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【#STAYHOME おうちで読書】 今こそ手に取りたいおすすめ哲学書&詩集10選
先行きが見えない状況のなか力になるのは、こんなジャンルの本たち。エル・ジャポン2月号より。
先行きが見えない状況のなか、内省的な気分になって行き詰まることもあるはず。そんなとき力になるのは、 生きる知恵を授ける哲学書や気持ちを歌ってくれる詩の世界。手に取りにくかったジャンルに今こそ必要な言葉がある。エル・ジャポン2月号より。
Photo KEITA/flame
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生きる知恵をくれる、おすすめ哲学書5選
いつでもどこでもマスクを手放せなくなるなんて、1年前は想像もしなかった。家庭や職場の状況が激変した人もいるだろう。怒りや悲しみは感じて当然だし、無理やりポジティブに振る舞う必要はない。ただ、世界は変わっても人生は続く。これまでと違う角度で物事を見て、少しでも息をするのが楽になる方法を探そう。ヒントは本の中にある。
昔から人類は疫病や災害、戦争など、自分の意思ではどうにもならない出来事に遭遇してきた。「名著」と呼ばれる哲学思想書には、人々がさまざまな苦しみを経て得た知恵が詰まっている。一時しのぎの慰めでは終わらない、持続可能な考え方を手に入れたい。
マルクス・アウレーリウスはローマ帝国の皇帝であり、哲 学者でもあった。望みもしないのに最高権力者になり、疫病や戦争に翻弄され、それでも善い人間であろうとした彼が、自分に語り聞かせるようにつづった生き方の備忘録。<たとえ君が三千年生きるとしても、いや三万年生きるとしても、記憶すべきはなんぴとも現在生きている生涯以外の何ものをも失うことはないということ>など、 お守りにしたい名言多し。
どんなときも人間を支えるのは「愛」だろう。フロムは愛 は自然にできることではなく「技術」が必要と説く。その極意は、もらうより与えること。他人は自分の思いどおり に動いてくれないから、愛されることを目指すと苦しくなる。<愛は能動的な活動であり、受動的な感情ではない。そのなかに「落ちる」ものではなく、「みずから踏みこむ」ものである>という言葉が染みる。自己犠牲を賛美しないところもいい。
現代につながる制度や学問がおよそ出そろった17世紀。歴史上の大きな転換期に独自の倫理学を打ち立てたスピノザの思想を気鋭の哲学者が読み解く。なんといっても第3章の「自由へのエチカ」が面白い。スピノザの代表的な著作である『エチカ』の最終目標は「人間の自由」と明言。今の読者にとって新鮮で、なおかつリアリティもある「自由」が語られる。哲学は役に立たないという固定観念を覆してくれる本。
哲学とは「生きる上で向き合う問いと、それに答えようと する思索や議論」のことだ。古代ギリシアをはじめとした 西洋偏重のイメージがあるが、どの時代、どの場所でも共通に行われていたということを俯瞰して見せてくれる画期的な入門書。それぞれの項目の執筆は専門の研究者が担当し、各章の冒頭にある概論を読むと全体の流れがつかめる。世界中の人が時空を超えて「知」でつながるところにワクワクする。
ナチスの強制収容所から生還したユダヤ人精神科医が自らの体験を口述筆記した全人類必読の名著。名前ではなく番号で呼ばれ、いつ殺されるかわからない恐怖に直面しながら、フランクルは「生きる意味」を問い続けた。<わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ>とはどういう意味か。ぜひ読んで確かめてほしい。
心のモヤモヤを表現する、おすすめ詩集5選
緊急事態宣言が出て家にこもっていたときに、花を通販で買って飾ったら驚くほど癒やされた。詩は枯れない花だと思う。小さな世界に彩りを与え、いつもとは異なる光景を見せてくれる。たとえば部屋の内装のように簡単に変更できないものでも、詩の言葉をもって表現するとひときわ輝く存在になるのだ。
なかなか言語化するのは難しいモヤモヤがたまったときも詩集を手に取ることをおすすめしたい。詩は感情のディテールを表すことに長けたジャンルだから。喜怒哀楽に分類できない、微妙な心のあやを言葉にしてくれるのだ。たいてい短いから隙間時間に読める。自分の気持ちにぴったり合うものを見つけよう。
詩の作り方だけではなく、読み方もわかる。ジュニア向けでありながら本格的な詩の入門書。高校生の投稿からプロの作品まで具体例を挙げ、詩の命ともいえる新鮮な表現がどうしたら生まれるかを解き明かす。希望の詩について書いた最終章の<煩わしいと感じることや、いろいろに動揺 しながら生きていることが、自分では気付かない希望の持続をも意味している><絶望に動揺はない>というくだりに救われる。
佐藤弓生は現代短歌のなかでも幻想的な作風で知られる。ただ、あとがきで歌人自身が語っているように、幻想は「ほんとうのこと」の種なしには生まれない。この歌集の「ある四月の記録」から「そして三月」までは、東日本大屋災発生後に詠まれた作品のようだ。心もとなく寂しい今の気分にも合う歌がいくつもある。<木星の月を思えり木星とからたちの実のかさなる夜に>から始まる「月百首」も鮮烈だ。
<じゃんけんで負けて蛍に生まれたの>という俳句は衝撃だった。運命をこんなに軽やかに表現できるなんて。負けたとしても蛍ならいいかと思ってしまう。他にも<青い薔薇あげましょ絶望はご自由に>や<ピーマン切って中を明るくしてあげた>など、独創的でありながら親しみやすさも感じる俳句が解釈とあわせて収められている。いつか<生きるの大好き冬のはじめが春に似て>という境地にたどりつきたい。
上質なお酒みたいにちびちびと楽しみたい、近代フランス詩のアンソロジー。ポール・ヴァレリー、ジャン・コクトーなど66人の詩人の作品340編を収録している。編訳を手がけたのは、自身も詩人の堀口大學。今はよりいっそう遠くなってしまった異国の薫りを、美しく官能的な日本語で伝えてくれる。<猫は自分の尻尾を他の猫とまちがへる>という一節で始まる「見かけ」のようにユーモラスな詩もある