オリンピックは以前から、アスリートたちがその浴びる脚光を利用して、世界中の人々に社会的不公正の問題について訴える場にもなってきた。

1968年にはメキシコ・オリンピックに出場し、メダルを獲得して表彰台に立った陸上のアメリカ代表、トミー・スミス選手とジョン・カルロス選手がこぶし突きを挙げ、人種差別に抗議した。

社会的な問題に対する意識を高めるための手段として、オリンピックの場を利用することは現在も続いている。7月24日に行われた女子サッカーの日本対イギリスの試合では、選手たちが試合前、人種差別への抗議の意思を示し、片膝をついた。

これは、アメリカのNFL選手だったコリン・キャパニックさんが始め、多くのスポーツに広まったもの。東京オリンピックでも競技に出場する選手たちが、反人種差別を訴える「ブラック・ライブズ・マター」をサポートする意思を示すために行っている。

そして、東京オリンピックではもうひとつ、選手たちが強く訴えていることがある。

ドイツ女子体操選手たちは25日に行われた予選に、従来のレオタードではなく全身を覆うボディスーツで出場。体操が「性的対象」として見られることに抗議する姿勢を示した。

olympics feminist moments
LIONEL BONAVENTURE//Getty Images

選手たちは今年4月に出場した欧州体操競技選手権でも、ボディスーツを着用。サラ・フォス選手はこのとき、成長して思春期を迎え、生理が始まると、ボディスーツを着たいと思うようになったとして、『BBC』に次のように説明していた。

「不安がなければ、これまでどおりのレオタードを着ればいい、ボディスーツのほうが気分がよければそれを着ればいいと思います」

どちらを着用するか、自分で決めることが認められるべきだという。

olympics feminist moments
LIONEL BONAVENTURE//Getty Images

また、『BBC』はこのとき、ドイツ体操連盟は、選手たちは「性的対象とされること」に抗議し、全身を覆うボディスーツを着るようになったと説明していると伝えていた。

スポーツが性的虐待の場になるという問題は、以前から起きていた。数年前にはアメリカで、シモーネ・バイルズ選手やアリー・レイズマン選手をはじめとする世界的に有名な選手たちが、体操連盟のチームドクターだったラリー・ナサール受刑者から受けた性的虐待について告白。

すでに有罪判決が下されたナサール受刑者には、余命を大幅に上回る長い年数の禁錮刑が言い渡されている。

Photos: Getty Images From ELLE