記念すべきジョー・バイデン新大統領の就任式のため、カマラ・ハリス副大統領と新旧のファーストレディたちは、新興ブランドや“BIPOC-owned”(Black, Indigenous and People of Color=黒人、先住民、有色人種がオーナー)のブランドを頼りにした。
ハリス副大統領は、クリストファー・ジョン・ロジャース(Christopher John Rogers)のパープルのスーツとコート、ファーストレディとなったジル・バイデン博士は、スワロフスキーとベルベットを使った「マルカリアン(Markarian)」のブルーのドレスとコート、そして元ファーストレディのミシェル・オバマは、「セルジオ・ハドソン(Sergio Hudson)」のプラムカラーで全身を統一。ヒラリー・クリントン元国務長官もまた、全身をパープルで揃えていた。
そして就任式で『This Land Is Your Land(我が祖国)』のリミックスを歌ったジェニファー・ロペスは、(白をイメージカラーのひとつとして)女性参政権のために活動した「サフラジスト」へのオマージュとして、「シャネル(Chanel)」のオールホワイトのルックをチョイス。
バイデン夫妻の子どもと孫たちもそれぞれ、洗練されたワンカラーのアンサンブルで登場。孫のナオミ、ナタリー、フィネガン、メイジーはそれぞれ、ホワイト、ピンク、ベージュ、ブラック一色でまとめ、娘のアシュリーは全身をネイビーでコーディネートした。
頭からつま先までを1色で統一することは、シルエットを縦に長く伸ばして見せてくれるという嬉しい効果を持つだけでなく、率直なイメージをもたらしてくるものでもある。
また、「マルカリアン」のデザイナー、アレクサンドラ・オニールによれば、ワンカラーが選ばれるのは、歴史的に公職に就くのがほとんど男性だったことで、私たちが政治や国際的な舞台でスーツを見ることに慣れており、受け入れているためとも考えられる。『BAZAAR.com』の独占インタビューで彼女は、スーツは「クラシックな着こなし」であり、「保守的なアンサンブル」だと説明している。
さらに、ファーストレディの服をデザインするにあたり、スーツのようにワントーンでコーディネートすることにこだわった理由についてアレクサンドラは、次のように付け加えた。
「私は個人的に、“マッチーマッチー(色のトーンを揃えた)なルック”が大好きなのです。私たち(マルカリアン)の特徴のひとつになっています」「まさにクラシックな、時の試練に耐えるような何かを取り入れたかったのです」
服の色のチョイスは、当然ながらより重要なものになっている。共和党と民主党それぞれのイメージカラーである赤と青を合わせた“紫”を、多くの人が就任式でまとっていたのはそのため。政治専門紙『ザ・ヒル』によれば、この色は、連帯感と超党派の精神、結束を連想させるものだという。
就任式にバイデン博士が選んだスーツのマリンブルーは、民主党のシンボルカラーに近い色。アレクサンドラによれば、この色は「信頼感と自信、安定」を示すものでもあるそう。
バイデン夫妻の孫ナオミとジェニファー・ロペスが着たサフラジストへの賛同の気持ちを表すものとみられる白は、ハリス副大統領も昨年、大統領選での勝利が確定したことを受けてスピーチを行ったときに着用している。このとき選んだのは、ウェス・ゴードンがデザインした「キャロリーナ ヘレラ(Carolina Herrera)」のスーツだった。
就任式の出席者たちの間に広くみられたこのトレンドは、これからバイデン政権の下で起こるもうひとつの変化の予兆とも考えられる――主要な場面で見られた男性たちのクラシックなスーツと同じように、アメリカの新興デザイナーが手がける、完璧な、そして流行を敏感に反映するスーツが、社会のメインステージで頻繁に見られるようになるかもしれない。
ハリス副大統領やバイデン博士、そしてその家族たちの着こなしには今後、より高い注目が集まるのは間違いなし。
Photos: Getty Images From Harper’s BAZAAR