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①「自分らしく」とは反対のSNS中毒『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(2018年)
Aflo 『レディ・バード』や『ミッドサマー』を制作した気鋭の映画スタジオA24が送り出す 『エイス・グレード』は、嘘をつきながら「教訓」動画を配信しているソーシャルメディア中毒の13歳、ケイラを主人公に、焼け焦げるような自意識に苦悩する中学生最終学年にフォーカスするティーン映画。
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今日のSNSにはびこる「自分らしく」のメッセージとは対局の道を歩んで失敗もしていく悩めるロウティーンを描いたボー・バーナム監督いわく「インターネットは助けにならない」。「映画の神々からの贈り物」とまで評された、リアリズムに溢れる本作の結末を見届けて。
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』
『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』
¥509
ストーリー:「学年で最も無口」賞に選ばれてしまったケイラは、友達もおらず、YouTube動画配信もアクセスがとれない日々。心配する父親に反抗しながら、ミドルスクール最後の一週間で、経験者ぶって好きな男の子にアタックするなど、チャレンジと失敗を重ねていく。第71回全米脚本家組合賞の脚本賞受賞。
②進歩的な時代の異性愛規範『Love, サイモン 17歳の告白』(2018年)
Photo Credit: Ben Rothstein//Aflo ジョン・ヒューズ監督作のような王道ティーン映画の新たなる傑作として喝采された『Love, サイモン 17歳の告白』は、陽的な作風でありつつ、ゲイであることを明かせずに悩む高校生サイモンを主人公に「進歩的な世代」の異性愛規範を描写した作品。
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たとえば、サイモンの家族や友人たちは差別的な人物というわけではないけれど、同性愛にまつわるジョークを言ってきたり、異性との恋愛を当然のように語ってきたりするため、当のサイモンは気まずい思いをしたり嘘をついてしまうことも。セクシャリティを勝手に公にされるアウティングの恐怖も交えながら、過ちも犯してしまうサイモンたちの友情、そして恋路を、ドキドキしながら見守ることができる。
ストーリー:同性愛者であることを明かしていない高校生サイモンは、ある日、学校の掲示板で自分と同じ境遇にある生徒がいることを知る。ブルーと名乗る正体不明の投稿者とメールで交流して親密になっていくも、そのことを知ったお調子者の同級生マーティンから「バラされたくなければ自分の恋の応援をしろ」と脅され、親友たちにまで嘘をつく羽目に陥ってしまう。第30回GLAADメディア・アワードの最優秀映画賞(拡大公開)受賞。
③恵まれた白人からは見えないBLM問題『ヘイト・ユー・ギブ』(2018年)
Aflo ビヨンセから「娘には貴方のように育ってほしい」と語られるほどの影響力を持つ俳優であり活動家、アマンドラ・ステンバーグが主演した学園映画は『ヘイト・ユー・ギブ』。彼女が演じる主人公スターは、黒人の人々が多く住む治安の悪い地域で生まれ育ったものの、白人が多く通う進学校において「白人受けの良い黒人生徒」を演じている。
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この二重生活のごとき設定から映し出されるのは、幼い頃より「警官に殺されないための術」を教え込まれる黒人ティーンたちと、恵まれた白人学生から見えている世界がまったくもって異なること。幼なじみの黒人少年が警官に射殺されたことをきっかけに変わっていくスターだけれど、Black Lives Matter運動の当事者として声をあげようとすると警官やギャングからプレッシャーが寄せられるなど、何十にもなった複雑な社会問題に巻き込まれていく。
ストーリー:低所得者層の黒人が多く暮らす地域で育ったスターは、白人生徒の多い進学校で「第二の人格」を演じながら生きていた。しかし、地元で行われたパーティーの帰り、初恋の相手である幼なじみの黒人少年カリルが警官から射殺されてしまう。家族を養うためギャングと関わっていたカリルがマスメディアから非難されるなか抗議運動が始まっていき、現場に居合わせたスターの証言が求められるようになる。
④スポーツ特待システムの暗部『アマチュア』(2018年)
William Gray bill@graypictures.com スポーツエリートの男子には、輝かしい青春と未来が待っている……そんなイメージに現実を突きつけるのが、Netflixオリジナル映画『アマチュア』。14歳にしてバスケットボール特待生として高校へスカウトされた天才少年が、アマチュアスポーツ業界のダークサイドに巻き込まれていく物語で、言葉巧みなスカウトや、勉学から遠ざかるを得ない授業免除特権、スポンサー事情、選手生命が絶たれたあとの苦難など、実話と勘違いされたほどのリアルな問題が描写されていく。
