「パントーン」社がファッションウィークに合わせて、ニューヨークとロンドンで毎年2月に発表する「ファッションカラートレンドレポート」。こちらは、それぞれ14色程度のトレンドカラーが選定されるのが通例。
今回は、このレポートを基に2020秋冬シーズンで要マークすべきカラーパレットを、カラーアナリストの松本英恵さんにプロ目線でインタビュー。
【目次】
1.2020秋冬コレクションの都市別カラートレンド
まずは、各コレクションの都市別で話題となった旬のカラーリングを、スタイリングやパターンを交えてナビゲート。ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリそれぞれの人気メゾンのお気に入りルックから色のヒントを手に入れて。
1.NYコレクション「ポリクローム(多色彩)」
「NYで最も目を引いたのは『マークジェイコブス』を筆頭にしたワンカラーコーデ。ルックのひとつひとつに多色感はないものの、コレクション全体としてはさまざまな色があり、目を楽しませてくれました」
「『トリーバーチ』や『ジェイソンウー』のワンカラーコーデは、タックやフリル、スワロフスキーやフェザーなどの装飾的な要素を取り入れ、クラシックかつロマンティックなルックに」
「『マイケルコース』のメタリックな輝きのカラーコンビネーションも、ベーシックカラーの新しい魅力を引き出しています。デジタルやバーチャルとともに刷新される“ニューノーマル”には、きらめく色素材がしっくりくるのかもしれません」
2.ロンドンコレクション「クリエイティブチェック」
ロンドンでは、新たなコンビネーションで伝統のチェック柄をアップデートする新生パターンが登場。「ロンドンに拠点を置く『アレキサンダーマックイーン』や『ロック』のチェック柄は非常にクリエイティブでした。ブラウン、グレー、ブルー、グリーン、レッドなどを基調とした伝統的な色柄でありながら、異なるチェック柄を組み合わせるなど、伝統にとらわれないクリエイティブな魅力にあふれています」
3.ミラノコレクション「フェミニンピンク」
「ミラノコレクションは、モダンウーマンを探求するルックが印象に残りました。『MSGM』はランウェイをネオンピンクに、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、パープル、シルバー、ゴールドなど、カラフルな色を散りばめたルックを展開。あらためて色の力に気づかされました」
「『フェンディ』はウエストをマークしたXラインのルックを展開。肌触りの良さそうな柔らかいピンクはカーヴィーなシルエットにマッチしています。ドリーミーなピンクにミリタリーオリーブを組み合わせるなど、ロマンティック一辺倒ではない、女性としての芯の強さが表現されていました」
4.パリコレクション「ニュートラルカラー」
「サステナビリティを高めるべく、フェイクファーといった素材が進化するなか、素材の変化によって色も異なった表情を見せるようになっています。『パントン』のカラートレンドにブラックが登場することはほぼないものの、ブラックはモードを象徴する色として、今コレクションにおいては特別な存在感を放っています。2020-2021秋冬のコレクションでは表情豊かなブラックを見ることができました」
「『バレンシアガ』のブラックは、ホラー映画やSFのような時代やジェンダーを超越した独創的なスタイルと響き合い、洗練されたルックとなってました」
「ストリートのトレンドを牽引してきた『オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™』も、クラシック回帰に見えるようなコレクションを発表しました。しかし、伝統的なハウンドトゥース柄のセットアップやコートは、よく見ると歪んでいます」
「'30年代風の優美な細長いシルエットのルックを提案した『ステラ マッカートニー』は、サステナブルな素材でニュートラルカラーのイメージをアップデートするようなコレクションを発表しました」
「『ミュウミュウ』はコンセプトに“グラマー”を掲げ、ともすると退屈になりがちなニュートラルカラーをチャーミングに着こなすルックを提案しました」
3.2020秋冬のトレンドカラーは?
各都市のトレンド傾向をつかんだところで、知りたいのはやはり実際のコーデに使えるカラーリング。今回は、「これだけは押さえておきたい!」という代表的な4カラーを一大選出。各色のランウェイルックで見るコーディネートTIPSもぜひ参考に。
#1 ブラウン
「落ちついた雰囲気を醸し出すクラシックなブラウンは、若々しいイメージとは対極。ともすると退屈なイメージになってしまいがちです。しかし今シーズンのブラウンはリッチでゴージャスでありながら、とても軽やかです」
#2 ローズ
「愛を象徴するローズは、恐怖や不安といったネガティブなエネルギーを溶かし、私たちを優しく包み込んでくれます。今シーズンのローズは、素材やシルエットのバリエーションが豊富。ラテックス素材やチェーンを取り入れ、ハードな味付けをしたルックが目を引きました」
#3 オリーブ
「ここ数シーズン、 繰り返しオリーブグリーンがトレンドカラーとして浮上してくるのは、デザイナーの受容性や直感力を刺激するからかもしれません。ニュートラルカラーの中では、色みが感じられる分、主張の強い色。『ハードな状況でも、必ず力強く成長できる』ことを気づかせてくれます 」
#4 レッド
「生命力あふれるレッドは、すべての愛の基盤となる色。コロナ禍で発表されたコレクションには、強さと情熱があり、レッドは私たちの中にも生きるたくましさがあることに気づかせてくれます。なかでも、ブラックやオフホワイトとのコントラストの効いたコーデが目を引きました」
【お話を伺ったのはこの方】
松本英恵 カラーコンサルタント。似合う色、売れる色を提案する、カラーとイメージのエキスパートとして活動している。2005年より、総合情報サイト「All About」カラーコーディネートガイド。著書に『人を動かす「色」の科学』などがある。
>>公式サイト『松本英恵のカラーコンサルティング』はこちらからチェック