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オリンピック前半終了!海外メディアが取り上げた東京五輪トピックスを総覧

カメラは何を捉え、選手は何を語ったか

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tom daley
Getty Images

7月23日(金)に開会した東京オリンピック。早くも前半戦が終了した。そこで海外メディアが報じた東京オリンピックのトピックを大特集。世界が揺れる中で開催されたオリンピックに選手たちはどのような気持ちで臨んだのか。アスリートたちの活躍を称えつつ、その想いにも耳を傾けたい。

コスタリカのアルバラド選手、演技の最後に「BLM」をアピール

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コスタリカで初めて体操の代表になったルシアナ・アルバラド選手。7月25日に行われた体操女子予選で演技の最後でゆかに片膝をつき、拳を築き上げた。どちらのジェスチャーもアフリカ系に対する差別の撲滅を訴えるものである。彼女は演技後、AP通信にこの振付に込めた想いについてコメント。「 BLM(黒人の命は大切だ)」への賛同を示し、すべての人を平等に敬意を持って扱うことを支持するメッセージを込めたと語った。「私たちはみんな平等なのです。私たちはみんな美しく素晴らしい存在です」。

国際オリンピック委員会は「スポーツとオリンピックの試合の中立性を守るための枠組となるルール」として「オリンピックの会場には商業的な広告と並んで、政治的、宗教的、人種的な主義主張を掲載してはならない」と決めている。そんな中、振付という形でメッセージを発信したアルバラド選手。AP通信は演技の中で行われたものだったことから問題にはならないだろうと報じている。

ニュージーランドの女子ラグビーチーム、ハカで優勝を祝福

rugby   olympics day 8
Dan Mullan//Getty Images

7月31日(土)に行われた女子7人制ラグビーの決勝戦。ニュージーランドがフランスを下し初優勝した。表彰式では勝利のハカを披露、喜びを表現した選手たち。サラ・ヒリニ主将は表彰式の後レポーターにこうコメントしている。「私たちは勝利を勝ち取った。でも私はチームにいい人間であってほしいと思っている。私たちは善良で正直でありつつ、成功することができるということを示したい」。

アメリカのシモーネ・バイルズ選手、優勝したスニサ・リー選手を祝福

アメリカ代表で団体総合を途中で棄権した体操のシモーネ・バイルズ選手。その後、個人総合も欠場することを決意した。個人総合で優勝したのはバイルズ選手のチームメイトであるスニサ・リー選手。バイルズ選手はリー選手を盛大に祝福。「おめでとう、プリンセス。完璧に最高だった! オリンピックのチャンピオンよ! あなたをこれ以上ないくらい誇りに思う」。

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アメリカ女子体操チームが示したメンタルヘルスのケアのあり方

一方、リー選手たちもバイルズ選手が棄権した後、彼女の決断を支持すると発表。アメリカが団体総合で銀メダルを取ったとき、バイルズ選手はそのチームメイトたちに「あなたたちは本当に勇気があって才能がある。諦めないというあなたたちの決意、悪意と戦う姿はこれからもずっと私を奮い立たせてくれるだろう。私にできなかったとき、彼女たちは立ち上がってくれた。私の味方をしてくれてありがとう」。バイルズ選手の今回の棄権はメンタルヘルスを優先することの大切さだけでなく、どう支え合っていくかについても教えてくれた。

ブラジルの”妖精”スケートボーダー、「スポーツにジェンダーの壁はない」

ブラジル代表のスケートボード選手で銀メダルを獲得したライッサ・レアウ選手。彼女が一躍有名になったのは6年前。アメリカのスケートボーダー、トニー・ホーク選手が当時7歳だったレアウ選手が妖精のコスチュームでスケートボードをしている動画でツイート、「僕はまったく知らないのだけど、これはすごい。おとぎ話のヒールフリップみたいだ」。

スケートボードは男の子のスポーツという根強い先入観も残る。レアウ選手は昨年、アスリートのアカデミー賞と言われるローレウス・ワールド・スポーツ・アワードにノミネートされたとき「スケートボードは誰でも幼い頃からできる。女の子も男の子もすべてのスポーツができると思っている。スポーツにジェンダーの壁はない」とコメント。「スケートボードは男の子のためのものだから女の子はやってはいけないというのは正しくない。私はそういう言葉に耳は貸さなかった。スケートボードはみんなのためのものだと思う」。

トランスを公表しているオリンピアンが初めて誕生

このオリンピックはLGBTsの権利向上の歴史において大きな意味を持つものとなった。サッカーのカナダ女子代表のレベッカ・クイン選手がトランスジェンダーを公表しているアスリートとして初めてオリンピックに出場したのである。7月28日(水)に行われた日本戦の後、インスタグラムに今の心境を綴った。「トランスだと公表している初の五輪選手。感無量だ。”クイン”という名前が先発選手として並んでいるのを見て、自分が認められたことを感じとても誇りに思っている。世界のあり方ゆえに真の自分として生きることができなかったオリンピック選手がこれまでいたことを認識し、悲しく思う。私は変化は起きる、法律、ルール、構造、ものの考え方が変わると楽観的に考えている」と綴っている。

