嘘か実か、あのスターたちが実は誰かに殺されていたかもしれない。今でも暗殺説が囁かれる謎めいたセレブの死を振り返る。
※2023年12月3日UPDATE
グレース・ケリー
1982年に次女ステファニーと一緒にバカンスから戻る途中に、自ら運転すること車で事故を起こし、52歳で他界したモナコ公国の王妃グレース。当時は運転嫌いな王妃ではなく、無免許の次女が運転したために事故を起こした説が濃厚(ステファニーはこの説を否定)だった。でも1994年に起きた太陽寺院(Ordre du Temple Solaire)の集団死をテーマにしたドキュメンタリー映画『Happy-Culteur』(‘12)撮影中に王妃暗殺説が浮上!
グレース・ケリー(Grace Kelly)
フランスでこの映画が公開された後、寺院の関係者と名乗る男性がプロデューサーに「君たちは何も掘り起こしていない」と叱責。王妃が実は寺院の高位僧となったものの、寺院の影の支配者ジョセフ・ディ・マンブロが要求する高額な寄付金を拒否。そのためにマンブロと関係のあったマフィアに暗殺指令が出され、王妃が乗るローバーのブレーキに細工がなされ、事故死を誘発したというもの。モナコ王国は「バカバカしい」とこの説を一蹴!
グレース・ケリー(Grace Kelly)
ダイアナ元妃
1997年にパリで起きた交通事故によって死亡し、公式には「運転手の過失による事故死」とされているイギリス国民のプリンセス。でも事故直後に噴出したのが暗殺説。当時、ダイアナ妃には恋人ドディ・アル・ファイドの子供を妊娠しているという噂も流れていて、将来的に国王となるウィリアム王子の異父弟がイスラム教徒となることに懸念を抱いたフィリップ殿下がMI6に命じて、暗殺させたとドディの父親が主張したのが始まり。
ダイアナ元妃(Diana, Princess of Wales)
機密漏洩で有罪となった元MI6諜報員リチャード・トムリンソンがフランス警察に事故死した運転手アンリ・ポールとMI6の関わりを暴露したり、妃が乗った車がホテルを出発してトンネルに差しかかるまでのCCTV(監視カメラ)映像が消滅したことも暗殺説を後押ししているけれど、真相は?
ダイアナ元妃(Diana, Princess of Wales)
XXXテンタシオン
2018年にフロリダの自動車販売会社を出たところで、二人組の男に銃撃され、わずか20歳でその生涯を閉じたラッパーのXXXテンタシオン。直後からさまざまな噂が流れていて、そのひとつがラッパーのソルジャー・キッド&ソルジャー・ジョージョーが銃撃の裏にいたという説。情報サイト「The Blast」がアップした犯行現場の状況と目撃者証言が二人の関与を裏付けるとともに、彼らの関係性があまり友好的でなかったことがその理由。またファンの間ではXXXテンタシオンの銃撃事件そのものがフェイクであり、死を偽装した説も浮上。その前年に新曲プロモーションに一環として、インスタグラムに息絶えたように見える自身の写真をアップしていたためで、狼少年と思われた? 昨年にはXXXテンタシオンがネットでトレンド入りしているし、死後までもお騒がせ!?
