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『クルーレス』(’95)
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この有名なファッション映画は、今ならアウトすぎて通らない企画のひとつ。
劇中の衣装はカリカチュアとして楽しめるけれど、レズビアンの教師に生徒が色目を使って成績を上げてもらうとか、アウト過ぎて笑えないシーンでいっぱい。支配的でマッチョな父親の前で娘がヒップを揺らしておどける姿を追うカメラワークなどは冗談抜きで気味が悪い。しかも女子高生と(「元」とはいえ)義兄の恋愛って……さらに笑えないから!
この映画がアウトな証拠はYouTubeムービーを再生する前の「この作品は視聴者を傷つける可能性があります」という表示にも表れている。
スクールカースト上位にいる白人がいかに差別的か……。これをいじめられっ子の視点を通し反面教師として見せるのはいいけれど、回収しきれず流されてしまっている部分がアウト!
「レズビアンなんて女子会に呼べるわけない」なんて発言をただの仲間外れと同列に並べるなんて、ダニエル・メンゼイジーやジョナサン・ベネットなどLGBT俳優をキャスティングしておきながらホモフォビアを軽視しすぎ。それに、アフリカ出身の白人ケイディ(演:リンジー・ローハン)が好意をもって「よっ、アフリカちゃん」と呼ばれる場面なんて、今の感覚ではヒヤリとする。
これらをサラっと流してしまうことは「この程度の“いじり”は笑って済ませれること」と刷り込むに等しい行為。百歩譲って「サタデー・ナイト・ライブ」のスキットとしてやるのならいいけれど、映画として子どもに見せるのは危険。いま劇場公開するとしたら、保護者の助言・指導が必要な「PG-12指定」が付くのは間違いない。
『今を生きる』(’89)
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規律正しく親と教師の敷いたレールを歩くことが最善とされる男子寄宿生たち。彼らが型破りな教師と出会い、真に生きる道を探していく―――。
不朽の名作と呼ばれる青春映画だけれど、今観ればアメリカ白人富裕層のお坊ちゃまたちによる“若き上級国民の悩み”に胸やけ起こすレベル。とくに、人種的特権をもつ彼らが、彼らだけしかいない教室で白人教師から「human race(人類・人種)」についてレクチャーを受けるシーンなどは、今となっては趣味の悪いギャグにしか見えない。
こういうホモソで育った男子はミソジニーに育つとよく言われるけど……と不安になりながら眺めていると、案の定青春のイニシエーションのために女性を利用するという「素敵な」オチが待っている。米国での人種&性差別の過激化を招いた白人特権リベラル層の失敗例として観るならよいのかも。
『ゴシップガール』(’07~’12)
『ゴシップガール』(’07~’12)
Credit: huluこちらも今観ると特権階級の傲慢さがヒドい。そもそもNYのハイソサエティが舞台なのでそれは仕方ないのでは……と甘受しそうになるけれど、そうは問屋が卸さないシーンがいくつも。
例えばいじめっ子ブレアが自分の成績を水増しするために、優秀なアジア人女子を偽の友情で蹴落とすエピソードは、今となってはコメディで流せるレベルじゃない。ただでさえ親の名前や人種や性別で平気で差がつく(そのせいでアファーマティブアクションが必要)米国の大学受験で、アジア系などマイノリティがどれだけ努力を強いられるか。それを考えたらもうまともには観られない。
『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』(’90~’00)
『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』(’90~’00)
Credit: huluこの人たちは頭が悪いの?
今の若者たちであれば首をひねることばかりが起こる、地上から2㎝くらい浮いているようなキャラクターしか出てこないおかしなドラマ。全米がドラッグでハイになっていたと言っても過言ではない90年代のヒット作なので仕方ないのかもしれないけれど、無計画な妊娠・中絶・出産を引き起こす男性たちの責任が、なぜか(おそらく家の資産のおかげ)で大した葛藤もなく解決されていく脚本にはマチズモの臭いが……。
hulu 『Skins/スキンズ』(’07~’13)
hulu 『Skins/スキンズ』(’07~’13)
Credit: huluこちらはイギリスのリアルな高校生活を描き、今ではニコラス・ホルト、カヤ・スコデラリオ、ジャック・オコンネルなど英国を代表する俳優の若き頃の勇姿が観られる貴重なヒット作のひとつ。だけれど、性的表現も薬物ネタも精神疾患も安易に過激に描かれすぎていて、今ならこの脚本はダメ、ぜったい。
とくにインド系アフリカ移民の子であるデーヴ・パテールの役が本人の人種と微妙にずれていることは看過できない。「中東と南アジア……同じでしょ?」というキャスティング担当の声が透けて見え、これまた安易。
「フェイキング・イット ~噂のカップル !?~」(’14~’16)
「フェイキング・イット ~噂のカップル !?~」(’14~’16)
Credit: huluワナビーの幼馴染2人がレズビアンカップルと勘違いされて、学園の人気者に!
なんて幸せな学校なのかしら⁉ と思いきや、結局同性愛が異性愛の“エサ”になっているにすぎず、がっかり。レズビアンを消費するなんて失礼な物語は、2020年代には受け継がないでおきたいもの。
「The O.C.」('03 ~’07)
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悩みが押し寄せるティーンエイジャーの闇の部分をちょうどよく料理してふつうに観られるくらいのシリアス度に調節すれば社会派若者ドラマの出来上がり♪ とばかりに一定の評価を得ていた時代はもうおしまい。お願いだからレイプ含めてそのヒドイ回収の仕方をどうにかしてほしい! と叫びたくなる雑なストーリー展開にうんざり。深刻な問題をただドラマを面白くするためだけの“ネタ”にしていた時代はもうおしまい。