「それでも私は現実を痛感している。競技界から追放されたトランスジェンダーの少女たち。オリンピックの夢を目指しつつ差別や偏見を受けているトランスジェンダーの女性たち。闘いはまだ終わっていない。私たちがみんなオリンピックに参加できたとき、私は祝いたい」。カナダ代表は準決勝に進み、8月3日(火)にアメリカと対決する。クイン選手の活躍を楽しみにしたい。

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男女の賃金格差是正を訴える米女子サッカーチーム、開会式の日に上訴

netherlands v united states women's football quarterfinal   olympics day 7
Zhizhao Wu//Getty Images

これまで男子選手と同一の賃金や待遇を求めて闘ってきたアメリカの女子サッカー代表チーム。昨年5月にアメリカサッカー連盟との裁判に敗訴したことが報じられた。女子代表チームは上訴すると発表していたが7月23日(金)、開会式が行われた日にその手続きを行った。女子代表チームは地方裁判所の決定を覆すよう控訴裁判所に要求。裁判書類では「裁判所は女性がより多く働き、よりよい業績をあげることで男性と同じ賃金を得ることができれば、賃金格差はないと判断した。それは法律とはいえない」と主張している。

チームが発表した声明の中でサマンサ・メウィス選手は「男性と同じ額を得るために女性が男性よりも熱心に働き、より多くのことを達成しなくてはいけないと言うことは道徳的にも法律的にも間違っている。上訴の手続きを取ったことをとても喜んでいる。これで私たちはついに自分たちに、そして全女性たちに与えられるべき平等を手に入れることができる」

選手村の段ボールベッド、実際のところ寝心地は?

courtesy of sage watson via tiktok
courtesy of Sage Watson via TikTok

開会前から各国のニュースを賑わせていたのが選手村の宿泊施設に置かれた段ボールベッド。選手たちがSNSで拡散したことから世界中の注目を集めた。イスラエル選手がわざと壊す動画をSNSにアップし問題にもなったけれど、一番気になるのは寝心地。カナダの陸上選手セージ・ワトソンはTik Tokに選手村や自室の様子をアップ、「これが噂の段ボールベッド。実際のところ寝心地はとてもいい」とコメントしている。

結論「用途を守って正しく使おう」

courtesy of sam fricker via tiktok
courtesy of Sam Fricker via TikTok

次に気になるのは耐久性。オーストラリアの飛び込み選手サム・フリッカーはTik Tokでチームメイトがベッドを壊してしまったことを暴露。どうしてこうなったのかというと「ベッドの上に立ち上がったから」。なぜそんなことをしたのかと言うと「エアコンの調子が悪かったからベッドに乗って直そうと思ったんだ」。ちゃんと用途を守って使えば安全かつ快適、というのが結論のよう。

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オーストラリアのコーチ、弟子の優勝で喜び炸裂

ドラマが起きているのはフィールドやプールだけではない。観客席で注目を集めたのはオーストラリアの競泳コーチ、ディーン・ボクソール。自分が指導しているアリアーン・ティトムス選手が世界記録保持者のケイティ・レディッキー選手を破り優勝した瞬間、マスクを剥ぎ取って喜びの雄叫び! さらにガラスのボードをつかんでゆすりガッツポーズを披露した。そのワイルドぶりをカメラがキャッチ、ニュースを賑わせた。(続)

弟子はプールサイドで感涙

表彰式の後、ボクソールコーチは感動で涙するティトムス選手をハグで祝福。ティトムス選手はインスタグラムに「我が友へ、あなたがいなかったらできなかった。この人はコーチであるだけでなく、私のよりどころであり最大の支え。生涯忘れることのない瞬間を今日、あなたと分かち合えたことをとても幸せに思う」とコメント、コーチへの感謝の気持ちを綴った。

テコンドー界にレディー・ガガのドッペルゲンガー現る

taekwondo   olympics day 3
Maja Hitij//Getty Images

SNSで話題を集めているのがテコンドーのヨルダン代表、ジュリアナ・アル=サーディク選手。レディー・ガガにそっくりだとリトルモンスターこと、ガガファンが大騒ぎしている。アル=サーディク選手は現在26歳。2018年にはジャカルタ・パレンバンアジア大会で金メダルを獲得した実績の持ち主である。残念ながら今回は、女子67kg級1回戦でブラジル代表のミレーナ・チトネーリ選手に敗れてしまったけれどテコンドーファンを急増させるという大功績(?)をあげた。これからの活躍に要注目!

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ジョコビッチ選手、敗れてもオリンピックは満喫

「オリンピック生活を満喫してる度ランキング」で1位になりそうなのがテニスのノバク・ジョコヴィッチ選手。ベルギーの体操選手たちとストレッチ、見事な開脚を披露する様子をSNSにアップした。また新聞「ニューヨークポスト」によるとトルコの代表選手たちに試合に臨む際の心理学的アドバイスも教授していたそう。

これで金メダル、1年で4大大会すべてとオリンピックを制覇する「年間ゴールドスラム」が達成できればいうことなしだったけれど残念ながらそれは叶わなかった。次のオリンピックイヤーも活躍してくれることに期待したい!

