新しいワークアウトを試してみたいと思っている人の中でも、とくにヨガとピラティスに興味がある人が多いのでは? そうであれば、気になるのが「ヨガとピラティスの違い」と「どちらがより減量につながるの?」ということ。ピラティスとヨガに関する疑問について、専門家が解説。
Photo: Getty Images Translation: Masayo Fukaya From Prevention
ピラティスとは?
ピラティスと聞くと、少し手強そうなイメージがあるけれど、実際は体に負担をかけずにコアマッスルを鍛えることができる。
1920年にジョセフ・ピラティス氏が開発したこのワークアウトは、筋力、筋肉のコントロール、安定性を重視した、エネルギッシュでマインドフルな全身エクササイズ。
練習はマットを敷いた床の上か、リフォーマーと呼ばれるマシンなどの特殊な器具の上で行う。
ヨガとは?
ヨガは何千年も前から行われていると言われている。ヨガの練習は、一連の身体的なポーズから構成されており、呼吸法だけでなく、内面への注意や意識にも焦点を当てている。
ヨガの実践をサポートする最大の非営利団体「ヨガ・アライアンス(Yoga Alliance)」によると、ヨガは「肉体、メンタル、感情、精神というあらゆるレベルで幸福感を高めるための総合的な手順で、信仰ではなく、豊かな生活を送るための手法と指導のシステム」とのこと。
アメリカでは、姿勢と呼吸法のシステムであるハタヨガが最もよく知られている。
ヨガとピラティスの違いは?
専門家は、ヨガとピラティスはどちらも動作の流れに関連したものであるが、重視しているポイントが違うと説明する。
ピラティスは体幹の強化に焦点を当てるのに対し、ヨガは柔軟性に焦点を当て、より強い精神的つながりを築くことを目的としている。
「ヨガには精神的な要素があり、インドの指導者や賢者たちの長い歴史から構築されていますが、ピラティスはダンサーの呼吸や動きを助け、健康的な背骨を維持してあげたいと願った男性によって作られました」と語るのは、ニューヨーク市の公認ヨガインストラクターであるメル・ルッソ氏。
「私の見解では、ヨガには多くのバリエーションとスタイルがあるいっぽう、ピラティスは創始者が意図したものに忠実であり続けているという点が主な違いです」
ピラティスは筋力に重点
ピラティスの指導者であり、「ボディトニック(BodyTonic, Inc)」のオーナー兼ディレクターのジェニファー・デルーカ氏は、「どちらも心と体を使うことが求められます。また、全身のコンディションを整え、あらゆるレベルで動きを取り入れていきます。どちらも呼吸法の要素があり、適切なアライメントと姿勢に重点を置いています」という。
さらに、「ヨガの中には、姿勢を保つことに重点が置かれているものがありますが、ピラティスは活発な動きの要素を伴います。
ヨガが精神的効果を生み出すことは明らかですが、ピラティスは運動による影響によって深い幸福感と新たなエネルギーを生み出します。どちらも筋力とストレッチを取り入れていますが、ヨガはストレッチに重点を置いているのに対し、ピラティスは筋力に重点を置いています。
しかし、どちらも一般的になってきた今、その線引きが曖昧になってきているのも確かです。ピラティスの効果を取り入れていないヨガのクラスや、逆にヨガの効果を取り入れていないピラティスのクラスを見つけるのは難しくなってきています」と付け加えた。
ピラティスのメリットは?
「たくさんありますね。体幹を鍛え、筋肉を鍛え、柔軟性と協調性を高め、姿勢を意識して呼吸機能を高め、睡眠と消化機能を向上させることができます」とデルーカ氏。
心身への効果が得られるピラティスではさらに「気分が明るくなり、考えが明確になり、自信がつきます」と説明する。
ピラティスにデメリットはありますか?
デルーカ氏は「ピラティスを避けるべきだとは思いません」。
「経験豊富な先生のもとでピラティスのプライベートトレーニングを受けるべき人もいれば、グループセッションで問題ない人もいます。ただし、グループに参加する前に少なくとも3回のプライベートセッションを行うことをお勧めしています」とアドバイス。
彼女が指摘するもうひとつの注意点は、「“ピラティス”と名乗っていても本物でないものがたくさんあります。そのため、自分できちんと下調べをしてから、適切なものを見つけるようにしましょう」
ピラティスで減量はできますか?
