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【この毒母がすごい 令和vers.】いつまでも主役のママ、グレース・ケリー

児童虐待の件数はうなぎのぼり。子供たちの脅威となる母親たち。令和初の母の日に振り返りたい毒母たちのララバイ。※6月16日は毒父がすごい令和vers.を掲載予定

By
Princess Grace and Infant Son
Bettmann//Getty Images

毒母 Case2 いつまでも主役なママ グレース・ケリー

絶世の美女。現代のシンデレラ。事故死した悲劇のヒロイン。美しき良妻賢母も実はコートニー・ラブと同じく、グレース・ケリーも毒母に育てられ、毒母になったひとり。母としての素顔は、娘たちをコンプレックスで押しつぶした承認欲求モンスターだった。

>>毒母Case1 コートニー・ラブはこちら

一緒に暮らしていても疎遠な母

Prince Rainier and His Family
Bettmann//Getty Images

2018年グレース・ケリーの娘で、ヨーロッパにおけるファッションアイコンとして現在でも活躍するキャロリーヌ妃は、セレブリティの広報誌『ピープル』でこう語っている。

「私と弟(アルベール大公)は両親とそれほど仲が良かったとは言えないわ。乳母とのほうがよっぽど親しかった。彼女がバカンスに入るときなんか、ふたりして『行かないで!』と泣き叫び、懇願したほどよ」。

「14歳まで一緒に食事をしたことがなかった」

The Royal Family In A Garden
Mondadori Portfolio//Getty Images

「私たちは14歳まで両親と一緒に食事したことすらなかった」とされる通り、常に子供たちは世紀の美男美女カップルの陰にいる存在で、親は親ではなかった。舞踏会でも、両親が子どもを伴うのではなく、両親がセレブリティたちの中心で憧れの視線を集める円の外で、ドレスを新調されるでもなく、母親のおさがりのドレスを着て姉弟と乳母だけで隠れるように踊っていただけだった。

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母の光におびえる娘たち

Royal Family of Monaco Host a Party
Ron Galella//Getty Images

娘が世間的に目立つことを極端に嫌った母は、たとえ娘が主役になる舞踏会デビューの場ですら、母は隣の娘を思いやるわけでもなく、光り輝く美貌で視線を集め、横で恥じらうしかない思春期の娘は、その顔をずっと下に向けるがままにさせられたことは、周囲のカメラマンからも証言されている。圧倒的な美貌と華々しいスタイルで、子どもたちの注目を奪い自分が主役になることをためらわなかった。

今ではもっとも美しいロイヤル・メンバーとして数えられるキャロリーヌ妃も、思春期に激しく母に反抗した妹ステファニーも、その後の結婚スキャンダルが物語るように自己肯定感が低く育った。

娘とのドライブで事故死

Retrospective On Prince Rainier
Michel Dufour//Getty Images

グレース王妃が1982年9月13日に運転する自動車事故で亡くなったとき、命からがら助かったステファニー妃(写真左)に関してはひどいもので「実は運転していたのは彼女」「直前まで喧嘩をしていたのに一緒に出掛けたのはおかしい」と今でも噂する人が多い。「お前が運転していた、お前の過ちだ、お前が母親を殺したと言われ、私はとてつもないプレッシャーを抱えていた」とようやく口を開いたのが1989年になってから。死してなお母親に対する多くの人の信仰心は娘を苦しめた。

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味噌っかすだった毒母の娘時代

Grace Kelly and Family
Bettmann//Getty Images

グレース・ケリー(写真左端)は、ドイツ系の母とアイルランド系の父の間に4人きょうだいの3番目に生まれた。19世紀末生まれで大学講師としての職を得た優秀な母と、3度の金メダルを獲得した五輪選手の父はのちに民主党から立候補。伯父のウォルターとジョージは、サイレント映画のスターとピューリッツァー賞作家で、兄は父と同じく将来を嘱望されるボート選手(のちの五輪メダリスト)というタレント一家において、何をしても不器用だと母からはののしられ、父からは無視された味噌っかすの次女。姉からはいじめられ、妹が生まれてからは、末っ子としての甘えも許されなくなった。

「私を見て!」という毒

Grace Kelly Wearing Off-the-Shoulder Gown
Bettmann//Getty Images

親から褒められたくて女優になることを得目指したが、女優の卵だった当時、ハリウッドの大物監督で彼女の恋人だったドン・リチャードソンが「彼女は必ずスターになります」と宣言しても、一家は笑い転げた。それほど彼女は家族から軽んじられていた子どもだった。

他人からの注目を浴びることをやめられなかった元ハリウッド女優。娘たちに当たるスポットライトを奪い続けたことで、その後彼女たちの私生活をより複雑なものにしてしまったとするなら、現在その問題が叫ばれている自己肯定感の欠如は予想以上に、子どもの健全な成長に毒なのかもしれない。


(参考文献)
『Grace Kelly: Hollywood Dream Girl』by Jay Jorgensen, Manoah Bowman/ Dey Street Books
「Secrets d'Histoire - Les Grimaldi : Princes de Monaco」(France2)

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