スーパーモデルはどうやって生まれた？ 名物ディレクターが語るデビュー秘話
一世を風靡したスーパーモデルはどのようにして誕生したの？ スター誕生の影には、名物ディレクターの存在あり。 今なお輝き続けるスーパーモデルのデビュー秘話に迫る。
フランス版「エル」で40年に渡りキャスティングディレクターを務め、クラウディア・シファー、ナオミ・キャンベル、カーラ・ブルーニなどを見出したオディール・サロン。「スターがいない」というフォトグラファーのクレームに、「じゃあ彼女たちをスターにしよう！」と一念発起。この仕事を切り拓いたという名物ディレクターが、当時の舞台裏を明かしてくれた。
ナオミ・キャンベル（Naomi Campbell）
今なお輝く、ブラックビューティのパイオニア
「ナオミは、私にとって最も美しい黒人女性です。彼女はいつも気高く、光輝いていました。当時は白人以外のモデルでビューティページを作ることは少なく、黒人女性向けの化粧品の数も少なかったんです。けれど、彼女とはぜひ作りたいと思ってトライしました。記憶に残るいいページです。ただし、女優気質だから、怒らせちゃいけないの（笑）。それは確かよ！ でも今でもばったり会うと、カバーをせがんでくるの。可愛いわよね」
クラウディア・シファー（Claudia Schiffer）
チームと共に育った'80年代の「ＢＢ」
「彼女はブロンドの髪をのぞけば、ブリジット・バルドーには似ていなかった。でも私はエルにとっての次なるＢＢになると思ったの！ だれも信じていなかったけれど（笑）。フォトグラファーたちも最初は半信半疑。でも、彼女で撮ったギンガムチェックのファッションストーリーが大成功。『エルのスタイル』にマッチすると思った子をスタッフみんなで育てられるのも、エルの強みだったのです」
エル・マクファーソン（Elle Macpherson）
みなぎる生命力が周囲を照らす
「最初に会ったとき、まったくの無名でした。でも彼女を見逃すわけにはいかなかった！ 身体から溢れる生命エネルギーは、だれにも負けないものだった。ハンス・フューラーとの撮影で最初の8ページを作りました。彼女には華やかさ、人を感動させるパワーがありました。1982年タヒチでの撮影でジル・ベンシモンのもとに送りました。彼女は18歳でした。その後、彼女はジルと結婚したんです」
エヴァ・ハーツィゴヴァ（Eva Herzigová）
ただ見られる存在ではなく、読者を見つめる強さをもつ
「彼女がもっていたのは美貌だけではなく、変貌の才能です。マリリン・モンローの映画『帰らざる河』をテーマにしたストーリーが忘れられません。私がいつもモデルに言っていたのは『写真を見るのは読者ではなく、その逆だ』ということ。モデルたちが、レンズの向こうの読者を見なければいけないのです。だからこそ重要なのは本人の喜びと笑顔、生きるエネルギー。エヴァはそのすべてをもっていました」
ナタリア・ヴォディアノヴァ（Natalia Vodianova）
グリーンの瞳に秘めた、プロフェッショナルな意志
「ある朝、15歳のナタリア・ヴォディアノヴァがやって来ました。その美しさに感動しました！ あんな目は見たことがありません。なんてスター性があるのでしょう！ おもしろいのは、あの小さな身体のなかに真珠をもっていたこと。東欧の少女たちはとてもプロフェッショナル、学ぶのが早いんです。朝9時は初心者でも、夕方6時にはビジネスウーマンでしたよ」
レティシア・カスタ（Laetitia Casta）
エルから羽ばたき、J.P.ゴルチエのミューズに
「とあるクチュリエに、レティシアを紹介されたんです。初めて見たとき、フィルムノワールの名女優ヴェロニカ・レイクを思い出しました。その後、ジャン・ポール・ゴルチェに紹介したところ、彼のミューズになったんです。潜在的な才能を見いだしてきっかけを作るのが私の仕事で、『才能は共有する』というのが私のモットーなんです」
カーラ・ブルーニ（Carla Bruni）
神々しくてナチュラル。唯一無二の存在感
「カーラを見たとき、とても気品を感じました。すぐに『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘップバーン」が思い浮かびました。神々しくて、どこかへ飛んでいってしまいそう。彼女はそういう人。そして賢くて可愛いの！ ファッションウィークにブランドとコラボのショーを開催したことがあったのですが、朝、35人集まった少女のうち1人だけがサンドイッチ作りを手伝ってくれました。それがカーラでした」
モニカ・ベルッチ（Monica Bellucci）
写真だけで採用した 未来のスター
「モニカのポートフォリオには4枚の写真しかなかった。でも、彼女の『顔』に何かを感じて、本人に会うことなく彼女を選んだんです。撮影当日、現場に到着して彼女の胸を見て心の中でこう思いました。『大失敗、彼女はこの服には合わないわ！』。幸いなことに撮影がオリビエーロ・トスカーニで、彼女もユーモアで応えてくれました。そしてトスカーニの提案で、体重計の上で裸でポーズをとる『Lose Weight Special』の表紙が生まれたんです」
※エル・ジャポン12月号より転載