XXXテンタシオン(XXXTentacion)
カート・コバーン
グランジ・ロック全盛だった1994年、シアトルの自宅でショットガン自殺したカート・コバーン。自筆の遺書まであったにもかかわらず、弁護士ローズマリー・キャロルや義父(コートニー・ラブの父親)など暗殺説を唱える人が後を立たない。なかでも広く信じられているのが行方不明になったカートを探すためにラブが雇った探偵トム・グラントによる「ラブが暗殺した説」。これはカートが離婚を決意し、遺書から妻の名前を消したことを知ったラブが何者かを雇い、ヘロインを過剰摂取させ、射殺したというもの。グラントはラブの目的はカートが蓄えた巨万の富だったと主張するが、そもそもカート自殺の調査を依頼したのが、ラブ本人。当時、バンド「ホール」人気が高まっていて、夫の死後も予定したツアーを順調にこなしたラブには暗殺犯説が浮上。そのために、身の潔白を証明しようとしていたけれど逆効果となった模様。
写真左から:フランシス・ビーン・コバーン、コートニー・ラブ、カート・コバーン(Frances Bean Cobain, Courtney Love, Kurt Cobain)
ボブ・マーリー
レゲエ音楽の先駆者であり、1981年に脳腫瘍で死亡したはずのボブ・マーリー。ところが、9年前にいきなり暗殺説が浮上した! 大麻愛好家に絶大な人気を誇る雑誌『High Times』によると、暗殺したのは1976年のマーリー銃撃事件を指揮したものの、失敗に終わったCIA。当時、マイケル・マンリー首相の下で経済的に立ち直っていたジャマイカの政権転覆を狙っていたCIAにとって、民衆にラブ&ピースを訴えるマーリーは邪魔な存在だったもよう。
ボブ・マーリー(Bob Marley)
銃撃事件以降はラスタたちによって厳重に警戒されていたマーリー宅にドキュメンタリー番組製作者を装って入り込んだ一団にCIA長官ウィリアム・コービーの息子カールがいて、マーリーに贈り物としてブーツを贈呈。このブーツに癌を誘発する薬品が仕込まれていて、足の親指に悪性メラノーマを発症したのを皮切りに、腫瘍が全身に転移。元CIA員ビル・オクスリーが1981年に死の床で自白したこの説にラッパーのT.I.とバスタ・ライムスも賛同しているけれど、果たして?
ボブ・マーリー(Bob Marley)
マリリン・モンロー
セックス・シンボルとしてハリウッドの頂点に上り詰めたものの、36歳の時に自宅ベッドで遺体で発見されたマリリン・モンロー。検死の結果、自殺と判断されたけれど、その死には諸説あり!? まずは愛人関係にあったJ・F・ケネディ大統領が義弟ピーター・ローフォード(マフィアとも関わりのあるシナトラ一家=ラット・パックの幹部俳優)やモンローの精神分析医ラルフ・グリーソン、家政婦らと手を組み、自殺においやったというもの。
マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)
次は大統領の弟で司法長官だったロバート・ケネディが自ら手を下し、CIAに自殺を偽装させたというもの。悪名高き盗聴男バーナード・スピンデルが、二人が喧嘩をした後に銃声が響く音源をマフィアのサミ・ジアンカーナに売ったという噂もあるのだ。そのマフィアのジアンカーナにもモンロー暗殺の噂が。売れない時代に手先だった(有力者を恐喝するためにハニートラップをしかける係)モンローが反旗を翻そうとしてジアンカーナを怒らせたせいという説も。他にも諸説あり、まさにハリウッドのレガシーだ。
マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)
ジェフリー・エプスタイン
未成年の少女を世界中の富豪や王族、政財界の実力者たちに斡旋した容疑で起訴され、裁判開始まで勾留中だったニューヨークのメトロポリタン矯正センターで死亡しているのが発見されたエプスタイン被告。当局の公式見解では「布を使っての首吊り自殺」となっていたけれど、矯正センター内の監視カメラがなぜか故障していたことも明らかになり、すぐに暗殺説が浮上。中でも有力だったのが、MI6による暗殺説だ。というのも、エプスタイン被告とパートナーのギレーヌ・マックスウェル(被告の死後に起こされた裁判で有罪)の犠牲になったと名乗り出た元少女の一人がアンドリュー王子のお相手をしたと告発していたため、王子の母親であるエリザベス女王が息子の愚行が暴露されないように手を打った可能性が高いと思われたのだ。