「減量は数学の方程式なので、摂取した量よりも多くのエネルギーを消費しなければなりません。
その上でピラティスができることは、気分を良くしてモチベーションを保つことです。
この方法を十分に習得すれば、有酸素運動にもなりますが、55分間走るのとは違います。ランニングやサイクリング、友達とダンスをするときのような気分の良さを実感できます」とデルーカ氏は言う。
ヨガのメリットは?
ルッソ氏は「目的によって違いますが、多くのメリットがあります。もし肉体を鍛えて、より強く柔軟な体を手に入れたいのであれば、ヴィンヤサフローのようなフィジカルトレーニングをするといいでしょう。軽く動いて心と体をつなげたいのであれば、ゆっくりとしたヨガがおすすめです。ヨガの大きな利点は、体を動かす習慣を作り、関節を強化し、身体的な限界に気づくことです」と語る。専門家は、ヨガのクラスは柔軟性、強さ、協調性を高めるだけでなく、心を健康にすることができると述べている。
ルッソ氏はさらに、「しかし何事にも言えることですが、一貫性が必要です」「身体的なメリットを得るためには、継続的に実践する必要があります。それを積み重ねることで徐々に変化が見られるようになり、筋力や柔軟性が増し、腰痛もなくなります。しかし、みなさんの研究がどれほど重要なのかを私が断言することはできません。自分に合ったクラスのスタイル、レベル、先生を見つけることが最も重要なのです」と付け加えた。
ヨガがメンタルや精神に与えるメリットは何ですか?
ルッソ氏はメリットについて次のように語る。「ヨガと他の理学療法との大きな違いは、自分に意識を促すことです。ヨガでは、今ここに存在していることや、呼吸に意識を向けることに大きな重点が置かれています」「優秀な先生のもとでヨガのクラスを受けている場合、彼らは心理的、精神的な利益をひそかに教えてくれます。
体がどれだけ強くなっても、それ以上に深いつながりが築けないのであれば、ヨガの練習をする意味がなくなってしまいます。ヨガでは、自分の体が伝えていることに耳を傾けることが求められます。優秀なヨガの先生は、生徒にヨガのポーズを強要したり、力任せにしたりすることはありませんし、むしろそうした行為が負傷を招く可能性があることを教えてくれるでしょう。
私はいつも生徒たちに、マットの上にいる自分はマットから離れた自分と同じであると伝えています。自分の体に優しくする方法やスローダウンする方法、そしてここに存在し、呼吸していることを学んで身につけていけば、予想外のメリットが得られると信じています」
ヨガにデメリットはありますか?
ルッソ氏は「ヨガの最大の欠点は、よくも悪くもヨガが非常に身近なものとなり、多くのスタジオでは心と体のプラクティスである以上に、ワークアウトになっているということです。生体構造の知識が乏しい先生は、簡単に生徒を負傷させてしまいます。ケガが多くて特に注意が必要な場合は、グループレッスンよりもマンツーマンのプライベートヨガの方が安全です。どんなに熟練した先生であっても、グループレッスンの中でケガをした人だけに注意を向けるのは難しいのです」と言う。
ヨガで減量はできますか?
ヨガに関するよくある質問に「ヨガで減量できますか?」というものがある。それに対しルッソ氏は「間接的には」可能だと言う。
「私はこの質問をよく受けますが、体重を減らすための最善の方法は、間違いなく食事です。まずは摂取カロリーに気をつけて、体を動かすことを心がけましょう。しかし、間違いなくヨガは減量に役立ちます。少なくとも週に2〜3回、一貫した練習をすれば、体の変化を感じ始めます。脂肪分の多い食事への欲求や、カフェインやアルコールへの依存は、ヨガの練習を続けることで軽減されるでしょう。ヨガの教えと呼吸法、自己認識を身につけるによって、自分自身をより大切にすることができるようになるのです」