所で彼を面倒見てくれた「ポプジャ」ことキム・ヨンチョル（『ヴィンチェンツォ』）の母親の下りなんて、最終回の思わず「あっ！」と声上げる展開も含めて「よ、よかった…」と胸がいっぱいに。『イカ』のイ・ユミだって、『刑務所』のパク・ヘスにどこかで会えていたら、絶対にああはならなかったはず！ぜひ『イカ』とは正反対のパク・ヘスに笑わされ、泣かされてください！

◎『刑務所のルールブック』Netflix他にて配信中。

『イカ』の中で唯一、ゲーム参加者以外のメインキャストであるウィ・ハジュンは、変なおっさんに「仮面をつけておくのは惜しいな…」てな具合にキモくせまられてた仮面率高めの爬虫類系イケメン。

演じるウィ・ハジュンは、『よくおごってくれるきれいなお姉さん』の弟役で知られるようになり、最近は映画『殺人鬼から逃げる夜』でサイコパスな連続殺人鬼を『イカ』的な不気味さで演じている若手スターなんですが、私がお勧めしたいのは日本のドラマのリメイク作品『最高の離婚～Sweet Love～』！ぜんぜんSweet Loveじゃないけども！

物語は書類上で離婚しながらルールを決めて同居しつづけている元夫婦、チャ・テヒョン（『プロデューサー』）とペ・ドゥナ（『秘密の森』）を描いた作品で、ハジュン演じるのはペ・ドゥナに恋する年下のミュージシャン。常にふわーんとした和みの笑顔をうかべながら「あなたを泣かせた男を、僕を利用して忘れればいい」とか言っちゃって、イカゲームのハードな表情とはまったく違う、なんなのよかわいいじゃないのさ！！な役どころ。

ミュージシャンの役だけにギター片手に歌う場面も多数、甘い歌声素晴らしいんですが、「シホ（てか私と同じ名前じゃないか！）は、歌だけ歌ってればいいのに（つまり話すとなんか変）」とか言われちゃったりする、でも年上からみるとそのちと抜けたところがかわいいんですよ！！

『イカゲーム』では、脱北者チョン・ホヨンにナンパされ同じグループになり、「ビー玉遊び」で観客を号泣させたイ・ユミ。こちらでは壮絶な過去ゆえに、すべての感覚が冷え切った不良少女を演じていたわけですが、彼女が一躍注目を集めたのが、タイムスリップサスペンス『リセット 運命をさかのぼる１年』

逮捕した犯罪者に逆恨みされ、出所後の「お礼参り」で相棒である先輩刑事を殺害された刑事イ・ジュニョク（『秘密の森』）。ひき逃げの交通事故で半身不随になった人気ウェブ漫画家のナム・ジヒョン（『百日の郎君様』）。失意の日々の中、謎の精神科医キム・ジス（『花郎 ファラン』）から「現在の記憶を持ったまま、１年前に戻ることができる」と聞かされた二人は、彼らのほかにも集められた８人とともにその計画に参加。ジュニョクは先輩の命を救い、ジヒョンは事故にあわず、まんまと人生をリセット。ところが新たな人生を生き始めたのもつかの間、一緒にリセットした仲間＝「リセッター」たちが一人、また一人と謎の死を遂げ……。

ええっとタイムスリップものってのは「上手い！」と言わせるのがめっちゃ難しいジャンルだと思うのは、なんだかあっちゃこっちゃして何がなんやらと思っちゃうからなんですが、まあそんな感じのこの作品で最大の拾い物が、まさにイ・ユミ！彼女が演じるのはリセッターの一人で、独特な雰囲気を持つ「茶髪の可愛い子ちゃん」みたいな感じで出てくるわけですが、中盤は激しく事件に巻き込まれ、ほかの登場人物そっちのけで物語をぐいぐい引っ張ってゆく役どころ。ネタバレなんで詳しくは言えませんが、ジヒョンに「オンニ～」と子猫的に甘える裏で、あんなことやこんなことをやっており、「そういえばこの人なんでリセットしたかったのかな～」って話から明らかになる強烈キャラやら秘密やら、さらにリセッターの中で最もとんでもない目にもあったりもして、波乱万丈この上なし！

『イカゲーム』のキャラが「悲しい過去を持つ冷めきった不良」だとすれば、こっちは「勘違い系かまってちゃん」という感じのまったく異なるキャラで、作品そのものっていうよりもイ・ユミという面白い女優を発見する感じで楽しんでいただけたらと思います！

◎『リセット～運命をさかのぼる１年』U-NEXTにて配信中。