「言葉のアール・ブリュット 友原康博展」

 おしらせです。5月に神戸で開催される展覧会「言葉のアール・ブリュット 友原康博展」でのトークイベントを行います。


 「言葉のサラダ」とも言われる特異な言語感覚で、鋭く社会に突き刺さるメッセージを放ってきた統合失調症の詩人、友原康博。まさに「言葉のアール・ブリュット」とも言うべきその詩は、具体美術協会嶋本昭三氏や浮田要三氏、『珍日本紀行』で知られる写真家の都築響一氏といったアーティストを魅了してきました。本展はその特異な言語世界を、貴重な生原稿で展示するものです。


 友原が集中的に詩を書き綴ってきたのはなんと中学生の頃ですが、1995年に刊行された詩集『いざつむえ 友原康博詩集』は現在では入手困難となっており、古書がプレミア付きで取引されるほど。会期中にはその魅力を考えるトークショーも行います。


 トークショーは2部制となっており、1部のゲストは友原さんの「第一発見者」である、美術作家の嶋本昭三さん。そして中学卒業後の友原さんを工場に勤務させてサポートした、やはり美術作家の浮田要三さん。2部のゲストは友原の詩を再評価した、編集者の都築響一さん。聞き手は私こと樋口ヒロユキが務めます。どうかお誘い合わせの上ご来場ください。



友原康博(ともはら・やすひろ)
1950(昭和25)年、兵庫県生まれ。中学校時代に「チョークの箱の裏が綺麗」という詩を書き、これがもとで具体美術協会の作家、嶋本昭三と出会う。その後、集中的に詩を書き続けたが、統合失調症であることが判明して精神病院に入院。1995年、中学生時代に書きためた詩が『いざつむえ 友原康博詩集』(編集工房ノア)として刊行される。同書は編集者の都築響一氏の目にとまり、同氏の著書『夜露死苦現代詩』(新潮社2006年、ちくま文庫2010年)にて紹介される。現在『いざつむえ』は絶版、古書はプレミア付きで取引されている。

展覧会名:「言葉のアール・ブリュット 友原康博展」
会期:5/7(日)-27(日)
時刻:AM11:00-PM8:00
休廊日:14,21日
入場料:無料


トークショー
日時: 5月13日(日) 
ゲスト:1部 14時〜 嶋本昭三 浮田要三
    2部 16時〜 都築響一 聞き手:樋口ヒロユキ
    入場料:1000円(ワンドリンク付き)


会場:「gallery1」
神戸市中央区海岸通9 チャータードビル2F・3F
問い合わせ:090-1430-7911(田村)

大きな地図で見る
http://gallery-ichi.com/


嶋本昭三(しまもと・しょうぞう)
1928年大阪府生まれ。現代美術家関西学院大学文学部卒業。具体結成時からのメンバーであり、「具体」という名の名づけ親。郵送で作品を交換する「メールアート」に取り組み、国際的にネットワークを展開。代表作《穴》(1950年)は世界で初めてキャンバスに穴をあけた作品として評価され、イギリスのテートモダンに収蔵されている。著作に「芸術とは、人を驚かせることである」など。京都教育大学名誉教授、宝塚造形芸術大学教授、日本障害者芸術協会会長。


浮田要三(うきた・ようぞう)
1924年大阪府生まれ。1955年、具体美術協会に参加。以降10年間「具体展」に連続出品。1984年「具体・AU6人展」(ドイツ・ドュセルドルフ)に参加。以後、自己のペースで制作、国内外で個展を開催。学校卒業後の友原を引き取って工場に勤務させるなど、そのサポートに尽力した。


都築響一(つづき・きょういち)
写真家、編集者。1956年、東京都生まれ。上智大学卒業。大学在学中からライター活動開始。卒業後フリー編集者として『POPEYE』『BRUTUS』などで活躍。写真集に『TOKYO STYLE』(京都書院1997年、後にちくま文庫2003年)、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』(筑摩書房1996年、第23回木村伊兵衛写真賞受賞)、「STREET DESIGN FILE」シリーズ(アスペクト2000〜2001年)など。著書に『夜露死苦現代詩』、『巡礼〜珍日本超老伝〜』(双葉社2007年)など。それまで光が当てられることのなかった無名の人々を通して、現代の日本社会を描いている。


樋口ヒロユキ(ひぐち・ひろゆき)
1967年、福岡県生まれ。サブカルチャー美術評論家関西学院大学文学部美学科を卒業後、PR会社勤務を経て2000年より評論活動開始。『美術手帖』『ユリイカ』『週刊金曜日』『TH』などに執筆。単著に『死想の血統 ゴシック・ロリータの系譜学』(冬弓舎、2007)、共著に『絵金』(パルコ出版、2009)など。展覧会キュレーションに「閨秀2.0」(京都百万遍「CAVE」、2011)がある。神戸学院大学天理大学ほかで非常勤。ゴシック・ロリータ、アール・ブリュット、刺青など、制度外の美に関心を持つ。