「何よりも、お手本となるポジティブな女性に囲まれることが大切だと信じています。何事も最初は難しいと理解し、進むべき道はどこにあるのかを見極め、辛抱強くやり続けられるように、応援してくれる人を見つけて。それはあなたができる一番のことだから」

アスリートを目指す女の子へ伝えたいことは? と訊ねると自身の経験からこう語ったのは、今もっとも影響力のあるスポーツ選手のひとり。SNSに投稿するたびにそれがニュースになりBLMではデモに参加し、ボディシェイミングにははっきりとNOを突き付ける女性、大坂なおみその人だ。

彼女は「ナイキ」とともに、スポーツを通じて女の子たちの未来をよりジェンダー平等なものにする活動「プレイ・アカデミー」をスタートさせ、東京から展開する。そんな彼女に、どんなに叩かれようとも力強く発信し続ける理由を訊いた。

スポーツで女の子は男の子と同じ機会を当然与えられるべき
大坂なおみ コリ・ガウフ
Paul J Sutton/PCN
2019US OP第3回戦のコリ・“ココ”・ガウフとの試合では、初めてセンターコートで戦ったものの敗退した彼女に、一緒にコートに残ってインタビューを受けようと大坂選手が提案

昨年USオープンで見せた、15歳の新星ココ・ガウフへの行動は“クラス・アクト(一流の人物の、手本にすべき行動)”と世界中で報道された。同様に後輩となる女の子たちへ、ただでさえ多忙な中、なぜわざわざ「プレイ・アカデミー」を立ち上げようと思ったのか?

「スポーツで女の子は男の子と同じ機会を当然与えられるべき。これこそが東京で『プレイ・アカデミー』と一緒にやろうとしていることです」

確かに、スポーツ界ではいまだに指導者が男性であることが圧倒的に多く、男子と異なる女子の成長過程の悩みなどを理解した指導が不足している。その理由のひとつには、“女子のスポーツ離れ”がある。競技を始めてから途中で辞めてしまう離脱率は、男子の2倍に上ると言われている。

「女の子や若い女性アスリートにとって、尊敬できる女性のお手本がいることは本当に大事なことです。テニス界では男女平等が推し進められてきました。女子は男性と同じ規模のトーナメントを戦っています。でも、大抵の競技では女の子たちが憧れるに十分な数の女性プロスポーツ選手がいるとは言えません。

彼女たちに、もっと多くの女性のロールモデルを見せてあげたいのです。女の子に何が必要なのかを理解する選手やコーチを」


女の子たちが直面する壁を壊す手助けをしたい
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ロールモデルがいないことで職業にする手前で多くの女の子が辞めてしまい、そのため指導者に女性が少なくなり、自分たちにフィットした指導が受けられないため女の子たちはスポーツから離れていく……。この負の連鎖を断ち切るためは、暴力的な言葉で女の子たちの自信を失わせたり、「女らしさ」を理由に男子には求められない謙虚さを求めたりしない、ポジティブな女性たちがリードする必要がある。その動機は自身の経験に基づいているという。


「 私は大人になる過程で、セリーナ・ウィリアムズの諦めない力強さに、マリア・シャラポワの凛々しさに感動させてもらいました。私のテニス・ヒーローたち全員が―私が歓声を上げた人たち、対戦した人たち、そして背中を押し続けてくれる人たちが、スポーツ選手としての現在の私を形作った非常に重要な人たちです。

コートの外では、母から多くの事を学びました。 母は自分より他の人の事を優先するのです。私の姉、まりは私のやる気を最も引き出してくれる存在です。試合前に叱咤激励が必要なとき彼女を頼ります。多くの事を教わり、手本となってくれるこんなにも多くの人に囲まれるという幸運に私は恵まれました。女の子たちにとってスポーツという体験をより良いものにすることが私の目標です。私たちは次世代の女性アスリートの未来をいい形に変えるよう努力できるはずです。彼女たちが直面する壁を壊す手助けをしたい」

この言葉は、スポーツ選手のみならず私たち一般の女性たちにも、果たしてこれまで次を担う女性たちに恥ずかしくない行動をとれてきただろうか、彼女たちを健全に育ててきただろうかと我が身を振り返らせる。


社会変化はすべての人の努力と参加によって成功するもの
大坂なおみ
Nike

「プレイ・アカデミー」が取り組んでいるのはジェンダー間の平等だけでない。人種のダイバーシティに富んだスポーツ界に変革することも目標のひとつ。Black Lives Matter運動にバイレイシャルのアスリートとしてバックラッシュにも臆せず声をあげた。

「ナイキ」のキャンペーン「You Can’t Stop Us」を引き合いに出せば、今の大坂なおみは誰も「止められない」。かつてトレードマークだった内気さを覆したのも今は昔。力強い女性像に変化したのは、次世代の女子アスリートの手本となるべく克服したいと思ったからだと語っていた大坂選手。なぜあなたのように声をあげる選手がなかなか増えないのか? という質問にこうも付け加えた。
 
「差別体験は直接自分には関係ないのだから、人種差別の被害に直接遭わない人は声をあげる必要はないかのように感じている。そんな風にも思えます。ですがそれは違います。世界や社会を変えることは私たち全員の努力と参加によって成功するもの。(自分は人種差別に遭っていないと感じている人も含め)ますます多くの人が立ち上がり、変化を求めて声をあげている姿を見るのはうれしいです。希望が湧いてきます。私自身も、自分の信じるもののため訴え続けていこうと思います」

スポーツ選手は「勝つ」ことだけが仕事ではない。よりよい世界を作る役目もある。これまでうっすらとは送られても、今ほどアスリート自身が明確な姿勢をとった時代はなかったように思える。時代のリーダーになりつつある大坂なおみ選手が、今後どうこの活動を進化させるのか。楽しみに見守りたい。


【大坂なおみお気に入り! プロアスリートを目指す女の子たちにおススメしたい映像作品Best3】

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『 Kobe Bryant’s Muse』 

「真摯な姿勢と努力の見本としては最高のスポーツ・ドキュメンタリーです」

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『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』フューチャレット映像:Filming On Film
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』フューチャレット映像:Filming On Film thumnail
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『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

「女子スポーツ、特にテニス選手たちはWTA(女子テニス協会)で闘った彼女の存在のおかげで今がある。力強く素晴らしいロールモデル」

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BLACK IS KING, a film by Beyoncé | Official Trailer | Disney+
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ビヨンセの『Black Is King』 

「私にとって究極のロールモデルによる、視覚的な美の表現がここにあります」