「男性らしさ」より「自分らしさ」を選んだジェンダーレス男子たち
世界中から注目を集めている、美容大国の韓国では、近年濃いメイクやレギンス姿で出かける男子が急増中!
ソウルの明洞のようなファッション街では、男子がファンデーションやBBクリームを持ち歩いているのは一般的。最近ではヘアトリートメントのためにサロンへ通う男子や、自宅でフェイシャルケアに励む男子も当たり前に。
ジェンダーに囚われない韓国人の美意識の高さ
韓国では、性別問わずスキンケアや整形、体型管理などは当たり前。
「見た目至上主義」とも言われる韓国社会において、容姿の良し悪しは就職にも影響するほど。一方で、近年はそんな韓国人男子の「美」のスタンダードが少しずつ変わってきている。
2021年の韓国人男性の「美」のスタンダードとは
2021年の韓国人男子のファッショントレンドは、「キュート」「フェミニン」「アンドロジナス」。
直訳すると「両性具有」という意味を持つアンドロジナスはジェンダーの枠組みを超えたファッションの様式のこと。男性らしさや女性らしさにこだわらない服装やスタイルに注目が集まっている。男性でも「水光肌(ムルグァンピブ)」といって、透明感がある滑らかな色白美肌が美しいとされている韓国。韓国では美容ブランドに性差がされていないため、男子が美容製品を買うのは当たり前! そもそもの性別は問わず、化粧品への投資は惜しまないのが韓国流。
そんな韓流メンズメイクは、「CIX(シーアイエックス)」のヒョンソクのように、自然なカラーのファンデーションやリップを塗ることで、血行を良く見せるというのが一般的。
さらに、2021年は健康とフィットネスに励む急増中。もともと鍛えている男子は多かったけど、最近のトレンドはあくまでもアンドロジナス。太り過ぎはもちろん、痩せすぎや筋肉のつきすぎもNGなのだとか。
ちなみに韓国では、「Swagger(スワッガー)」、「Botanic Heal Boh(ボタニックヒールボ)」の「Ideal for Men(アイディールフォーメン)」、「CNP Laboratory(チャアンドパク・ラボラトリー)」の「Homme Lab(オムラップ)」などのメンズコスメブランドやメンズラインが人気。
変わりつつある韓国の美容・ファッション業界
ジェンダーレス化が加速中の韓国は、コスメブランドの広告塔にも男性の起用が増加。
スキンケアブランド「NACIFIC(ナシフィック)」の専属モデルを努めているのは、男性アイドルグループ「EXO(エクソ)」のチャンヨル。
「TIRTIR(ティルティル)」のブランドアンバサダーには、同グループのベクヒョンが就任。
また、俳優のアン・ヒョソプは日本でも人気の「Innisfree(イニスフリー)」の“スーパーヴォルカニック ポア クレイマスク 2X”のグローバルモデルに起用。
このほか、「Dr.Different(ドクターディファレント)」のキャンペーン“アイム・ディファレント”の広告塔を務める俳優のイ・ギュヒョンが、動画で「美しさは女性だけのものではない」と発信するなど、韓国では、性にとらわれない自由な美のあり方がスタンダードになってきている。
K-POPアイドルのメンズメイク文化が与える影響
世界的人気男性アイドルグループ「BTS」を始めとするK-POPアーティストに影響を受けている男子も急増中!
今までは濃いメイクといえば、音楽好きや、いわゆる「派手な男の子がするもの」という認識だったのが、近年では一般人男性でもカラーコンタクトや濃いメイクを楽しむ時代に。
こちらは「TOMORROW X TOGETHER」のヒュニンカイ。
そして「A.C.E」のチャンも。
ソウルの明洞のようなファッション街には、ジェンダーレスにオシャレを楽しむ男子がいっぱい♡
美容系ユーチューバーの登場によって、美容やメイクはより身近に
レオジェイ (Leo J)、キウ (Kiu)、ファニ (HWAN'E)など、近年急増している男性の美容系ユーチューバーの存在も、美容やメイクが身近になっている大きな理由のひとつ。
そして、男性の美容系ユーチューバーブームは日本にも!
メイクや女装で人気の「よききちゃんねる(チャンネル登録者数:約100万人)」、整体師ならではの美容動画を配信している「美容整体師川島さん。(チャンネル登録者数:約68万人)」、日本在住の韓国人美容ユーチューバー「Hyukヒョク(チャンネル登録者:約46万人)」、ダイエットや美白ケアで話題の「車谷セナ(チャンネル登録者数:非公開)」など、男性の美容系ユーチューバーが急増中♡
※チャンネル登録者数は、2021年6月時点
日本でも高まりつつある男性の「美」に対する意識
世界的なK-POPアーティストの躍進や美容系男性YouTuberの登場によって、日本の男性の美意識も少しずつ変わってきている様子。
大手コスメ・美容サイトが2021年1月に実施した調査によると、調査対象の男性の約9割がスキンケアを使用していて、全体の約半分が、リップクリームやクリーム、美容液、乳液を使っていると回答。
さらに、2020年6月に富士経済が発表した、ヘアケア・ヘアメイク、メンズコスメティックス市場レポートによると、2022年の市場予測は2019年と比べて10.1%も増える見込み。実際に、2019年はなんと2018年よりも5.3%増の257億円を記録したのだとか! この結果について、同社はスキンケア商品が好調だったことや、メンズメイクが注目を集めた影響が大きいとコメント。
日本人男子は今のところ、メイクよりもスキンケアに対しての関心が高い傾向にある。
日本でもメンズメイクブランドが続々と登場
現在では「LABELHOMME (レーベルオム)」などの韓国発ブランドの他、「BOTCHAN(ボッチャン)」、「L’UOMO(ルオモ)」、「NULL(ヌル)」など、日本発のメンズメイクブランドも続々登場。
浸透しつつある「ジェンダーニュートラル」という考え方
近年ではジェンダーニュートラルという考え方も世界中で浸透中。“ニュートラル(neutral)”は“中立”という意味で、ジェンダーニュートラルは、性に中立的で男女のどちらにも偏らないという意味。
日本でも「iLLO(アイロ)」や「NALK(ナルク)」といったジェンダーニュートラルブランドの出店や、韓国発の「LAKA(ラカ)」の上陸など、ジェンダーニュートラルが少しずつ普及している様子。
性の多様化がますます進む今。ジェンダーにとらわれることなく好きなメイクや服に身を包み、自分らしさをもっと自由に表現できる時代はそう遠くないはず。
Sayah(ライター)
日本語、英語、スペイン語、フランス語のマルチリンガル。フリーライターの傍ら、アメリカの大学に在学中。語学、自然、動物、海外文化オタクで、NYを中心に海外滞在を繰り返す。現在中南米の子どもの支援に携わるなど、少しでも国際社会に貢献するのを目標に、日々情報発信中。