オリンピック史上初のトランスジェンダー選手となった、女子重量挙げのニュージーランド代表ローレル・ハバード。メダルには手が届かなかったものの、歴史的な快挙を成し遂げたことで話題を集めた。

「トランスジェンダー選手を批判する人はそもそも女性アスリートの不平等について気にもしていない」女子重量挙げ選手の訴えに共感の嵐
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ハバード選手のオリンピック出場については、世界中でさまざまな議論が巻き起こった。2013年まで男性として重量挙げの試合に出場していたハバード選手は、その後性別適合手術を受け、女子選手として復帰。国際オリンピック委員会(IOC)によるトランスジェンダーのアスリートに関する規定をクリアしていることから「ハバード選手のオリンピック出場は妥当だ」という声もあれば、「体格差があるからほかの選手が不利になる」という否定的な意見も集まった。

「トランスジェンダー選手が女子スポーツに参加することについて正直どう思う?」という質問に対して、口を開いたのが同じ女子重量挙げのローラ・マリエル選手。マリエル選手の答えに共感と、新たな議論が巻き起こっている。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

マリエル選手はTikTokに投稿した動画のなかでこう語っている。「この質問を受けたのは初めてではないので、お答えしたいと思います。私は重量挙げの女子選手で、試合ではヘビー級に出場しています。今週開催されたオリンピックでは、私のすぐ上の階級であるスーパーヘビー級にトランスジェンダー女性の選手が出場しています」「多くの人がこの質問を、“自分の偏見の言い訳”に使っていると思います。いまスポーツ界のトランスジェンダー選手に関心をもっている多くの人は、そもそも女性アスリートである私のことなど気にも留めていません。男性アスリートに比べて競技機会、給料、メディアでの放送時間などが圧倒的に少ないことを気にしてもいないのです。今日のスポーツ界にいまだに存在する“あからさまな女性差別”についてまったく知らないはずです」「女性アスリートとしての私の幸せを少しも気にしていなかった人たち、そしておそらく今まで私をいじめてきたような人たちが、トランスジェンダー選手が女子スポーツに参加することで女性アスリートとしての競技機会が少なくなってしまうことを心配しているのです」。そして 「もうこんな質問をするのはやめてください。なぜならみんな女性アスリートのことを本当に気にかけているわけではないから」という言葉で動画を締めくくった。

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この動画はSNSを中心に注目を集め、TikTokではすでに約67万回再生を記録。マリエル選手の訴えに対して「その通り!」「すごく腑に落ちた」と共感する声が多数集まったが、なかには「マリエル選手は質問を避け、本当の自分の気持ちを答えていない」という反対意見も。 それに対して「マリエル選手が質問に答えいてないと批判する人たちへ:この質問をする人の多くは、トランスジェンダーに対する偏見を正したいのではなく、自分以外の人も偏見をもっているということを確認したいだけなのだと思います。つまり本当に答えを求めているわけではないし、そういう人たちの好奇心を満たすような答えも存在しません。ただの話題作りです」とマリエル選手を擁護する人たちが続出した。

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マリエル選手は続けて投稿した動画のなかで「トランスジェンダー女性がシス女性(性自認と生まれたときに割り当てられた性別が一致している人)と競争するのは『公平』か『不公平』か、どちらを選んでも、反トランスジェンダーの人たちはそれを逆手に取って、シス女性を傷つけるか、トランス女性を傷つけるかするでしょう」「私はトランスジェンダーの人々をサポートするフェミニストです」と語っている。

トランスジェンダー選手のスポーツ参加について、世界からの注目を一身に集めたローレル・ハバード選手は「年齢の影響を隠せなくなった」と現役引退の意向を発表。すべてのジェンダーのアスリートがスポーツに気持ちよく参加できるよう、ルールの刷新をはじめさまざまな話し合いが始まることが期待される。