白河さんの著書名にもちなむが、ハラスメントには境界線がある。
「セクハラの捉え方が男女で違うように、ハラスメントの境界線は個人で異なり、時代や環境で動くものなんです。なので、ワークショップなどで『これはハラスメントか?』と個々のケースを問い、感じ方の違いを可視化するのも役立つと思います。そして意識をアップデートする上で、若い人の意見も取り入れる。企業のハラスメント指針は各企業で決めるべきでしょう」
女性に対する「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」も、ハラスメントの誘引だ。例えば「子育てがあるから出張は無理」と決めつける子育て女性への過剰な配慮も、無意識のバイアスがそのベースになっていたり。バイアスの存在を自覚し、 気をつけるだけでも事態を改善することはできると話す。
では、理不尽なハラスメントを受ける側になったときはどうすれば?
「その場で『それはハラスメントですね』と真顔で言うのが一番いいです。ひどくなる前に。ただ言い返す前に、『身体的な危険はないか』『その無礼なふるまいは意図的か』『その無礼な態度は初めてか』を確認してください。これはクリスティーン・ポラスというビジネススクールの先生が考えた項目です。場合によっては、自分でやり返すより通報などの処置がいいこともあります。 その際に役立つのが会話の録音。身を守るための録音は司法的に問題ありませんから、ポケットにデバイスを忍ばせてください」
ハラスメントは今や、企業の生産性を落とすリスクだと考えられている。第三者からの通報の奨励など、 告発のハードルを下げる工夫もある。より良い未来のために、私たち自身にできることは何だろうか。
「例えば同期の男性が、セクハラまがいの発言をしたら指摘してあげるのが一番。彼らは上司などへの男ウケを意識してそんな発言をしてしまう。そのまま出世したら、将来セクハラで身を滅ぼしかねません。あとは、女性の管理職を増やす。ハラスメントの究極の解決策はダイバーシティなんです。自分がならなくても、なりたい人を応援すればいい。ハラスメント対策の場に女性が増えれば、時代はまた進化するはずです」