心揺さぶる女たちの愛のドラマ! 最新作からドヌーヴの名作まで女性同士の愛を描いた映画14選
ケイト・ウィンスレット×シアーシャ・ローナンの『アンモナイトの目覚め』からカトリーヌ・ドヌーヴ主演の名作まで、女同士の愛を描いたおすすめ映画決定版。
映画『アデル、ブルーは熱い色』がカンヌ国際映画祭で最高賞を獲得して以来、『キャロル』や『燃ゆる女の肖像』など、スクリーンでは上質な“女同士のラブストーリー”が熱い視線を浴びている。かつてはカトリーヌ・ドヌーヴ、ここ数年ではケイト・ブランシェットやシアーシャ・ローナンなど、スター女優が出演した名作も多い。ジェンダーを超えた普遍的な魅力が溢れる女たちの愛のドラマを堪能できる、不朽の14作品をご紹介。
シアーシャXケイトが紡ぐ禁断の愛『アンモナイトの目覚め(2021年)』
英国のオスカー女優ケイト・ウィンスレットと『ストーリー・オブ・マイ・ライフ 私の若草物語』で颯爽とジョーを演じたシアーシャ・ローナンが共演する、激しく切ないラブストーリー。19世紀の英国の海辺の町で、古生物学者のメアリー(ケイト)は心を病んだ貴族の妻シャーロット(シアーシャ)と出会い、家に預かる。荒涼とした海岸でふたつの孤独な魂は次第に惹かれ合い、輝き始めるが……。監督は『ゴッズ・オウン・カントリー』が絶賛されたフランシス・リー。ふたりの実力派女優は男性権威社会で抑圧された女たちのほとばしるような愛を、わずかなセリフと眼差しで感動的に演じる。時代劇だが映画のラストに込められたメッセージは現代的だ。
『アンモナイトの目覚め』
4月9日より全国順次公開
LGBTQ時代のハッピーミュージカル!『ザ・プロム(2020年)』
メリル・ストリープとニコール・キッドマン。ハリウッドを代表する2大女優が『glee グリー』のライアン・マーフィとタッグを組んだ、LGBTQ時代のミュージカル。ニューヨークの元人気舞台俳優で、現在は落ち目の女優ディーディー(メリル)とバリー(ニコール)は、田舎町のカップルがレズビアンというだけでプロムに参加できないことを知り、仲間と助けに行くことに。豪華スターによる華麗な歌とダンス、「unruly song」を歌うエマのまっすぐで透明な歌声、「隣人を愛せ」という力強いメッセージにパワーをもらえる!
ワイルドな二人のスリリングな脱出劇!『バウンド(1997年)』
今年、『マトリックス4』が公開されるウォシャウスキー姉妹の監督デビュー作。凄腕の女泥棒コーキー(ジーナ・ガーション)は、恋におちたセクシーなヴァイオレット(ジェニファー・ティリー)に誘われ、マフィアの大金を奪う計画を企てるが……。「盗みはセックスと同じ。初対面で寝ることはできるけど、信頼できる相手じゃなきゃ盗みはできない」などニヤリとするセリフが満載で、男の支配から逃げ出そうとする二人の知能ゲームはラストまで一気見!デヴィッド・リンチは本作を見て『マルホランド・ドライブ』のアイディアを得たそう。
NYの甘美なメロドラマにため息『キャロル(2015年)』
1950年、クリスマスのニューヨーク。デパートで働くテレーズ(ルーニー・マーラ)は、エレガントな女性客のキャロル(ケイト・ブランシェット)に心を奪われる。フォトグラファー志望のテレーズを、離婚訴訟中だったキャロルは旅行に誘い、二人は許されざる恋に落ちて……。『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズがメガホンをとった甘美なメロドラマ。ケイトとルーニーの魅惑的な演技や当時を完璧に再現したセット、サンディ・パウエルのファッショナブルな衣装にうっとり。第88回アカデミー賞では6部門の候補になり、女同士の恋愛映画の新たな歴史を築いた。
美貌を封印したシャーリーズの熱演に唸る!『モンスター(2003年)』
『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督が当時27歳だったシャーリーズ・セロンとタッグを組み、実在した女性連続殺人犯を描いた衝撃作。貧困家庭で虐待を受けて成長し、娼婦になったアイリーン(シャーリーズ)は、レズビアンのセルビー(クリスティーナ・リッチ)と出会い、生まれて初めてやすらぎに似た愛情を抱く。だが、二人の生活費を稼ぐためにした売春で殺人を犯してしまう。役作りで13キロの増量と特殊メイクをしたシャーリーズは“モンスター”になってしまった女性の心の叫びを圧巻の演技で体現。見事、第76回アカデミー賞主演女優賞に輝いた。
ユマ・サーマンの退廃美に酔う『ヘンリー・アンド・ジューン/私が愛した男と女(1990年)』
作家のアナイス・ニンが自身の恋愛を綴った日記を『存在の耐えられない軽さ』のフィリップ・カウフマン監督が映画化。1931年、銀行家の夫とパリを訪れたアナイス(マリア・デ・メロディス)は、まだ無名だった作家のヘンリー・ミラーと恋に落ちる。奔放なアナイスは、ヘンリーの妻で、女優をしながら夫を養うために体を売るジューンにも心を奪われていく。バイセクシャルで妖艶な妻ジューンを演じたのは、若きユマ・サーマン。その退廃的なオーラは後のブレイクを予感させる。ちなみに主演のマリアとユマは、4年後の『パルプ・フィクション』で再共演を果たした。
貴族の令嬢と肖像画家の鮮烈な愛『燃ゆる女の肖像(2020年)』
カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝き、あのグザヴィエ・ドランも感嘆したという女同士の究極のラブストーリー。18世紀後半のフランスの孤島を舞台に、貴族の令嬢エロイーズ(アデル・エネル)と彼女の肖像を描くために雇われた画家マリアンヌ(ノエミ・メルラン)との鮮烈な愛が描かれる。自然光が美しい静謐な世界の中で、キャンバスをはさんで見つめ合い、愛し合うマリアンヌとエロイーズ。肖像画が完成するまでのわずか5日間が彼女たちには永遠だったとわかるラストの至高の演技が、いつまでも深い余韻を残す。
ヴァンパイア役のドヌーヴが女性を誘惑!『ハンガー(1983年)』
フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴがデヴィッド・ボウイと共演した耽美スリラー。不老不死のヴァンパイア、ミリアム(ドヌーヴ)は英国人のジョンと共に、ニューヨークの豪華なアパルトマンで暮らしていた。ある日、ジョンの衰えを知った彼女は、老化を研究している女医のサラ(スーザン・サランドン)を誘惑し、仲間にいれようとするが……。見どころは、サンローランのドレスを纏い、“永遠の美しさ”を体現するドヌーヴのクールなエレガンス。公開時、女性同士のベッドシーンは衝撃的だったが、サラ役のサランドンは「ドヌーヴとのベッドシーンを断る女優はいないわ」とコメントしたそう。
ベルリンが舞台の濃密な愛憎劇『ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年)』
プッサンの『ミダス王とバッカス』が壁一面に描かれたアパートで、ファッションデザイナーのペトラ(マーギット・カーステンゼン)は自分を崇拝する秘書のマルレーネと二人暮らし。ある日、若いモデルのカリン(ハンナ・シグラ)に夢中になって狂おしいほどの愛情を注ぐが、冷酷なカリーンは夫の元に戻ってしまう。全編ベルリンのアパートの一室で展開される、女たちのSM的な愛憎劇。ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのアートな映像美は、トム・フォードら一流デザイナーに大きな影響を与えた。
ヴェルサイユ宮殿の恋『マリー・アントワネットに別れを告げて(2012年)』
「一人の女性を好きになったことはある? その方の姿が見えないと胸が苦しくなるくらいに」ーー。フランス革命勃発直後のパリ。王妃マリー・アントワネット(ダイアン・クルーガー)は愛人のポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)を宮廷から逃がすため、読書係のシドニー(レア・セドゥ)におとりになれと命じる。王妃を愛するシドニーは激しいショックを受けるが……。実際のヴェルサイユ宮殿で撮影された華麗な美術、『美女と野獣』のレアなど、スター女優の豪華共演は見逃せない!
緑の館で愛し合う女たちの悲劇『中国の植物学者の娘たち(2005年)』
『小さな中国のお針子』のダイ・ジージェがエキゾティックな楽園で結ばれる女たちを幻想的な映像で紡いだラブストーリー。湖に浮かぶ孤島で、厳格な植物学者のチェンの元に孤児院で育った女子学生のミン(ミレーヌ・シャンパヌイ)が実習生として訪れる。孤独なミンは、チェンの娘アンと姉妹のような関係になり、緑豊かな自然の中、官能的な愛で結ばれるが……。同性愛がタブーだった時代に、自分たちの愛を貫く女たちを襲う残酷な運命が切ない。
オードリーが悪魔のような少女に追い詰められる!『噂の二人(1961年)』
少女たちの寄宿学校を経営するカレン(オードリー・ヘッブパーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は学生時代からの親友だ。ある日、問題児のメアリーが二人を同性愛の関係だと噂を流す。世間の激しい中傷を受けた二人は名誉棄損で訴えるが、悪魔のようなメアリーの裏工作で敗訴。絶望の中、マーサはカレンに本当は恋愛感情を抱いていたことに気付き…。現代のSNSの風評被害のように“噂”で人生が破壊される悲劇を、オードリーとシャーリーが迫真の演技でみせる。清楚なワンピやピーコートなど、リアルクローズを着こなすオードリーも魅力的だ。
初めての愛が人生を変える『アデル、ブルーは熱い色(2013年)』
教師をめざす高校生のアデル(アデル・エグザルコプロス)は、年上の男友達がつきあうが、満たされない気分を感じていた。そんなある日、青い髪のアーティスト志望のエマ(レア・セドゥ)と出会い、燃え上がるような恋に落ちて…。ヒロインのアデルが体験する恋の喜びや苦悩がドキュメンタリー映画のように生き生きとリアルに描かれ、観る者の心を鷲掴みにする。第66回カンヌ国際映画祭では史上初、パルム・ドール(最高賞)が主演のレアとアデルの2人に贈られた。
女性に恋したヒロインを襲う謎の出来事『テルマ(2018年)』
ノルウェイの田舎町で信仰の厚い両親に育てられたテルマ。なぜか幼少期の記憶のない彼女は、進学したオスロの大学でクラスメイトの女性に初恋をするが、それ以来、不可解な出来事に次々と襲われる。監督はラース・フォン・トリアー(『奇跡の海』)の親戚で、今、才能が注目されるヨアキム・トリアー。新感覚の北欧スリラーとしても同性愛に目覚めた少女の成長物語としても楽しめるはず。『アイ、トーニャ』のグレイス・グレスビー監督によるハリウッドリメイクも決定!