写真左から:ジェフリー・エプスタイン、ギレーヌ・マックスウェル(Jeffrey Epstein,Ghislaine Maxwell)
また名前こそ公表されていないものの、被告が提供していた性的サービスを受けた政財界の実力者が裏から手を回した可能性も捨て切れない。真偽は不明だが、自殺説に納得しなかった被告の弟マーク・エプスタイン氏によると、私的に依頼した遺体解剖では、自殺とは考えられない骨折が多数発見されたという。また服役中のマックスウェルもイギリスのテレビ局のインタビューで「ショックだったし、どうしてそんなことになったのか疑問に思った」と何者かによる犯行を示唆する発言をしている
ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)
アン・ヘッシュ
2022年8月に運転していた車で民家に追突し、燃えさかる車内に40分以上も閉じ込められ、全身火傷で脳死状態となって死亡した俳優アン・ヘッシュにも直後から暗殺説が浮上した。噂の元となったのは、Twitter(現X)にアップされた"激しい交通事故で亡くなった女優アン・ヘッシュは、ジェフリー・エプスタインの組織について描いた『Girl in Room 13』というタイトルのTV映画を製作中だった"という投稿(現在は削除)。Twitter以外のSNSでも拡散され、アンの死は権力者たちの犯罪を隠蔽するために殺害されたと主張する輩が多数出現した。ちなみに『Girl in Room 13』は、薬物売人の元恋人によってホテルの一室に監禁され、性売買組織に売られそうになった娘を救おうとする母親の物語で、エプスタインとは無関係。しかしアンがアルコールや薬物の影響下になかったという司法解剖の結果もあって、暗殺説を主張する人は車が遠隔操作されたと主張。アンの命を奪った交通事故は、エプスタインの顧客リストのなかでもトップクラスの秘密とされる小児性愛者の権力者を守るための偽装工作だったという説に説得力はあまりない。
アン・ヘッシュ(Anne Heche)
クーリオ
2022年9月に友人宅のトイレで死亡しているのが発見されたラッパーのクーリオ。検死解剖の結果、フェンタニルとコカイン、メタンフェタミンを誤って過剰摂取したのが死因と特定されている。しかし陰謀説を唱える人によると、クーリオの死は暗殺で、彼自身も死を予言していたとされている。最後となったインタビューでクーリオは、音楽のストリーミング・サービスについて不満があることや企業がアフリカ系アメリカ人のアーティストから金を巻き上げていると考えていることを公に語っていた。さらに彼は「エンターテインメント業界で非良心的な行為をしていると感じている人々を "暴露 "するつもり」であり、そのために「死ぬことになるかもしれない」という衝撃的な発言をしていた。もしかするとクーリオはエンタメ業界の上層部で犯罪が行われている証拠を掴んでいた? しかし暴露を示唆した1ヶ月後に死体となって発見されているので、真相は藪の中。公式の死因は誤ってのODと結論づけられているが、暗殺説はくすぶり続けそう。
クーリオ(Coolio)
アリーヤ
2001年に飛行機の墜落事故で亡くなったアリーヤ。調査でプライベート・ジェットの整備不良と過積載、そしてパイロットの薬物&アルコール使用が判明しており、アリーヤが悲劇的な事故の犠牲となったのは明らかだったが、一石を投じたのがメアリー・J・ブライジ。2005年に受けた「ガーディアン」紙のインタビューで、暗殺を匂わせる発言をしたのだ?!ブライジはインタビューで、アリーヤの死を受けて薬物とアルコールを断つ決意をしたと告白。「彼女は親しい友人ではなかった。ただ、彼女の死を目の当たりにして、"次は自分の番だ "と思ったの。いつ、どうやってかはわからないけど、次は私の番。どんな不慮の事故に巻き込まれるのか、どんなヘロインの過剰摂取で整理されるのかわからないけど、結局のところ、次は私が死ぬんだとわかった。ただ、怖いと思った」と続けている。どのような意図でこの発言をしたのかはブライジにしかわからないが、アリーヤが不慮の事故を遂げたのは何者かが仕組んだからと告発しているのに等しい。もちろん彼女自身の推測かもしれないが、音楽業界の裏側には一般人には想像もできない闇が広がっているのかもと思わせる発言だ。
アリーヤ(Aaliyah)
マイケル・ジャクソン