William Gray bill@graypictures.com 事実、現実のアメリカでも、高校や大学を含めた学生のアマチュア選手は無報酬でハードな練習に明け暮れる生活を送っているそう。「それは魅力的で不誠実な世界だ」と語るライアン・クー監督は、子どもに大きな決断を迫るアマチュアスポーツ業界に警鐘を鳴らしている。
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Amateur | Official Trailer [HD] | Netflix
Watch onストーリー:親思いの天才少年テロンは、14歳にしてバスケットボールの特待生として高校に進学する。「成功するには努力と才能だけじゃ足りない、仕組みを理解した人間か必要だ」と語るコーチのもと、ハードな練習と遠征試合に専念していくが、その一方で授業に出席できなくなり、進路の選択肢が減っていってしまう。
Netflixで観る
⑤無くならない同性愛矯正センター『ミスエデュケーション』(2018年)
Beachside films / Parkville pictures//Aflo クロエ・グレース・モレッツが主演した『ミスエデュケーション』は、寄宿学校やサマーキャンプのような雰囲気を携える情緒的で美しい雰囲気のティーン映画だけれど、フォーカスするのはアメリカ社会に根づく宗教問題。同性と関係を持った主人公キャメロンがキリスト教にもとづいて同性愛を矯正、治療しようとするセンターに送られてしまうストーリーになっている。
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施設のスタッフは、キャメロンという名前すら「元々は男性名」と指摘するほど伝統的性別規範にこだわっているのだから驚き。1990年代を舞台にしたフィクションではあるけれど、2018年時点のアメリカ社会でも、こうした施設は32州で合法のまま。同様のコンバージョン・セラピーでの体験談を基にした映画『ある少年の告白』でも描かれるように、今なお深刻な社会問題として残存している。
ストーリー:プロムの夜、同性との性的関係が親戚に知られてしまったキャメロンは、自然に囲まれたキリスト教同性愛矯正センターへと送られる。同性愛を罪とする教育にうんざりしている者同士で友情も結んでいくものの、その特殊な環境でトラブルにも巻き込まれていく。2018年サンダンス映画祭USドラマ部門受賞。
⑥自由な国の属性レッテル『ルース・エドガー』(2019年)
Aflo オクタヴィア・スペンサーやナオミ・ワッツなど名優を揃えた『ルース・エドガー』は「オバマの再来」と呼ばれるパーフェクトな高校生、ルースを主人公にしたサイコスリラー。紛争がつづくエリトリアからアメリカの白人夫婦の養子となった黒人青年ルースだったが、ある日、学校でテロリズムに共鳴するような過激思想の片鱗を見せ、教師や親を惑わせる。
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『ルース・エドガー』緊迫の予告編 ナオミ・ワッツ×ティム・ロス×オクタヴィア・スペンサー共演
Watch onこの映画が浮かび上がらせるのは、個人主義や人権を称揚する「自由の国」を誇りとしながら、人種やジェンダーなどの属性でレッテルづけをしていくアメリカ社会の矛盾。「逆境にも負けず立派に励む黒人像」のプレッシャーに晒されるルースの目論見とは何なのか、それとも彼はただ周りが求める優等生の道を歩んでいるだけなのか……重苦しいからこそ、心に大きな問いかけを残す一作。
ストーリー:エリトリア育ちのルース・エドガーは、アメリカの白人夫婦の養子として育ち、高校を代表する優等生となった。しかし、歴史教師のハリエットから呼び出された母親は、ルースが過激思想と共鳴するかのようなレポートを提出し、ロッカーに違法の花火を隠し持っていたことを知らされる。一方、ハリエットはアメリカ社会の黒人差別問題を深刻視する教師で、他の黒人生徒とイザコザを起こしていた。
⑦フェイクニュースとの戦い『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 青春ロマコメをテーマにしたMCU版『スパイダーマン』シリーズは、今日を代表する社会派ティーン映画! 高校のヨーロッパ研修旅行中もスーパーヒーロー活動に明け暮れるピーターを描く第二弾では、SNS社会の大きな問題である「フェイクニュース」にスポットライトが当てられる。
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予告編『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』デジタル配信/ブルーレイ&DVD&4K UHD発売中!
Watch on脚本家のエリック・ソマーズが語ったところによると、混乱する世の中では、それを利用して嘘を売り込む者が出てくるとともに、不安から信じてしまう人も多くなる……今日の若者たちも、ピーターと同じく、フェイクな情報と戦うことが成長の試練になってしまっているのかもしれない。