ハンガリーのミラク選手、パンツが破けて個人記録更新ならず 

swimming   olympics day 5
Clive Rose//Getty Images

水泳200メートルバタフライに出場したハンガリー代表のクリシュトフ・ミラク選手。試合直前に水着が破れるというアクシデントに見舞われた。「集中できなくなって、もうだめだって思った」そうだけれど、急いで新しい水着に着替えて出場。その結果は見事金メダル! タイムは1:51:25で、メダルと同時にマイケル・フェルプス選手が打ち立てたオリンピック記録も2秒更新した。でも本人は試合後、自身の持つ世界記録(1:50:73)を更新するのが目標だったと悔しさを滲ませている。テレビ局「BBC」のレポーターに「水着が破けて集中力が途切れ、それがタイムに影響したんだ。僕はメダルのために泳いでいるんじゃない。タイムのために泳いでいるんだ」。

飛び込み王子のトーマス・デーリー、パパになって金

diving   olympics day 3
Clive Rose//Getty Images

水泳の飛び込みのイギリス代表、トーマス・デーリー選手。男子シンクロナイズドダイビング10メートル高飛び込みでマティ・リー選手と出場、金メダルを獲得した。デーリー選手にとって今回は4度目のオリンピック。2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロでは銅メダルを獲得しているが金メダルは初。「リオで金が取れると思っていたがまったく手が届かなかった。そのとき夫が僕のストーリーはまだ終わっていないと言ったんだ。そして僕たちの子ども―そのときはまだ息子だってわかっていなかったんだけど―にも僕がオリンピックの金メダルを取るのを見せなくてはってね」。(続)

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「父親になったことは大きな転換点」

脚本家&映画プロデューサーのダスティン・ランス・ブラックとの間に2歳の息子ロビーをもうけているデーリー選手。「父親になったことはアスリートとしての僕のキャリアの大きな転換点になった。プールでものすごくうまくできても、大失敗しても、それには関係なく僕を愛してくれる息子と夫のところに帰れることに気がついたんだ。そう理解し感じることで僕はプレッシャーを感じずに競技を楽しめるようになった。僕は飛び込みが好きだからやっているんだ、どう飛び込むかが僕を定義するわけではないってね」。

(6月には飛び込み台の上にロビーくんを連れて行った写真もSNSにアップ)

飛び込み王子は編み物王子

diving   olympics day 9
Clive Rose//Getty Images

飛び込み王子として知られるデーリー選手だけれど、実は編み物王子でもある。昨年、コロナ禍で自宅待機生活をしていたときに編み物をスタート、インスタグラムには専用アカウント「Made with Love by Tom Daley」を開設して作品を投稿している。その彼がなんと制作に取り組む姿を披露! 8月1日に行われた女子3メートル板飛び込みの観客席で仲間を応援しつつ、編み物に勤しんでいた。BBCのコメンテーターは競技の合間に「デーリー選手がいます。編み棒を取り出しました。みなさんは何を作ってるんだと思います?」と興味津々にレポート。出来上がったらきっとインスタグラムで報告してくれるはず。楽しみにしたい!

米フェンシング選手、ピンクのマスクでチームメイトを批判

7月30日に行われたフェンシングの男子エペ団体。アメリカ代表のジェイコブ・ホイル選手、カーティス・マクドワルド選手、イエサー・ラミレズ選手がピンクのマスクを着用して会場に現れ、注目を集めた。これは同じチームで控えのアレン・ハジック選手が、2013年から2015年の間に複数の女性に対して性的に不適切な行為をしていたことを五輪直前に告発されたことに対する反応。ピンクのマスクで女性たちの訴えを支持することを表明したと見られている。ハジック選手は疑惑を全面的に否定、試合会場には黒いマスクで現れた。雑誌『ピープル』の報道によるとアメリカのフェンシング協会も告発を重く見てハジック選手の行動を制限。チームメイトたちと別行動を取らせ、帰国も一緒ではなかった。

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ジェシカ・スプリングスティーン、コロナ禍でグレードアップ

今回のオリンピックで話題の人物の1人といえば馬術のアメリカ代表、ジェシカ・スプリングスティーン。姓からわかるように大物ロッカー、ブルース・スプリングスティーンを父に持つ。スプリングスティーン選手にとってこれは初めてのオリンピック。雑誌『ピープル』のインタビューでニュージャージー州で乗馬の練習を始めた少女時代から、アメリカ代表の五輪選手になることが夢だったと語っている。今回のオリンピックはコロナ禍が多くの選手のフィジカル、メンタルの準備に影響を及ぼした。でも彼女はポジティブ。「アスリートとして私たちは順応性を身につけ、やり遂げることを学ばなくてはならない。私は可能な限り自分の目標に集中するように心がけていた」とこの1年を回想。「この1年を私は練習と、ドン(パートナーの馬)と絆を深めることに使った。だからもっと強くなったと思う」。彼女が出場する障害馬術団体が行われるのは8月6日(金)。活躍を楽しみにしたい!

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