2009年に不眠治療のための麻酔薬プロポフォールの急性中毒で急死したマイケル・ジャクソン。マイケルの元主治医コンラッド・マレーが逮捕され、過失致死罪で懲役4年の判決を受けた一方、さまざまな陰謀論や暗殺説がSNS上を飛び交う結果となった。暗殺説の一つはマイケルが書いていた日記の記述を元にしたもので、彼の音楽の版権を欲しがっていた何者かに殺されたというもの。他界する前にマイケルは日記に“I’m afraid someone is trying to kill me...Evil people everywhere. They want destroy me and take my publishing company. The System wants to kill me for my catalogue...I’m not selling it.(怖いよ、誰かが僕を殺そうとしている……そこらじゅうに邪悪な人間が潜んでいる。僕を破滅させて、会社を奪う気だ。システムは版権を奪うために僕を殺したがっている……、でも僕は売らない)”と書いていて、彼の音楽の版権をめぐって何者かとの交渉があった可能性を示唆している。
マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)
交渉が決裂した結果、マイケルが殺害されたとしたら? ちなみに2020年にカニエ・ウエストがマイケルとトミー・モトーラ(元ソニー・ミュージックCEO)の不仲をTwitter(現X)の投稿で蒸し返すと共に「マイケルが彼らに殺された」と断言している。もちろん彼らにトミーが含まれているとは言い切ってないが、何かを仄めかしているのは間違いない。陰謀論好きなイェとはいえ、影響力があるセレブの投稿なので信じる人は案外多い?
マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)
ブリタニー・マーフィ
209年に32歳で急死したブリタニー・マーフィの死は謎に包まれている。公式には肺炎と貧血が原因とされているが、いまだに殺害説を囁く人もいるのだ。その陰謀論を後押しするわけではないが、2021年に配信されたドキュメンタリー・シリーズ『What Happened, Britney Murphy?』は、彼女の死に疑問を投げかける結果となっている。このドキュメンタリーでは今まで知られていなかったブリタニーと夫サイモン・モンジャックの関係や、サイモンの犯罪歴などが次々と明かされていく。
ブリタニー・マーフィ(Brittany Murphy)
結婚前に国外追放の可能性があったことやブリタニーに語ったことのほとんどが嘘だったことも明らかになっていく。シンシア・ヒル監督の語り口は、もしかしたら詐欺師だったサイモンがブリタニーの資産を奪うために彼女を殺害したのではないかと思わせるほど。例えばブリタニーの死因を探るための検死解剖をサイモンが拒否したこと(同席していた母親シャロンの前で娘を切り刻めとはいえなかったとCNN出演時に釈明)や、愛妻の死後に義母と深い仲になっていたことからも怪しさがつきまとう。そして、そのサイモンもブリタニーと同じ場所で同じように死亡していて、その後に彼が愛妻の死後に何らかの法的問題を決着させるために大金を海外送金していたことや300万ドル(約4億4100万円)もの大金を存在しない不動産に投資していたことが発覚。ブリタニーをサイモンが殺害し、その証拠を掴んだブリタニーを愛する人がサイモンを同じ方法で殺害した? そんな映画みたいな推論をしてしまうほど、ミステリアスなセレブの死なのだ。
ブリタニー・マーフィ(Brittany Murphy)
利用されるセレブの死、情報の鵜呑みは危険かも?
誰からも愛されたセレブが急死し、陰謀論や暗殺説が飛び交うのは昔からあったこと。熱狂的なファンの想いが暴走した結果とも言えるのだが、ネットの進化によって、加速した傾向があるようだ。世界的パンデミックが始まるや、アンチ・ワクチン派がセレブの死をワクチン接種と関連づける陰謀論をSNSで拡散するのも目立っている。また、さまざまな陰謀論を提唱するQアノンは、エリザベス2世が崩御した際、「女王はすでに亡くなっており、ファームが今になって公表することを決めた」と主張。さらに「SNSの投稿からトランプ元大統領が女王の死を事前に知っていたことは明白」とまことしやかに拡散していた。まさに真偽不明! 大義のためにセレブの死を利用する陰謀論者が急増する昨今、情報は精査したいもの。